SPring-8 夏の学校(2001年度)


夏の学校とは スケジュール | 基礎講座 | 応用講座 | セミナー | 実習 |

主 催: 財団法人 高輝度光科学研究センター、
     姫路工業大学 理学部
期 間: 平成13年9月5日(水)〜9月7日(金)
    (SPring-8交流施設に2泊)
会 場: SPring-8 蓄積リング棟 および 放射光普及棟
    (679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1)
参加費および宿泊費: 無料
募集人数: 20名程度(先着順)

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申込について:予定人数を超過しましたので、申込を終了させて頂きました。
       来年度の参加をお待ちしています。
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問合せ先:姫路工業大学理学部 鳥海幸四郎
     E-mail: toriumi@sci.himeji-tech.ac.jp
     電話/FAX: (0791)58-0155 


SPring-8夏の学校とは?

○ 開校の目的

 第3世代の大型放射光施設SPring-8では、発生する高輝度なX線から赤外光に渡る広いエネルギー範囲の放射光を利用して、物理、化学、生命科学、地球科学、材料科学、医学などの広い分野にわたって最先端の研究成果が得られ、また新しい研究分野が開拓されつつあります。
 このような研究の最先端と将来への展望を知って頂くために、学部学生以上を対象として、SPring-8夏の学校を開校致します。この夏の学校では、放射光の原理から放射光利用研究まで最前線の研究者による講義、SPring-8の放射光を使った実習、研究者との交流など、放射光の魅力が分るプログラムを用意しています。
 SPring-8夏の学校に参加して、SPring-8からの夢の光を体験して、その魅力を存分に味わって下さい。入校をお待ちしています。

大型放射光施設 SPring-8: http://www.spring8.or.jp/JAPANESE/
姫路工業大学理学部   : http://www.sci.himeji-tech.ac.jp/index-j.html


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SPring-8夏の学校の実習内容

○ どのような実験ができるか

 今年は次の4つの実習を予定しております。

 ○粉末X線回折  BL02B2
 ○蛍光X線分析  BL08W
 ○蛋白質構造解析 BL41XU
 ○軟X線分光   BL27SU

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SPring-8夏の学校のカリキュラム

○ スケジュール

<1日目>
 13:00〜   集合、手続
 13:20〜    開校式
 13:30〜14:50 SPring-8について(概要説明)  上坪宏道(JASRI)
 15:00〜16:20 基礎講座1(放射光の発生)   原 雅弘(JASRI)
 16:30〜17:50 基礎講座2(挿入光源)     北村英男(理研)
 18:30〜    ミキサー

<2日目>
  9:00〜10:20 基礎講座3(ビームライン)   石川哲也(理研)
 10:30〜11:30 応用講座1(粉末X線回折)   坂田 誠(名古屋大学)
 11:30〜12:30 応用講座2(蛋白質構造解析)  森本幸生(姫路工業大学)
         食事
 13:30〜14:30 応用講座3(蛍光X線分析)   早川慎二郎(広島大学)
14:40〜15:40 応用講座4(軟X線分光)    上田 潔(東北大学)
 16:00〜18:00 セミナー1(レーザー電子光LEP) 中野貴志
                       (大阪大学核物理研究センター)
        セミナー2(放射光による超微細加工) 木下博雄
                     (姫路工業大学高度産業科学技術研究所)
        セミナー3(放射光X線を使った単結晶内歪み測定とその応用)
                        松井純爾(姫路工業大学)
 18:30〜    懇親会 (講師、研究者を交えて)

<3日目>
  9:00〜12:00 実習1(4班に別れて行う)
         食事
 13:00〜16:00 実習2(4班に別れて行う)
 16:00〜16:30 閉校式

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基礎講座の概要

基礎講座1: 放射光の発生   原 雅弘(JASRI)

