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SPring-8シンポジウム2012(SPRUC臨時総会)パネル討論
「放射光科学のグランドデザインとSPRUCの果たす役割」
議事概要

開催日時:8月26日(日) 14時00分〜15時30分
場所:大阪大学コンベンションセンター3階MOホール

(パネラー)
  • 雨宮 慶幸    SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長
  • 石川 哲也     理化学研究所 播磨研究所  所長
  • 小杉 信博    自然科学研究機構分子科学研究所研究総主幹
  • 濱  広幸    東北大学 電子光理学研究センター教授
  • 高原 淳        九州大学  先導物質化学研究所副所長・主幹教授
  • 馬場 嘉信    名古屋大学 シンクロトロン光研究センターセンター長
  • 太田 俊明    立命館大学 SRセンター センター長
  • 山田 和芳    高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所所長
  • 水木純一郎    日本放射光学会 会長
(司会:モデレータ)
  • 高尾 正敏    大阪大学大型教育研究プロジェクト支援室
高 尾:    お待たせいたしました。総会の中でのイベントとしてパネル討論を始めます。司会を担当する高尾です。よろしくお願いします。今日のテーマは、「放射光科学のグランドデザインとSPRUCの果たす役割」という大きなテーマとなっています。今日は前に並んでいる先生方に話題を提供していただき、フロアーの方を交えて大きなテーマについて議論したいと思います。

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まず、パネラーの紹介をしたいと思います。(パネラー紹介)
時間の制限がある為、この約束で進めます。パネルの趣旨説明に雨宮会長に説明いただき、壇上の先生方から3〜5分のプレゼンで思いを語っていただきます。 最後に放射光学会の水木会長から放射光学会としての意見を頂きます。
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雨宮:    今回のパネルのテーマは「放射光科学のグランドデザインとSPRUCの果たす役割」。私の立場では、「○○とSPRUCの果たす役割」と前半の部分(○○)は色々あり得ると思っています。SPRUCがどういう役割を果たすべきか議論したいと思っています。今回、前半の部分は「放射光科学のグランドデザイン」となっています。これはプログラム委員会が決めたものです。前半の部分の代案としては、「SPring-8の利活用」、「SPring-8の将来計画」等もあるかと思ったのですが、考えうる限り最もカテゴリーの大きいテーマが前半の部分に来ました。SPRUCを創設した趣旨を考えると最初に大きなテーマに取り組むことは重要だと思います。昨日の講演でも、SPring-8の将来の話がありましたけれども、これまでの右肩上がりの考え方を維持できなくなった社会状況下で、特に3・11以降の財政の難しい社会の中でSPring-8の将来計画を考える際に、小さい村意識で議論していても意味がなく、国内の他の放射光施設との関連も含めて放射光科学のグランドデザインをどう考えるか、各々の施設の立場から聞かせて頂きたいと思います。それで各施設の責任を持つ方に集まっていただいた訳です。HiSORにも声をかけたのですが都合が付かず欠席となりました。施設に責任を持つ立場の方から各施設をどのように展開させようとしているか。SPring-8の次期計画に対してどんな注文があるのか。そんなことをざっくばらんに聞かせて頂きたいと思います。また、この会場には1万人はいませんが、200人程度なら、会場の皆さん一人の後ろに50人のユーザーいると思って参加していただきたいと思っています。
こういったことは、放射光学会がこれまで受け皿になってきたわけですが、放射光学会は、SPring-8利用者懇談会の数が1200人ぐらいで飽和した状況と同じ状況です。自分が放射光科学をやっているという意識の人は、全ユーザーの10分の1ということなんですね。これを考えると壁を取り払ったより一桁大きい規模で物事を考える受け皿としてSPRUCは大きな役割を果たすべきだと思っています。
SPRUCがやるべきことはたくさんあります。研究会活動の活性化。何といっても財政基盤の確立:1万人規模のユーザーコミュニティにふさわしい運営ができるようにする必要があります。スクラップ&ビルドを通したSPring-8のより有効的な利用。いろいろな役割があります。その中で一番カテゴリーの大きなテーマに関してSPRUCがどう関わっていくかについて議論を行いたいと思います。各パネラーの方々宜しくお願いいたします。

高尾:    それでは、最初に座席の順番で石川先生にお願いいたします。
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石川:    私の話は昨日もやっていますので会場の皆さまはたくさんの方が見たと思います。パネラーの先生方にお見せしたいと思います。SPring-8はSPring-8とSACLAという2本の足で歩き始めました。いつもこのスライドをお見せしています。今後30年くらいをどう考えるかを示しています。昨日もお話ししましたように、ここに地震がやってきて、2019年に若干“?マーク“が付いたと思っています。これも昨日お見せしましたが、SPring -8には色々な有効に使える資源があります。ストレージリング、SACLA、SCSS、ブースターシンクロトロン、1GeVのインジェクターライナック、ニュースバルというリソースがあります。可能性を考えると、色々なことができるのですが、昨日はこれをお見せしました。ストレージリングとして10ps、Completely coherent hard x-ray sourceが出来る可能性があります。3rd Gnerationのsoft x-ray source もニュースバルをうまく改造すると出来る可能性があります。Completely UV/SX sourceも出来る可能性があります。しかし、昨日最後に話しましたように、出来る可能性があっても、他の施設との仕分けが非常に大切です。もちろん播磨で全部はやらない。ただ、高エネルギーフォトンサイエンスは日本として播磨が責任を持たなければいけないと思っています。低エネルギーのフォトンサイエンス、中エネルギーのフォトンサイエンスに関しても、どこかが責任を持ち世界に対抗する軸を作っていく必要があると思います。また、施設をユーザーファシリティーとして運営していくこととは別に、しっかりとした未来技術開発を進める必要があると考えています。繰り返しますが、高エネルギーフォトンサイエンスは播磨が責任を持って行う必要がありますので、SPRUCの皆さまにおかれましても、これからますます一層サイエンスの質を高める努力をして頂きたい。お昼でお帰りになった福山先生から、現状の研究会で良いのか。という意見がありました。今後、今の研究会のやり方が本当に良いのかについて議論させていただきたいと思っています。私は以上でございます。

