放射光を利用する手法の中で、XAFSは物質中の特定の原子の化学(電子)状態や周囲の構造を知る有効な手段であり、非破壊で結晶にも非晶質にも適用できる手法です。産業分野ではこの10年で利用が著しく拡大しましたし、環境試料の分析では不可欠の解析手段となっております。また古代ガラスの着色機構の解明や絵画の絵の具の分析等、文化財研究においてもXAFSの応用が急増しております。
XAFSにより、これまで得ることが困難な文化財についての重要な情報が得られることから、今後文化財科学分野へのXAFS活用拡大が期待されますが、XAFSは放射光利用が原則であり実験室装置が稀であるため一般的でなく、その解析に専門性を要求されるため文化財研究者からは少し距離のある分析手法でありました。
今回の文化財研究会とX線スペクトロスコピー利用研究会の合同研究会では、下記のように文化財科学研究に関する講演と、文化財科学と比較的応用形態が近く、保存修復とも関係の深い環境分野でのXAFS応用に関する講演を行い、文化財研究者とXAFS研究者の相互理解を深め、双方の分野におけるXAFSの新たな応用展開を図りたいと思います。 |