 放射光は蓄積リング中の電子ビームから放出されるため、その性能は個々の電子が 生み出す放射光の性質と蓄積リング中の電子ビームの性質との両者で決まる。本講座 では1個の相対論的電子が磁場で軌道を曲げられたとき放出する放射光のパワー・角 度分布・周波数分布等の性質について解説し、併せて蓄積リング中の電子ビームの運 動とその性質について概説し、高輝度光源を実現するための条件について解説する

基礎講座2: 挿入光源    北村英男(理研)


 SPring-8は挿入光源に最適化された大型放射光施設である。挿入光源という名称は周期的に変化する磁場(あるいは電場)を発生する装置を加速器の直線部に挿入設置するということに由来する。2次元的指向性を示す通常の放射光とは異なり、レーザーのような1次元的指向性を持つことによって輝度の高い放射光を発生することができるばかりでなく、必要に応じて多様な偏光特性を得ることができる。本講座では挿入光源放射の原理、仕組み、正しい使用方法、及び将来の可能性について述べるものである。

基礎講座3: ビームライン  石川哲也(理研)

 ビームラインは、ストレージリングで発生した放射光を実験に使いやすい形に加工して実験装置に導くための装置であり、シャッター・シールドなどの安全システム、分光器・ミラーなどの光学システム、真空システム、インターロックを含む制御システムから構成される。本基礎講座では、スプリングエイトの標準化されたビームライン構成を解説するとともに、光学系や光学素子の動作原理を簡単に説明する。
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応用講座の概要

応用講座1: 粉末X線回折  坂田 誠(名古屋大学)

 応用講座1として粉末X線回折に関する講義を行う。X線回折の原理を簡単に述べた 後、粉末法の基礎について述べる。さらに、放射光粉末法、特に、第3世代放射光による粉末X線回折法の利点についてのべる。SPring-8に設置された実験装置の説明を行った後に、現在SPring-8での実験例の幾つかを紹介する。講義全体として、第三世代放射光粉末X線回折法と言う先端的な実験法を理解するだけでなく、例えば、構造物性分野におけるその方法の意義などにも言及する。今後の可能性・展望についても述べる予定である。


応用講座2: タンパク質X線結晶解析  森本幸生(姫路工業大学)
      ー放射光を利用したタンパク質結晶構造解析の実際ー

 近年の構造ゲノム科学という言葉に代表されるように、オーダーメード医療、医薬品開発の要望に伴ってタンパク質の構造に非常に多くの関心がもたれるようになってきた。タンパク質はその機能を発現するため複雑な、しかし合理的な固有の3次元立体構造を持つ。この立体構造を明らかにするには結晶構造解析が最も有力な方法であり、そこでは超強力X線源としての放射光の利用が不可欠である。この講義では放射光によるタンパク質結晶構造解析について、理論的基盤、具体的な操作・手順について詳述する。


応用講座3: 蛍光X線分析  早川慎二郎(広島大学)

 蛍光X線分析法は特性X線のエネルギーが元素に固有であることを利用した元素分析手法であり、高輝度なSPring-8からの放射光と組み合わせる事で試料を破壊することなくpgからfgレベルの微量元素についての情報を得る事ができる。本講座では放射光X線マイクロビームを用いる微量元素分析の応用と、実習において取り上げる高エネルギーX線励起による蛍光X線分析を紹介し、期待される応用分野について参加者が考える機会となる事を目的とする。


応用講座4: 軟X線分光   上田 潔(東北大学)

 分子の軟X線分光はシンクロトロン放射光施設の進歩とともに多いに発展してきた分野である。内殻の電子を励起した状態の寿命は高々数フェムト秒のオーダーであるが、この短い時間に分子が僅かに歪み、内殻励起特有の様々な現象を引起すことが次第に分かってきた。本応用講座ではSPring-8の軟X線光化学ビームラインBL27SUで現在進行中の分子が歪む運動を捉える超高分解能軟X線分光について紹介する。
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セミナーの概要

セミナー1: レーザー電子光LEP  中野貴志(大阪大学核物理研究センター)

