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SPring-8シンポジウム2013(SPRUC総会)パネルディスカッション
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開催日時:2013年9月8日(日) 14時10分〜15時30分 場 所:京都大学宇治キャンパス おうばくプラザ きはだホール モデレーター 中川敦史(SPRUC研究会組織検討作業部会代表・大阪大学) パネリスト(敬称略、五十音順) 梶山 千里(福岡女子大学) 川上 善之 (エーザイ株式会社) 佐藤 衛 (SPRUC利用幹事・横浜市立大学) 壽榮松 宏仁(東京大学) 鈴木 謙爾 (東北大学) 福山 秀敏 (東京理科大学) 松井 純爾 (兵庫県立大学放射光ナノテクセンター) |
![]() 中川代表よりスライドを用いて下記3項目を中心にSPRUC研究会組織に関する説明が行われた。 ![]()
当日のスライド資料はこちらからPDFファイルでダウンロードできます。 その後、パネリストによる討論が行われた。以下発言内容を記す。 (梶山)[一部省略] ![]() 中川先生のお話、そしてこの2日間の話を聞いていて、最初にもった印象はSPRUCの研究会組織の再編成というのは、トップダウンでやるところとボトム アップでやるところがある、という意味では大学の法人化のプロセスと似た部分があるということです。それは民主主義的なのか非民主主義的なのかはわからな いが、ただ、SPRUCもそういう節目の時期にきているということです。しかし、重要な事としては、SPRUC研究会にとってBLは既得権益でないという ことです。つまりどこかで終わりをつくらないといけない、そのために研究会は再編成をしないといけないと思います。当たり前かもしれませんがSPring -8が国費で運営されている訳ですから、BLは研究会の持ち物ではないという意味です。 この作業部会での議論としては越権行為のようにとらえられるかもしれないが、BLも再融合が必要な時期であると感じている。BLのスクラップ&ビルド(再 編成)ということになると、どこかで評価しないといけない。そのためには評価の基準を作らなければならない。昨日の高田先生の成果の説明の際には、論文引 用の数を指標にしていました。これでは積分値になってしまうが、微分値のようなものでアクティビティを測らないといけない。 私はSPring-8で高分子・有機機能材料などのソフトマター新素材開発の産学連携の運営にも携わってきました。産学連携というのは私にとっては当たり 前の仕組みだとおもっていましたが、必ずしもそうでないようです。分野によっては必ずしも当てはまらない場合もあるかもしれないが、研究会は産業とも密接 に連携をはかっていくべきだと思います。さらに、産業との連携や人材育成についても評価に入れていくべきだと思います。 (中川)梶山先生から研究会の再編成という言葉があったのですが、私の個人的な意見としては、新しい研究会をビルドするということはあっても、積極的になくすというようなことは考えていません。ただし、活動が低くなれば予算の関係上淘汰されていくだろうと考えます。 (梶山)BLに関してはそれらの数が限られている一方で、研究というのは進展・発展していきますから、それをカバーするためにはどこかで折り合いをつけなければならないと思います。 (川上) ![]() もう一点述べたいのは、アカデミアや研究者からの観点では研究会組織は提案されているようなもので良いと思うのですが、このなかに、施設の担当者にもしっ かりと入って協力してもらう。そうしないとボトムアップの研究というのはできないと思います。というのも、産業界というはほとんどがボトムアップです。そ のときに、管理者側もはいって一緒に考えるという事をしないと成功はなし得ないということを感じています。 (佐藤) ![]() (壽榮松) ![]() (鈴木 ![]() さらに、最も重要なのは研究会などを通して研究者のレベルの高い進んだインフォメーションマネージメントです。組織ができて組織を運営していく上ではイン フォメーションマネージメントをどうやっていくかが困難ではあるが重要です。これを留意して新しい組織で出発してほしいと思います。 (福山) ![]() (松井 ![]() 当初はSPring-8でなければならない実験というのは3分の1くらいかもしれないが、2回・3回と実験していくうちに、やはり出てくるデータは SPring-8でなくては出せないデータが出てくるというのを実感しています。そこでどうしたら良いかという事になりますが、結局は産業利用研究会とい うのをつくれば良いということでしょう。少なくともどこの研究会にも属さないというユーザーの解消には働くでしょう。ただ、あまりにも分野が広すぎて産業 利用というものでひとくくりすると、入るだけになってしまいますので、どうしたら良いかというのを聞いて参りましたら、各分野でサブグループを作ってそこ で細かい議論をするのがよいという意見がありました。例としては、次のようなものを考えています。 