高尾:    ありがとうございました。それでは、小杉先生。
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小杉:    石川さんの話だと、UVSORは低エネルギーフォトンサイエンスの責任を持たないといけない施設一つです。来年UVSORは30周年を迎えます。私は、今は施設長ではありませんが、30年のうち半分以上施設長をやっていました。SPring-8のSPRUCのことは良く存じ上げていないですが、今日は、共同利用・共用施設として放射光施設がどうあるべきか、30年間を考えた場合に施設にはどういう動きがあるか、ユーザーソサイエティをどう考えるか、の問題を特定の施設に限定しない内容で話します。最初の10年は、期待される利用者が提案して、それに対して施設側がどんどんビームラインを作る。しかし、10年を超えますと、ビームラインは満杯状態、そして、装置も施設も老朽化し、スタッフも利用者も固定化、高齢化、研究内容も停滞する。極端に言うとこの様なモードに入ってきます。そのモードのまま20年を超えだしますと、海外を見ても、ユーザーフレンドリーとか、民間、産学連携で維持費を稼ぐとかの方向を選択し、生き残りを考える施設もでてきます。しかし、高性能な新しい施設がどんどんできる中では、こんなことをしていると、先がない手遅れ状態になってしまいます。そこで、このように手遅れにならないうちに何をしておけばよかったかと最初から考え直してみますと、最初の10年では、世界の将来動向を把握しているin-houseスタッフが研究分野を先導するスタイルを確立すべきだったと気づきます。ユーザーの要望に応じるだけの施設では20年、30年を考えると実は良くありません。また、満杯状態になって見直してみると同種のビームラインがたくさんあります。10年目から20年目にかけては、それを整理して、重点化し効率化して運営する。先端的なビームラインも、10年後、20年後には標準的になります。一方、昔、標準的だったものは内容的に老朽化してきますので、現状維持を好みがちなユーザーを振り切ってでもシャットダウンして先端的なビームラインに切り替えないといけません。10年目から20年目は、この様な循環モードの導入が必要な時期になります。人も内から外、外から内へ流動させないと世代交代は図れません。
 ここで話を共同利用30年に切り替えます。昔は、汎用性、底上げ、大衆化、成果の数が重要でした。利用者が増えるに従って予算も増え、利用者に対して旅費や実験費も出せました。維持費もありました。ユーザーの皆さんを公平に扱い、課題審査をしてきました。しかし、現在は、競争原理が働くようになっています。分野内で切磋琢磨します。もうひとつの大きな流れは、ターゲットを決めてグランドチャレンジする課題解決型の志向です。素粒子分野にグランドチャレンジは非常にフィットしますが、放射光のサイエンスがグランドチャレンジ型かは難しいところです。SACLAは、どちらかと言えばグランドチャレンジ型で予算が認められて進んだと私は理解しています。今、量より質になってきました。成果の数で勝負する時代ではなく、成果の質で勝負する時代に変わっています。また、明確に社会への貢献を果たすため、応用研究を進める必要があります。受益者負担の考えで、自分たちで旅費や実験費を獲得する必要もあります。科研費がとれない研究者まで施設の予算を使って相手にするのは国としてまずいという考えまであります。これらは当然の流れですし、これ自身批判することは全くないですが、問題点がないわけではありません。分野内ばかりでなく、分野間でも競争原理が働き、経済的な観点からも様々な大型計画が優劣を競うようになりました。研究者ベースの競争ばかりでなく、法人化以降では法人間の競争も出てきました。また、競争によって重点化された分野はよくても、切り捨てられた分野は困ります。重点化された分野といえども10年20年は続かないので、いずれは廃れます。切り捨てられた分野は復活もできませんし、重点化された分野も先が無いという多様性が喪失される方向になる可能性があります。複数の施設で類似の課題を申請し、しかも、特定の研究者に審査の仕事が集中している問題もあります。放射光利用者が増えるのはいいのですが、一方で審査委員に値する研究者が増えているわけではありません。悪貨が良貨を駆逐するような、自分で自分の首を絞める状況は問題があります。ここで時間が過ぎましたので、用意していた基礎と応用の問題については別の機会にします。

