スピンと電荷の自由度を物質の多様な”機能”として活かす不揮発性磁気メモリやマイクロ波発振器などのナノスピンデバイスの研究において、日本は多様な製品を産み出す学術基盤を有しており、世界をリードしている。ナノスピンデバイスには、高速に、低電圧で、かつ高耐久で、高い拡張性を持つなど、強誘電体メモリーではできないことが実現できるという特徴があり、省エネルギーや安全安心を確保する現代には不可欠な重要分野となっている。しかし現在の多くの研究では、大部分が電気的測定とシミュレーションに頼っており、実際に中がどうなっているかが分からないままである。そこで放射光を多角的に利用することによりマクロ測定で起こっている現象をミクロレベルで理解し、スピントロニクス材料のさらなる性能向上を図ることが喫緊の課題である。
「ナノデバイス科学」研究グループでは、構造・電荷・スピンを捉える種々の先端放射光ツールを駆使した包括的な解析アプローチにより、ナノスピンデバイス研究において個別の取り組みでは実現しえない情報の共有やノウハウの蓄積によるシナジー効果を創出することを目標とする。この活動を通じて「放射光による物質デザイン・ナノデバイス創成」という新分野を作り上げ、サステナブル社会の実現を加速する新奇高性能機能性材料及びデバイスの実現を目指す。