1、電池材料、2、触媒材料、3、エレクトロニクス、4、金属構造組織、5、高分子、ゴム、ナノC材料、6、建設・構造材料、7、美容・保健、8、農産物・食品、9,製薬 ... etc. これらのサブグループを産業利用研究会の中につくって議論していく上で、必ずしも高度な事、たとえば放射光の本質的な研究議論はできなくても良いのではな いかと思います。ただ、場合によっては基礎的なことがわからなくてどうしても大学の先生がたの見識が必要になるといったような場合には他の研究会の先生た ちと議論していくというのがおおまかな形になると思います。今年度内にどのようなサブグループをどうつくるかについてもうすこし議論を深めた上で、8〜 10個程度つくることについて意見の一致を見ました。SPRUCとしても認めていただければこういう組織を立ち上げていきたいと考えます。 ![]() (中川)パブリックコメントを募集した際には、半分以上は産業界からの意見でした。つまり、よく考えてみると、産業界から意見を汲み上げる仕組みがこれまでになかったということを反映しているのだと思います。 (松井)おっしゃる通りだと思います。産業界からの意見をまとめてSPRUC側からの要求や意見という形で発信してもらえると良いと思います。 (中川)ここで聴衆からの意見を伺いたいと思います。 (会場)物質材料研究機構の勝谷と申します。先生がたのお話しを聞いていて少し考えていただきたいということがあり申し上げます。例えば電池に関係する ユーザーは電気化学会で発表されたりだとか、あるいは高分子学会などの学会組織で普段発表されていると思うのですが、SPRUCはこれ自体が学会みたいな もので、学会みたいに何かするということはないと思いますが、研究会として活動する場合には本質的に学会とリンクして活動しないとまずいのではないかと思 います。例えば金属などの構造材料でしたら金属学会とかセラミックス学会といったように、個々の研究会は専門学会と連携するというのは、外にユーザーを広 げるという意味でも良いのではないかと思いまして、意見としていわせていただきました。 (中川)先日、放射光構造生物学研究会では蛋白質科学会とジョイントさせる形でシンポジウムを開催しました。おっしゃるように、研究会を開くときにはいろいろな人に来てもらうというのは大切で、メインに関係している学会と一緒にやるというのはひとつのやり方だと思います。 (壽榮松)松井先生の話の件ですが、今回のシンポジウムのサブタイトルには奇しくも産業イノベーションという言葉があります。産業利用報告会に出席された 方々はこの会場にはあまり参加されていないというのは、SPRUCとして良くない話です。昨日から本シンポジウムでやっている電池や磁石の話についても企 業は強い関心をもっているはずだが、産業利用グループと別々に会合をやっているというのは不幸なことです。歴史的な問題があるのは事実だが、解消しなけれ ばならない。 SPRUCにおける産業利用研究会の問題はもっとも重要な問題だと考えていました。松井先生が産業界の研究会のオーガナイズを買って出てい ただけるという事で、ぜひお願いしたいと思います。 ![]() (中川)関連事項として、SPRUCの評議員会で決定したことですが、評議員を産業界から三分の一は産業界から決定するということを明文化しました。 (梶山)産業界のひとを入れるのに、とくにフロンティアソフトマター専用BL開発産学連合体という形では19社がちゃんと入っている訳です。そういうやり 方もひとつだと思います。企業が入れるBLというのは結構あります。そう意味で、BLのほうから産業に近づくという視点もあります。 (松井)今回のSPring-8シンポジウムの参加者には産業利用報告会に出席していた方々は少ない。企業は土日には出づらいという理由もありますけど。今後、アカデミアと産業界のコレボレーションの枠組みをつくってまずはやってみるという方向性で進めていきたい。 (中川)私の専門の分野の話になって申し訳ないのですが、例えば放射光構造生物学と創薬コンソのグループが必ずしもくっつくという必要はないので、何らか の形で融合していくためにやり方があるのではないかと思います。企業の方が入りやすければそれはそれで良いと思いますが。 (福山)研究会というのは会員の4分の1しか属していないということですよね。普段大学の先生・基礎研究をやっている人たちと産業の現場の方が意見交換す る機会がないというのは、双方にとってフラストレーションがたまることです。情報交換をしたいと思っている人たちが自発的に集まってくることができるよう な組織の意義は大きいでしょう。課題を抱える人がいる一方で、答える道具・知識・経験をもっているひとが一緒に集まる機会をSPRUCとして用意する、と いうことに尽きると思います。そうすると、形式的なところで問題となっている、例えばSPring-8の国際的な評価を議論するときに理研とJASRIが 別々にするというのはあり得ない。設置形態上やむを得ないことかもしれないが、研究が対象ということになったら一緒にやるべきで、その受け皿となる組織と してSPRUCがあると考えます。 (川上)さきほどから産業界の参加という話がでていますが、研究会はアカデミア主導というところがあり、アカデミアの方だとある意味dutyで入るという ことがあるが、企業の研究者は一研究者として何かやるということには壁がある。従って現場よりも違う私のような立場のものが出てくるということになりま す。新しい研究会をつくるという話がありますが、ある意味、創薬コンソというのはその形態なのです。理研・JASRIといろいろ協議をして開発をすすめて いくと、実質的な議論はコンソの中で常にやっています。ほかの産業もそういった形であればできるかもしれません。産業界では、利用するということを中心に 考えているので、アカデミアの方のやりたいという気持ちと違って、できるのかどうかということが中心になる。したがって、アカデミアと産業界では意見には ギャップがあるので、それを無理にくっつけようとするのは難しい部分があるとわたしは思います。 (会場 坂田)産業界というひとくくりで表現しますが、業種によっていろいろな意味があるのではないかと思います。産業をやっているから全部統括しようなんてそう 思わなくても、創薬コンソなんかは今の状態で非常に良い形なのだろうと思います。そちらの意思ですからそれで結構だと思います。触媒と電池とでは別のグ ループにしないと議論できないというのは私にはわからないが、それが少しでも良いというのなら、少しでも25%が35%になってくれればいいというふうに 考えれば、松井先生の提案をぜひ進めていただきたいと思います。 (佐藤)私はPFユーザーグループ(PF-UA)を代表する立場にいるのですが、皆さんに提案したいのが、複数のヘテロなユーザーグループを集めて密接に 議論すれば必ず必ず1+1が2以上になる新たなサイエンスが生まれてくるということです。例えば、蛋白質の構造解析にしても、さきほど言いましたが、まず はX線ですが、さらに中性子となると水素が見えやすくなるだけでなく、スピンや非弾性散乱などが利用できるようになります。また、タンパク質のラベリング では中性子とNMRが密接に関係します。そのような形で新しい研究会組織をつくっていかれると学会では得られない情報が得られると思います。 ![]() (福山)研究会組織では4つの分野に分けて、このなかで例えば物質応用といったグルーピングができてそこに様々な観点から研究会の方が集まって SPring-8を使った成果が定期的に紹介されるとかなり実質的な情報交換の場になるのではないかと思います。SPRUCがホストになっていろいろな視 点から意見がでるような情報交換の場を設けることは割合簡単にできて、サイエンティフィックに刺激的で面白いのではないかと思います。そう理解してよろし いでしょうか。 (佐藤)そのように思います。ただし、その中身全体を正確に理解してマッチングができる有識者は、分野間の融合を推進していく役割ですからこれも重要だと思います。 (福山)すばらしいものどうしのグルーピングがうまくされる仕組みが必要ですね。 (中川)括りの部分とまとめの部分をどうするかというのが重要になると思います。 (福山)研究テーマでまとめるというのと、そのために必要な良いデータをとるためのBLが横軸になってその両方が絶えず動いているということが重要ですね。 ![]() (会場 土肥JASRI理事長)産業利用の話で基礎と産業とのマッチングというのがかなり議論となっていますが、私が以前に理化学研究所で産学連携のところで組織 作りをやってきた経験で、いまの議論と同じように問題性をもったのは、理化学研究所のすべての分野と産業とのマッチングを行うのは無理だということでし た。基礎科学と産業は目的が全然ちがうので、一緒になって議論やっても一度は良いけれどそれが続かない。SPRUCの新しい組織図では生命科学・物質基 礎・物質応用・計測があるがそこには産業が入り込めないと思います。それらの下に産業利用が置かれるべきだと思う。産業を分けるのは意味がなく産業分野の 研究会を設立される場合には下のところに横断的につくっていただいたほうが良い。 (松井)産業界の方たちから一昨日に聞いたことも全くおっしゃる通りで、例えばワイドギャップ半導体の開発では結晶だけでなくデバイスをつくる作業があり ます。これは送電を含めて将来のエネルギー戦略にとって重要な先端材料なのですが、材料特性あるいはデバイス化プロセスの評価などを格子欠陥だけやってい れば良い訳ではなく、ありとあらゆる評価手法を横断的に全部使っている。要するにデバイスが出来上がれば良い訳ですから。したがって、彼らはどこの研究会 にも入れない、あるいはすべてに入らなければならないという状況ですので、今回の私の提案は、デバイスの観点から、あるいは出口側から見たグルーピングを やりたいというふうに思います。 (中川)まだ議論が尽きないと思いますが、時間の都合で今日のパネル討論はこれで終了したいと思います。これを反映させて新しい研究会組織への改変を進めていくことになりますので、今度とも皆様の御協力をお願いいたします。 以 上
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