高尾:    どうもありがとうございました。それでは次は、濱先生お願いします。

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濱:    東北大学濱と申します。なぜ、姿形もない、予算要求もしていない計画で呼ばれたのか理由が良く分かりません。意味はあるかもしれませんが、何も姿形は無いため何も言うことはありません。さて困ったなと朝から思っていました。先ほど、石川先生の話がありましたが、放射光科学でSPring-8は、非常に大きな成果を上げていて、今後も一つの軸としてなり立っていかなければなりません。特にSACLAの成功は、そうだと思っています。ここに書いてあるように3GeVクラスのリングが、今世界中でたくさん作られています。その根拠は、たぶん皆さんも良く分かると思います。6GeV,7GeV,8GeVのリングがあるにも関わらずなぜ3GeVのリングが必要なのか。それは、非常に輝度が高くて使い勝手が非常に良いためです。日本は、この10年間わかっていながら何もタッチしてこなかった。この大きな問題がいまだ残っています。SPring-8が非常に良いHard X-rayを供給しているにもかかわらず、それをサポートするものがものすごく狭い。この計画に関わるとき、今年の2月に勉強会を米沢でやりました。そこで私は、「地方の一施設を作るなら私はこんなことはやりたくない。それなら一切やめましょう。」と言いました。日本が本当に世界と競うことができる光源を 持たなくてはいけない。場所が東北である必要はもちろんありません。ただし、東北はそうゆう土壌でもあることを言いたかった。それがスタートです。SPring-8よりも小さなエミッタンスで、基礎科学、応用科学を創出させ、東北だけでなく日本全体の活性化を担っていきたいというのがこの計画です。一地方のマシンを作るつもりはさらさらありません。もし「そうゆうものにせよ。」というならすぐにやめます。今週、要望書を東北の7国立大学総長の連名で提出しました。これはSoft X-ray領域に最も特化したマシンで、SPring-8とUVSORの間を取り持つ施設として、それぞれが相互作用し合って放射光科学を発展させていくことを目標としています。これは予想輝度です。領域は1〜10KeVでその領域を一番オプティマイズしようと考えています。SPring-8はそれより上 のところで輝度が高いのですが、この領域ではSPring-8より上を目指します。今、たとえばアメリカではNSLS-IIとかヨーロッパはMAX-IV,台湾のTPSもこの領域で仕事をしようとしています。なぜ我々にないのかというのが、一つのモチベーションです。これが、グランドプランです。リングだけではなくSoft X-rayだからこそできるFELをここで展開することが世界に通じる新しい光源だと考えています。この実現は日本にとって急務であって、東北である必要は、本当はないと思います。でも東北でできればなおさら良いのではないかというのもアイディアとしてはあります。以上のように考えて進めさせていただいております。

高尾:    どうもありがとうございました。それでは、高原先生お願いします。
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高原:    九州大学の高原でございます。本日は、私、九大のビームラインの立場と産業界のフロンティアソフトマタービームラインの立場とですね、それからSPRUC研究会の立場の3つの立場で話をします。九州大学は佐賀LSに九州大学ビームラインを作りまして、九州大学シンクロトロン光利用センターで現在運営をしております。1.4GeVの蓄積リングで、純粋な大学の研究設備として基礎研究を推進し放射光の分野の触媒となりうるセンターということで現在運用しております。ビームラインは学内の措置等で整備いたしまして、XASFSとSAXSの装置があります。色々なガス供給システムとかその場反応システムとかクイックXAFSとかを整備し、エネルギーが可変しやすく当たっているポイントがずれないという利点を生かしたASAXSを現在整備しつつあるという段階です。こちらはSoft X-rayが中心の佐賀LSの利用をし、色々な分野に対して、現在、ビームラインの申請、課題公募が始まっています。まず学内のユーザーを限定して、それから外部ユーザーを決定します。ユーザーの多くは、SPring-8とうまく、棲み分けを行いながら実験を行っているという状況です。もうひとつの私の立場ですが、フロンティアソフトマター開発産学連合ビームラインの運営委員長をしております。2008年2月に日本の代表的な企業の19社で科学研究をするために、企業グループと連合体を作りました。利用開始が2010年の4月でございます。連合体には運営員会と学術諮問委員会を置きまして、しだいに色々なところでデータが出始めています。特に特徴的なのは、ポリマーのプロセッシングとかポリマーの試験機のためのスペースを設けていることであります。第一ハッチは表面・薄膜、第2ハッチは小角散乱とそれから広角回折となっております。大学と企業がチームを組んで色々な実験等を基礎から応用まで手幅広くやっています。実際はこの様なものを使いまして、現実の系に近いような系での構造形成過程も見ております。もう一つの立場は研究会です。こちらはSPring-8次期計画に対するコメントです。昨日の研究会で議論しました。いろんな問題点も議論されましが、ここでは、良い点だけをピックアップしております。材料界面のナノビームのスキャンニングで局所的な高分子に必要な広角回折、小角散乱測定がすすむようになる。それによって物性のコントロール、新しい日本の材料発展につながります。結晶化・相分離などの動的構造解析、階層構造変化のリアルタイム評価、ナノビームを利用することによる局所表面構造解析、有機デバイスあるいは日本の得意とする分離膜の改質に繋がります。コヒーレンスがあがると小さいスケールでの早い階層構造をもった高分子特有の階層的なダイナミクスを追えるようになります。発散角度が小さく集光の必要がないため極小角散乱の測定がうまく行えます。ナノビームを活用した高分子材料の階層構造の評価もできます。SPRUCへの期待は、施設との情報交換の場、研究会の活動の支援、研究会の連携による効率的運営、産官学の若手人材育成です。人材育成には企業の方からも色々意見がでておりまして若手企業研究者の基礎教育・実習、それから大学院学生の教育・実習です。大学でX線を教えられる先生が少なくなっているため、各大学の独自のプログラム、リーディング大学院との連携を進めていけば宜しいのではないかと考えております。以上になります。

