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2000年09月06日
NECと兵庫県立姫路工業大学(学長: 白子忠男氏、所在地:兵庫県姫路市)は、「SPring-8」放射光を用いた高分解能マイクロビームX線回折法を開発し、光デバイス中で使用される微細な半導体組成を従来に比べて2桁程度高い精度で決定することに世界で初めて成功いたしました。
NECと兵庫県立姫路工業大学(学長: 白子忠男氏、所在地:兵庫県姫路市)は、「SPring-8」放射光を用いた高分解能マイクロビームX線回折法を開発し、光デバイス中で使用される微細な半導体組成を従来に比べて2桁程度高い精度で決定することに世界で初めて成功いたしました。
今回の成果は、世界最大の大型放射光施設「SPring-8」に設置された兵庫県ビームラインを利用して、世界最高レベルの高分解能マイクロビームX線回折法を開発し、幅1.7μmの微小領域に選択成長された化合物半導体の精密な格子定数測定に成功したことにより実現しました。
これにより、選択成長された4元系化合物半導体InGaAsP層の組成を、従来技術と比較して2桁程度精密に決定することが可能となりました。この技術を用いて、選択成長層のマスク幅依存性を測定したところ、従来の常識に反し、V族元素(AsとP)の組成比がマスク幅の変化とともに変動していることが初めて明らかになりました。今回得られた結果をデバイス作製にフィードバックすることにより、結晶組成と格子定数をデバイス設計通りに制御することが可能になり、素子の発光特性を約40%も向上させることができました。
この技術により、波長分割多重(WDM)光通信ネットワーク用光集積素子の大幅な特性向上が期待されます。
「Spring-8」は、兵庫県南西部(西播磨)に位置する播磨科学公園都市で稼働中の世界最大の大型放射光施設であります。その中でも、兵庫県ビームラインは、「8の字アンジュレータ」を光源とし、垂直偏向と水平偏向の両方の高輝度硬X線が取り出せるユニークなビームラインで、産業利用、産学連携を意識して兵庫県が設置し、運営している専用ビームラインであります。
近年、インターネットの爆発的な普及に伴い、幹線系、支線系を問わず、より大容量で多機能な通信インフラの整備が求められており、WDMを基本とした光ネットワークは21世紀のインターネット社会を支えるバックボーンとして、強く期待されております。このような光通信ネットワークのキーデバイスである半導体レーザなどの光集積素子の作製は、InP基板の表面にSiO2膜などで部分的に覆ったマスクを形成し、マスク以外の領域に選択的に有機金属気相成長(MOVPE)法によりInGaAsP系の結晶成長を行う「選択成長法」により行われております。レーザ部の活性層に相当する部分のSiO2膜にストライプ状の窓を設け、そこに多重量子井戸(MQW)半導体層を結晶成長します。こうして結晶成長された各レーザの活性層の組成は、ストライプ領域両側のSiO2マスクの幅を変化させることで、ほぼ独立かつ任意に制御することができます。
しかし、これまでは、数μmの狭いストライプ領域に選択成長されたInGaAsP層の組成を高精度に測定する手段はありませんでした。現在、このような微小領域の組成を測定する手段としては、オージェ電子分光法がありますが、分解能が低いためこれまでV族組成の明確な変化は捉えられていませんでした。
NECと兵庫県立姫路工業大学では今後、ビームサイズの1μm以下への更なる縮小や測定時間の短縮を目的に、一層積極的な研究・開発活動を展開する予定であります。
なお、NECと兵庫県立姫路工業大学では今回の成果を、本年8月28日発刊の「アプライド・フィジックス・レターズ誌」および本年9月3日から7日まで北海道札幌市の北海道工業大学で開催された学会「第61回応用物理学会学術講演会」において、6日に発表いたしました。
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《参考資料》
(問い合わせ先)
(SPring-8に関すること) 財団法人高輝度光科学研究センター 広報室 TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786 E-mail:kouhou@spring8.or.jp
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