大型放射光施設 SPring-8

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セラミックス中の超微量元素の状態分析に成功(プレスリリース)

公開日
2003年08月01日
  • BL01B1(XAFS)
京都大学大学院工学研究科の田中功助教授を中心とする、京大、阪大および大型放射光施設(SPring-8)の共同研究グループは、SPring-8のXAFSビームラインBL01B1を利用したX線分光実験と阪大での放射性同位元素を用いた陽電子寿命実験により、酸化マグネシウムセラミックス中のガリウム不純物のppmレベルでの存在形態を定量的に調べることに世界で初めて成功した。

平成15年8月1日
京都大学
大阪大学
(財)高輝度光科学研究センター

 セラミックスの特性は濃度100万分の1(ppm)レベルの添加元素によって大きく変化することが知られている。しかし、このような微量元素の状態分析を行うことはこれまでは困難であり、どのような元素を添加すると特性が発現するのかは、試行錯誤的な研究に委ねられていた。
 京都大学大学院工学研究科の田中功助教授を中心とする、京大、阪大および大型放射光施設(SPring-8)の共同研究グループでは、文部科学省の特定領域研究『局在量子構造』の補助金を得て、セラミックス中の超微量元素を実験と理論計算の両面から包括的に理解するための研究を進めてきた。
 その結果、SPring-8XAFSビームラインBL01B1を利用したX線分光実験と阪大での放射性同位元素を用いた陽電子寿命実験により、酸化マグネシウムセラミックス中のガリウム不純物のppmレベルでの存在形態を定量的に調べることに世界ではじめて成功した。酸化マグネシウムは代表的なセラミックス材料で、プラズマディスプレイの保護膜や光源、触媒などに用いられるほか、固体酸化物燃料電池や化合物半導体の原料になるなど広い応用範囲を持つ。
 田中助教授は、添加元素の存在形態についての量子力学に基づいた理論計算の専門家でもあり、量子化学のメッカとして名高い京都大学福井謙一記念研究センターを兼担している。今回の研究成果は、理論計算による予測が実験によって検証されたことも高く評価されている。このような計算科学手法で材料設計を行うことが可能になれば、実験に必要なコスト削減、効率の飛躍的向上が期待できる。
 本研究成果は、8月1日発行のネイチャーマテリアルズ誌(Nature Materials)に掲載される。それに先立ち、7月13日、Nature Materialsオンライン版(AOP)に掲載された。

(論文)
"Identification of ultradilute dopants in ceramics"
ISAO TANAKA, TERUYASU MIZOGUCHI, MASAFUMI MATSUI, SATORU YOSHIOKA, HIROHIKO ADACHI, TOMOYUKI YAMAMOTO, TOSHIHIRO OKAJIMA, MASANORI UMESAKI, WAI YIM CHING, YOSHIYUKI INOUE, MASATAKA MIZUNO, HIDEKI ARAKI and YASUHARU SHIRAI

 

 

<本件に関する問い合わせ先>
京都大学大学院工学研究科 田中功
E-mail: tanaka@cms.MTL.kyoto-u.ac.jp
電話番号 075-753-5435  FAX番号 075-753-5447

<SPring-8についての問い合わせ先>
(財)高輝度光科学研究センター 広報部 原 雅弘
E-mail: hara@spring8.or.jp
電話番号 0791-58-2785  FAX番号 0791-58-2786