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高尾:    それでは、馬場先生。
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馬場:    名古屋大学の馬場でございます。今日は、愛知県に設置しつつある中部シンクロトロン光利用施設の現状についてご報告させていただきたいと思います。これは昨年の写真であります。中部シンクロトロン光の施設は今年度供用開始を目指しておりまして、愛知県が整備した研究センターの横に併設される形のこの建屋がシンクロトロン光の施設でございます。これは、先月の内部の写真でございます。ここに蓄積リングがございまして今いくつかビームラインを設計しているところでございます。一つの特徴は、蓄積エネルギーは1.2GeVと小さいですけれども、超伝導の偏向電磁石を用いることで、硬X線のXAFSを使えることだと考えております。今、6本のビームラインを当初スタートさせるということで、準備をしております。硬X線のXAFS以外に軟X線のXAFSと光電子分光、小角散乱等々のビームラインを整備しつつあります。これが加速器の概略図でございます。2012年の3月の末に加速器のひきわたしが行われました。中部シンクロトロン光施設のもう一つの特徴は、ブースターリングが内部に閉じ込められていることです。7月18日の段階で、蓄積リングに1.2GeVの蓄積に成功しファーストライトを確認したところでございます。今、この安定的な発振と、ビームラインの今年度内、来年1月から共用開始を目指しているところでございます。こちらは、6本のビームラインオンうちの3本分の写真でございますが、この様な形で今準備が進んでいるところでございます。見づらいので恐縮ですが、赤いところが共用を開始する6本のビームラインで、緑色が予算が通れば名古屋大学が、設置したいと思っている名古屋大学独自のビームラインでございます。ビームラインを設置するにあたりましては、愛知県内の企業それから大学等の利用アンケートをとりまして、その中で特に企業から希望の多かった6本を整備している状況でございます。中部シンクロトロン光施設と名古屋大学シンクロトロン光研究センターの関係は、特に産業応用を一つの大きな目標として、産学と愛知県、行政が、協力しまして、産業界の利用を促進することを考えております。ご承知のように愛知県は非常に産業が盛んな地域でございますので、すでにたくさんの企業の方がSPring-8を活用させていただいていると思います。中部シンクロトロン光で測定できる部分は、こちらでも測定いただく形で準備を進めているところでございます。県と名古屋大学並びに愛知県下の名古屋工業大学、豊橋科学技術大学、豊田工業大学の4大学が大学連合を作りまして、シンクロトロン光利用者研究会を2008年、この計画が始まった段階から行っております。これまでにのべ200社以上1700名ぐらいの方が出席されています。ほとんどが企業の方でございます。企業の方もこのシンクロトロン光施設に期待をもっていると感じております。XAFSと光電子分光と小角散乱とX線回折の4つの研究会がございます。今年もそれぞれ1回開催して、今年の1回分だけで60社以上、150名くらいの方が参加されております。この方々は供用開始の段階から活用して使っていただける方だと考えています。中部シンクロトロン光は今年度共用開始ですので、今回立ち上げられたSPring-8の利用者の協同体等とですね、連携を取りながら日本の中の放射光科学の一端を担えればと考えております。以上でございます。

高尾:    太田先生、宜しくお願いします。
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太田:    立命館大学の太田です。立命館大学のSRセンターは、年間1500人ぐらいの見学者が来ます。その時にいつも「日本には世界最大の放射光施設SPring-8がある。一方で、もうひとつ世界で一番小さな放射光施設があるんだ。それが、立命館のSRセンターだ。」という話をします。このSRセンターは、第2.0世代のリングで光源のアップグレードは期待できないのですが、ビームラインの改良・改造により赤外から硬X線までのビームラインが出来、それなりの競争力を持った施設となっています。大学の中にある施設ですので、研究と教育、産業利用を3つの柱としています。特に、放射光を使った学部3年生の物理化学実験をカリキュラムに入れている点は、日本には一つだと思っております。産業利用にも力を入れています。SPring-8とLabの装置とのギャップを埋め、そして裾野を広げることを立ち位置としています。民間企業に関しては、特に最先端の測定は必要ないため、我々のセンターでも十分使えます。測定と解析の支援をするにより、小回りの利くビームラインとして、それなりに産業界には使っていただいています。我が国の放射光施設等は、この様にたくさんあります。PF,UVSOR,SPring-8,Hi-SORは国家プロジェクトとして出来ているものです。他は、県とか立命館のように同窓会の寄付金だけで出来ており、それぞれ設置の趣が違っています。それぞれの今後を決めるのがグランドデザインとなります。私は2000年に放射光学会長をしておりまして、その時からグランドデザインに関していろんな話をしてきました。ご存知のようにSPring-8は世界に冠たる第3世代の高輝度リングです。小型の軟X線の装置としてUVSOR,Hi-SORがそれなりの成果を果たしています。XFEL,SACLAは世界に誇る加速器のすばらしい成果であり、これからも成果が期待できます。県の施設などは地域型の星として、放射光のすそ野を広げることに非常に意義があると思っています。実は、次が問題です。SPring-8 IIあるいは軟X線の高輝度施設、この二つが大きな問題になっています。2000年の頃からグランドデザインで軟X線の第3世代をなんとか作らなければならないと言われてきました。東大、PFのpost PFとか色々と話がありましたが、なかなか進みませんでした。そのうちSPring-8も世界最高性能から落ちてくる状況になり、SPring-8 IIの企画が出てきました。その意味では非常に悩ましい状態になってきたと言えます。この状況のもとでSPRUCができたわけですが、これを機会に皆さん放射光というものを身近なものにとらえてほしいと思います。また、放射光は加速器の大きなメンテナンスのかかる施設ですので、放射光科学を発展させていくために後継者の養成は非常に重要になります。それからSPring-8の将来計画だけでなく、我が国の将来計画にも関心を持っていただければと思います。 以上です。

