放射光の原理
放射光とは ...
ほぼ光速で直進する電子が、その進行方向を磁石などによって変えられた際に発生する電磁波を放射光と呼び、1947年に電子シンクロトロン(電子加速器)で初めて観測されました。放射光は、電子のエネルギーが高いほど指向性の良い明るい光となり、また、電子のエネルギーが高く、進む方向の変化が大きいほど、X線などの短い波長の光を含むようになります。
電子は負の電荷をもっているためその周りに電場をつくっていますが、これは仮想の光子を雲のようにまとっていると考えられます。高エネルギーの電子が磁場で曲げられると仮想の光子が振り落とされて現実の光子となって放出されます。これが放射光です。
▲放射光の発生原理
放射光を発生させるための磁石
電子の進行方向を変えるために用いる磁石のタイプとしては、電子をリング状の加速器に閉じこめるために必要な偏向電磁石と、磁石列を特定の形に組み合わせた挿入光源があります。挿入光源はさらにアンジュレータとウィグラーの2種類に分けられます。それぞれの場合で特徴ある放射光が得られます。
- 偏向電磁石:赤外線からX線までの連続した波長の光が得られます。
- アンジュレータ:電子を周期的に小さく蛇行させ、蛇行の都度発生する放射光を干渉させることにより、極めて明るい特定波長の光が得られます。
- ウィグラー:電子を大きく複数回蛇行させることにより、より明るい連続した波長の光が短い波長領域で得られます。
放射光の特徴
放射光には、次のような特徴があります。
- 極めて明るい。
- 細く絞られ拡がりにくい。
- X線から赤外線までの広い波長領域を含む。
- 偏光している。
- 短いパルス光の繰り返しである。
SPring-8の放射光発生概念図
※2020年度よりSACLA からSPring-8 への電子ビーム入射が始まっています。
SACLAの電子銃から打ち出された電子をSACLAの加速器によって8GeV(80億電子ボルト)まで加速し、周長約1,500mの蓄積リングに投入し、8 GeVのエネルギーを維持しながら周回させて、偏向電磁石や挿入光源により放射光を発生させます。
発生した放射光(X線)は、ビームラインを通して、蓄積リング内外に設けられた実験ハッチに導かれ、さまざまな実験に利用されます。
最終変更日
2024-10-07 10:04