 高エネルギー逆コンプトン・ガンマ線とは、レーザー光線が電子ビームによって跳ね返された結果得られる高エネルギー光ビームである。SPring-8の8 GeV 蓄積電子ビームに3.5 eVの偏光紫外レーザー光を正面衝突させることによって、最高エネルギーが2.4 GeVのスピン偏極した逆コンプトン・ガンマ線ビームを得ることができる。本セミナーでは、この夢のビームを用いた原子核・素粒子物理研究を最新の実験結果と共に紹介する。


セミナー2: 放射光による超微細加工 木下博雄(姫路工業大学高度研)

 半導体デバイスを製造するための加工技術(リソグラフィ)はこれまで紫外線を用いて行われてきた。しかしながら、大容量化とともにパタンの微細化が要求され、2005年には70nmの超微細パタン形成が必要となる。このため、ニュースバルでは70nmから30nmの超微細なパタン形成が可能な反射縮小光学系を用いた新たな露光方式の開発を進めている。これまでに40nmのパタン形成も実証しており、これは次々世代の256GbitのLSI製作可能性を示唆している。


セミナー3: 放射光X線を使った単結晶内歪み測定とその応用
                         松井純爾(姫路工業大学)


 シリコンや砒化ガリウムのような半導体単結晶は、ダイヤモンド型格子あるいは閃亜鉛鉱型格子を持つが、これらの結晶を素材とする電子部品の特性は、結晶に潜む結晶欠陥や微小な歪みに対して極めて敏感である。放射光の高輝度性と高平行性を使って、これら半導体結晶中の微小歪みや結晶欠陥を調べるためにはどのような光学系を用い、また実際にどのようなデータが得られるか、実例を示しながら解説する。
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実習の内容

○粉末X線回折 担当者:西堀英治(名古屋大学工学研究科) ビームライン:BL02B2

 第3世代光源SPring-8から発生される高輝度X線を用いることにより微量粉末試料から、
原子の配列のみならず、物性に大きく関連する電子レベルでの構造情報が得られるよ
うになってきました。実習は以下の流れで行います。1)粉末試料作成、2)粉末X線回折実験、3)粉末回折データのリートベルト解析。時間的に余裕があればマキシマムエントロピー法による電子密度解析も行います。


○蛍光X線分析  担当者:伊藤真義(JASRI) ビームライン:BL08W

 高エネルギーX線(116keV)を使用した蛍光X線分析は、希土類などの重元素をK線に
より分析できる重元素の非破壊・微量分析に有力な測定手段である。本実習では、高エネ
ルギーX線ビームラインであるBL08Wを使用し、Ge半導体検出器によるエネルギー
分散型蛍光X線分析を行う。花崗岩などの標準岩石試料の測定と、得られたデータの簡単
な解析を行う予定である。


○タンパク質X線結晶解析 担当者:河本正秀(JASRI) ビームライン:BL41XU

 タンパク質の立体構造決定はポストゲノム計画における最重要課題の1つである。そのための実験手法であるタンパク質X線結晶解析について実習を行う。実習ではまず最初にタンパク質の簡単な結晶化の実験をおこなう。さらに回折データの収集と簡単な解析処理をおこない、ビームラインにおける実験の流れをつかむ。また時間が許せば、さらに高度な解析処理の概要説明と得られた結果の解釈や、そこから広がる構造生物学の世界や創薬など応用面での展開などについても解説する。

○軟X線分光   担当者:為則雄祐(JASRI) ビームライン:BL27SU

 近年の軟X線分光技術の進歩により、気体分子の内殻励起状態における原子移動の 様子が「目に見える」ようになってきた。本実習ではまず、軽元素分子を対象として、 分光測定の基本となる高分解能軟X線吸収スペクトルの測定を行う。さらに、生成イ オンの角度分布測定により内殻励起状態の帰属を行い、スペクトルの解析を行う予定 である
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最終更新日2001年7月19日