高尾:    山田先生お願いします。
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山田:    KEK物構研に4月に赴任しました山田です。放射光のコミュニティの新参者で、チンプンカンなことを言うかもしれませんが、今日はフィロソフィ的なところを中心にお話しさせていただきたいと思います。KEKの物構研の組織を皆さんまだご存じないかもしれませんので、そこからスタートさせていただきます。KEKは大学共同利用機関法人です。これは、その中の物構研が関与する組織の一部を切り出してきたものです。私の研究所は、放射光の研究系が2つあって、その中に小グループですが低速陽電子のグループもいます。中性子科学研究系、ミュオン科学研究系の二つの研究系は、最近、東海に出来ましたJ-PARCセンターの物質生命科学研究施設に属しています。各研究系を横断する形で構造生物学研究センター、構造物性研究センター、基盤設備を開発する開発室があります。皆さんも良くご存じのようにPF、PF-ARはスタート以来30年が経過しております。一方で、J-PARCは、そろそろ本格運転に入るステージに来ています。我々は放射光の将来計画としてERL計画を提言しています。これは完成して動き出すまでには10年あるいはそれ以上かかる状況です。この状況にあって、物構研としてどんなミッションをもって、SPRUCに協力していくかです。物構研は、世界を見据えた夢のある放射光科学ともう少し広い立場の量子ビーム科学を発展させていくミッションを持っていると考えています。そのために何をすべきかを物構研に赴任して色々と考えていました。我々は世界を競争相手にすべきで、そのためにオールジャパンとしての協力体制を構築していくことが非常に重要だと思います。今度の放射光のグランドデザインを作成するときにもオールジャパンの体制を作って、その作成と実行体制を構築する必要があると思います。もう一つは、量子ビームという大きなくくりの中での放射光の位置づけを考えていくべきだと思います。また、中性子や他の手法との協奏的な利用法、調和的な利用法を考えていく必要があります。物構研としては、ミュオンと低速陽電子も含めて、複合量子ビームプラットホームをなんとか作っていきたいと考えています。3番目は、これは私の造語ですが、「大型施設における能動的物質研究を推進」です。これは人材育成の活性化をめざす、ユーザー(特に大学)と施設との新しい関係と考えています。先ほどから皆さまが強されていますが、これからの大型施設を支える後継者を育てる必要があります。施設と大学あるいはパワーユーザー間の双方向の人の流れを活性化していくことを進める必要があります。物構研は大学共同利用機関です。近年、共用促進法が導入され、大学共同利用は従来の形で本当に続けていけるのか、何か新しい大学共同利用の枠組みをこちらから提案していく必要があるのではないかと考えています。SPring-8 II、あるいはERLなどの将来計画実現までに10年程度がかかるということはほぼ明らかです。この10年程度の準備・建設期間に我々は何をすべきかを考 える必要があります。これはオールジャパンとして取り組む課題です。ここに見せましたのは、SLS(スイス)で測定されたRIXSのデータです。この下のところは、中性子の非弾性散乱でとるべきデータですが、SLSなど世界の放射光源では磁気励起の情報が得られはじめ、中性子で得られる結果との詳細な比較が行われています。私は、この10年間は非常に重要な時期だと思っています。放射光だけでなく量子ビーム全体として取り組む問題かもしれません。日本の放射光が世界の進展から遅れた時には、量子ビーム全体の協奏的利用にも弊害が出ます。この問題に取り組むのにKEKの物構研は最大限の努力をする責務があると私は考えています。以上です。

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高尾:    水木先生お願いします。
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水木:    放射光学会長として話します。しかし、学会の意見として言う場合、評議員会で承認を得る必要がありますが、全く得ておりません。色々提案をしますが、私個人の提案として受け取ってください。これは家先生が学術審議会の立場で書かれた物質科学のロードマップです。我々の放射光がこのサイエンスにどう寄与していくかが非常に重要です。我々は放射光学会で特別委員会を立てて議論します。学術審議会で作られたものに呼応するように我々として次のように進んでいくだろう考えています。高輝度と高コヒーレンスのビームを使ったサイエンスを展開していく。そのために必要なリングあるいはビームについて各施設の方に学会からの要望や期待を受け取ってもらって計画してもらいたいと考えています。放射光学会として、まずすべきことは、施設を超えてどうゆうサイエンスをしていくか、しなければならないのか、したいのかをフェアに考えそれをまとめることです。それを各施設の人たちが重たく受け取ってもらえるような学会なる必要があります。その意見を受け取ってもらって、各施設の人たちが持ち帰って考えてもらいます。その時に、学会としての要望は、各施設の人がオールジャパンで考えて頂きたいことです。学会が将来計画の議論をする場を設けて各施設の人が議論を戦わせることができる、そのような学会にしたいと思っています。もうひとつ学会のすべきことは、次の科学技術政策に対する支援をすることです。たとえば、元素戦略プロジェクトが始まりました。これは、我が国の将来の命運をかけたプロジェクトであると思っております。大きなプロジェクトに対して放射光がどう関われるかです。文科省のホームページを見ますと放射光が何かしていくべきだと書かれています。元素戦略は、3つの大きなプロジェクトとその代表が決まり進みはじめました。たとえば、個人的な案ですが、放射光学会だけでなく日本中性子科学会、日本中間子科学会がひとつの中心になって、元素戦略の代表者の人たちを含めて施設の人たちと相談しながら研究会を行う。我々の学会が量子ビームプラットフォームを作って仲人をすることで、今までそれぞれのビームしか使っていなかった人たちを会わせることによって学際分野を発展させていきたいと思います。以上です。

高尾:    ありがとうございます。それでは、予定の時間はあと20分か25分です。最初に壇上の先生方で言い残したことがある方、あるいはお互いに聞きたい、議論したいことがあれば、まずそれを10分やり、その後フロアーからのご質問を受ける形で考えたいと思います。壇上の先生方なにかありますでしょうか。私の聞いている感じでは、少しづつ立場は違うけどみなさん同じようなことを言っておられた感じがします。落とし所は決まっています。ただ道筋が少しずつ違う感じがします。もしないようでしたら、フロアーの方から是非意見を言いたいという方、マイクを持って行きますので手を上げていただけますでしょうか。高田先生、なにかしゃべりたそうな顔をしています。

高田(フロアー): みなさんだぶん考えるところは同じだと感じています。JASRI SPring-8の利用研究の促進部門の部門長としての立場で話させていただきます。SPring-8のなかでも拾いきれない課題がたくさんあります。それらの課題には、もっとふさわしい施設があるのでは、本当はあってよいのでは、と特にSoft X-rayで思います。先ほど、濱先生が地域の施設を作るつもりはないとおっしゃいました。光源性能の表を見てみますと、まさにSPring-8でやらなくてもそこで出来るんだという接続性がありました。ここはユーザーコミュニティの議論をする場ですが、ユーザーコミュニティ全体が施設に対してどう働きかけるかをSPRUCは考えるべきです。たとえば、東北が行うことを考える。そして、東北がもし全国に開かれた施設であるならば、SPRUCの方からも何ら かの働きかけがあっていいと思います。反対にSPring-8の中、自身のグランドデザインをもう考える必要があります。小杉先生の話にありましたが、同じようなビームラインが増えてきています。本当にそこは整理して、研究会の人たちもSPRUCが何のために立ち上がったかを一緒に考えていただいて、BLの整理も含めた議論をして頂きたいと思います。1万人近いということは全国にわたっており、他の施設も使っておられると思います。施設の方にお願いしたいのは、いかに最高のものを常に提供できる形をとれるか考えていただきたいと思います。

高尾:    はい。ありがとうございます。あの、年寄りばっかりでしゃべっているのは良くないので是非若手の方の将来についての要望をお願いします。若手と思われる方はみんな若手ですのでお願いします。ありますでしょうか。なかなかないですね。それでは、先ほどから世界でトップと言う話がありました。どこかでは「1番でないとだめなんですか」と言う話が昔はありましたが、石川先生、「どうしたらトップクラスをずっと走り続けられるか」何かご意見があれば頂きたいと思います。

石川:    昨日も申し上げたことでございますけれども、「世界を変える」ということが大事で、土俵を変えてしまえばトップなわけです。みんなで放射光研究のパラダイムを変えることを一つ一つの分野でお考えいただきたいというのが昨日のメッセージです。昨日のお話をお聞きいただいた方には、それが実際に行われた例がいくつかご覧いただけたのだと思います。その手のことを続けていくことが非常に大切であると考えています。解析接続上のところで勝負をしていても競争が激しくなるばかりであると考えています。

高尾:    ありがとうございます。それからもうひとつ、SPring-8も放射光全部そうですけど、昨日懇親会で松井先生から、最初にSPring-8が始まった時の産業利用で考えていたことと、今やっていることが全然変わってしまったという話がありました。私自身、JASRIが出来たときに産業利用の関係で委員会に3年間通っていたことがあります。そのとき考えたことと全然違ってしまったという気がしています。当時は半導体が非常に盛んな時代だったのでSPring-8の利用は半導体の用途ばかりでした。今、そうではなくなってしまったことが非常に重要です。逆に言ったらSPring-8を使った新しい産業ができるかもしれないという気持ちでやるべきです。やっぱり冒険をしないと新しい産業はできない感じがしています。それは私自身の20年間のSPring-8との付き合いの中で感じることです。他に何かありますでしょうか。坂田先生お願いします。

坂田(フロアー):    若い人のご意見がご希望のようで、しゃべるまいかと思っていたのですけど、フロアーから何も発言がないというのは私の性分として許せませんでした。別の観点で話します。SPring-8のキーワードとして高エネルギーの放射光。物構研の方は量子ビーム。それがそれぞれの立場の気がします。SPRUCの立場で考えたとき、今までおっしゃられなかった点は、千何百人と一万人の放射光学会とSPRUCの会員数の違いです。これは、以下のようなことかと思います。放射光学会に入っている人は放射光がないと、仕事が出来なくなる人。物質研究をやっている人達は、放射光があれば使う、無ければ無で進める。それ以外にSPRUCで放射光があるのは当然と考えている人。SPRUCは初めて強制的に全ユーザーを会員にしたため、放射光がなければ他に行く人も会員にいます。色々なグランドデザインを考える上でも、この人たちの意見が無視できなくなってくると思います。放射光科学の方のお話聞いていると、先端的なところで、今の技術を拡大していく方向性がありますが、放射光学会では、あればいい人の意見をくみ上げることはできないのです。SPRUCで、初めてそれが可能になったと思います。難しいのは、今回のようなパネルをやってもそうゆう人は出てこないことです。ただし、良く使っている人は顔が見えているため、その人たちの意見をくみ上げられると対外的に強力になると思います。先ほどの家先生の物質科学のような大きなものの中では、物質科学の将来の議論はしても、放射光の将来の議論はその中では小さくなる気がします。その流れの中で位置付けると、グランドデザインのありがたみも違うと思います。将来計画を進める上ではやさしく説明していかなければなりません。SPRUCでは、そこら辺りがくみ取れる可能性があるのが期待感です。

高尾:    ありがとうございます。適切かどうかわかりませんが言葉を変えて、サイレントマジョリティーの声をどう聴くかということになりますね。

坂田:    ここ(SPRUC)には、サイレントマジョリティーはいるんです。他の学会、組織にはいないんです。それが私が気付いたことです。

高尾:    では雨宮先生。

雨宮:    SPRUCの会長を仰せつかって感じていることは、壁のある帰属意識の強い組織のorganizationも容易ではないけれど、壁がなく帰属意識が少ない組織のorganizationは更に難しいということです。各施設が組織に対するロイヤルティを持ってその組織を強化しようとすることと、その組織の壁を破ってオールジャパン(=より大きな階層構造)の中でその組織を相対化させること、そのバランスをどのように取るかという難しさ。その難しさはSPRUCの運営がもつ難しさと通じるものがあると思います。要するに自分の組織に対するロイヤルティと全体のダイバーシティ・調和の中での自分の位置づけの問題です。放射光科学のグランドデザインを作るためには組織に対するロイヤルティも重要ですがそれと違った視点で、鳥瞰的に俯瞰的に、自分の組織をどうやって全体の中で調和させて位置付けていくのか。そのためには、複眼的な視点が必要なんだろうと思います。今、日本の政治も国のためというより政党のためという壁がありますし、隣国との関係でも、国境の壁という問題があります。そういう問題を我々いかに超えていくか、克服するかということが重要なんだと感じています。組織に対するロイヤルティを持ちながら如何にその壁を超えるか、高度なインテリジェンスが問われているということです。こうゆうことを共に考える場として意義があるなという気がしています。

高尾:    ありがとうございます。それでは一言だけ、小杉先生からお願いします。

小杉:    時間がなくて省略したことに触れます。今は応用の時代とは言いつつ、基礎がどうあるべきかという問題が出ています。文科省の審議官の人と話した経験の話をします。日本独自のシステムとして大学は工学部を持っている。それは日本の特徴である。一方、理学部は原理原則のところをやる。ところが今は、工学部が理学部化し、理学部が工学部化し、わけがわからなくなって日本全体が応用・応用に行っている流れの中で基礎をどうするかという議論になっている。工学部は理学部が本来やるべきところで業績を上げるのではなく、工学部としてやるべき応用研究や産学連携、職業人の育成をすべきと言われました。放射光施設も、利用研究の背景に、理学部的なところと工学部的なところのふたつがあることをしっかり意識して、それぞれ支援の仕方を考えないといけないと思います。

濱: こんなこと言っていいのか良く分からないんですが、SACLAの非常に高輝度でレーザーのコヒーレントな光、これを使う人がこの放射光のSocietyの中にどれぐらいいるのか。身近なものとしてSACLAをツールとして期待し、利用できると非常に強く感じている人はあまりいないのではないかと実は思っています。その裏返しが、たとえば、SPring-8のSPring-8 IIのとらえ方と強くリンクすると思っています。明日から奈良市でFELの会議があります。暇な人はきてください。SACLAの成功は素晴らしいものとしてとらえられていますが、決してポピュラーな光ではないというのが現状だと思います。考えると下を支えるものがないですね。日本国内でそうゆうものを使った利用研究と言うのは身近に感じるものがなかなかない。機会がない。たぶんSPring-8 IIが千倍輝度を上げたってその状況はあんまり変わらないと思います。サイレントマジョリティ―という人たちがたくさんいるなら、もっともっと使えることが表に見える形で広がるのがおもしろいサイエンスだと思います。それが日本にとって世界にとって科学のすそ野を広げるものだと考えています。

高原:    長くなるかもしれませんが、先ほど夢ロードマップは学術会議等で議論しながら作られたものです。私は今、結晶学分科会の委員長をさせていただいております。今のところ、化学、物理、生物、材料の分野でも横断的な議論ができていません。私が、中性子も放射光もかかわっていることもあり、そのあたりをなんとかしたいと考えております。ですから、材料等も含めた形の意見が反映されないと大型施設のグランドデザインはしにくいと考えております。2014年は世界結晶年ですので、それをうまく利用して、学問分野の重要性を一般の方々に広く認識していただくこともこれから重要であると思います。皆さまに色々なお願いをするかもしれませんが、ご協力いただければと思います。宜しくお願いいたします。

馬場:    今回の議論は放射光科学のグランドデザインのたぶん議論の第一歩だとおもいます。SPRUCはSPring-8につくられた大型施設のユーザーの会議と認識しておりますが、我々が中部で作っている施設や九州やその他の場所にある地域の放射光施設をどう位置付けて連携していくかをSPRUCの中で少し議論していただくのが重要であることを今日の議論を通じて感じました。その際にそれを「SPRUCがやることか」「他の施設なのか」もまた議論があると思います。せっかく日本に9か所の放射光施設がありますので、いかにうまく活用して成果を上げていくかということが極めて重要になってくると思います。是非、今後もこうゆう議論の場で議論させていただければと思います。

太田:    放射光のグランドデザインで、私が言い残した大事なことは、放射光施設はモノポリーではなかなか進展しないことです。SPring-8だけがどんなに突出してもなかなか進展しません。それと相補的なところが必要です。その意味では、Hard X線はSPring-8、SACLAががんばって世界の最先端を目指す。それに対応して、東日本でSoft X線の最先端を何とかする。そうしないと放射光科学が発展しないと思っています。宜しくご理解いただければと思います。

山田:    放射光の将来計画。私が大事だと思うことは、その施設が道具を提供するだけの施設ではいけないことです。若い人がその施設に行って楽しい・面白いと、そこで実験するのが面白いという雰囲気をいかに出せるのかが重要です。最近、施設にただ単に試料をもってきて測ってデータ取ったら帰る雰囲気になりつつあります。私自身は、これから将来計画を立てるときに、単なるツールを提供する大型施設はだめだと思っています。大型施設は研究者が集い、コミュニケーションが出来る場を提供すべきであると思います。

水木:    放射光学会として、先ほども話をしました。言葉足らずを少し補足したいと思います。放射光学会でいろんな計画、将来計画を順位づけせよと言われます。なかなか難しいのです。今日来ておられる人全員が放射光学会の会員ではありません。施設を代表するような人が放射光学会に来て、施設の意見としてではなくて、個人的にどう考えているかを上げていただく。それを各施設に持って帰って、計画を立てるときに他の施設のことを頭に入れながら考える。こうすることでオールジャパンのことを考える中心の学会になれると考えております。これからも舞台を提供しながら一緒に考えていく学会でありたいと思います。半分冗談で半分本当に気になっているのは、SPRUCができて、同じようにPFでも会費をとらない組織ができて、そこで色々議論します。それぞれで色々議論するようになったので、放射光学会が同じような議論をすると違いが分からなくなってきます。各施設でたぶん出来ないのは、他の量子ビームを取り入れた議論をすることです。放射光学会が最終的には量子ビーム科学会に発展的に解消することが良いと私は個人的に思っています。私は今世紀中にはたぶんそうなると思っています。

高尾:    だいぶ気の長い話ですね。一応私も、モデレータとして個人的に、論点を事前に考えたものがあります。それが書いてあります。今日は、各施設の責任者、あるいはそれに近い方が出てこられていると思います。まず今日は、お互いが何を考えているかを知ったと思います。ここから始まって、次はじっくりとしかし早急に深い議論を進めていただきたいと思います。SPRUCの意味は、先ほど会長が話しました。会員数は、一万ではなくて一万二千人と言う話がありましたが、ひょっとしたらもっといるかもしれない。量は多いのですけど、量じゃなくて質、これから質の問題も出てきます。SPRUCだけでいいますと、メンバーひとりひとりがSPring-8の利活用を考えてもらう。そのために新しい研究会を立ち上げて研究会間のコラボをやってもらいたい。今後の放射光施設、日本の放射光科学の方向性で一番大事なのは、得意分野の強化とサイレントマジョリティへの対応です。施設からもいろんな計画がでています。3.11以降、文科省からのお金もだんだん減ってきていますし、産業界もお金がなくなっています。説得力のあるグランドデザインが必要だと思います。サンプルだけ持ってきてさっと帰ってしまう一見さんが増えてしまうと、最後は全体が困ると思います。若い人たちも含めて、みんなが将来のことを考えることが必要だと思います。ユーザーと施設、それぞれの責任・役割分担、国際協力、人材育成、行政への提案、SPring-8, SACLA,J-PARC,京コンピューター大型共用施設だけでなく、施設間の連携もこれから考える必要があります。外の装置だけ使いに来てデータが出るでは、うまくいかない感じがします。サイレントマジョリティに対して、アウトリーチでなくてインナー・リーチを真剣に考えなきゃならない時期に来ています。一万人だから余計にです。ちょうど時間を5分オーバーしたところです。ありがとうございました。それではパネラーの方々に最後に拍手をお願いします。今日のディスカッションは事務局に言ってホームページに載せようと思っています。今日を出発点にして、ホームページを見てブログでもなんでも書いていただければと思っています。ありがとうございました。

    matome

以 上


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