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佐々木裕次主幹研究員(財団法人高輝度光科学研究センター)、廣瀬敬教授(東京工業大学大学院)が第21回「日本IBM科学賞」を受賞(トピック)

公開日
2007年11月02日
  • 受賞

SPring-8を運営する財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)の佐々木裕次主幹研究員、SPring-8の利用者である東京工業大学大学院の廣瀬敬教授が第21回「日本IBM科学賞」を受賞しました。日本IBM科学賞は、科学分野の基礎研究で優れた研究活動を行っている若手研究者に授与されます。

 

● 佐々木裕次主幹研究員(財団法人高輝度光科学研究センター)
研究業績:「X線1分子追跡法の考案とその融合領域への応用」

【研究内容】
 X線計測法は、静的で安定な結晶や多分子から、総和的な散乱信号を計測し、平均的な構造情報を取得する有力なツールである。しかし、最近話題の機能性生体高分子等は、細胞内において機能発現時に単分子で働く事から、その機能解明には1分子の動的情報が重要であることが分ってきた。1980年代、可視領域の蛍光による1分子計測法が開発されたが、その精度は数ナノメートル(10-9m)であり、生体分子内部の運動情報を抽出する精度的な壁となっていた。佐々木氏は、従来のX線計測の常識から脱却し、1分子の内部運動を時間的にミリ秒で、空間的にはピコメートル(10-12m)という、高速でかつ驚異的な精度で計測可能なX線1分子追跡法を考案し、これを用いてDNA1分子の内部揺らぎや数種類の膜たんぱく質分子の1分子内運動計測に成功した。これらの業績は、構造生物学的計測技術や生物物理学の研究のいずれにおいても革新的な進展をもたらした。

【受賞理由】
 佐々木氏は、X線1分子追跡法という全く今までにない独創的なアイデアを考案し、その中心的な課題であったナノ結晶作製法を確立することで、X線による生体分子計測に極めて大きなブレークスルーをもたらした。その成果は生物物理学に留まることなく、広域材料学への応用や、新原理計測法の開発に大きなインパクトを与えようとしている。佐々木氏のこれらの業績は、審査員らの満場一致をもって日本IBM科学賞に相応しいと評価された。

 

● 廣瀬敬教授(東京工業大学大学院)
研究業績:「ポストペロフスカイト相の発見と地球コア・マントル境界域の研究」

【研究内容】
 高圧下にある物質は、一般に大気圧下とは大きく異なる結晶構造や物性をもっている。地球の内部もそのような高圧かつ高温の世界である。それゆえ、地球表層に存在する鉱物のほとんどは地球内部の環境下では相転移を起こし、まったく別の性質を示すようになる。しかしながら実験室で地球深部に相当する超高圧高温状態を発生させることは困難であるため、地球の深部はどのような物質から成り、どのような物性を持っているか、未だ多くのことが謎のまま残されている。廣瀬教授らのグループは、世界の先頭に立って超高圧高温の発生に関する技術開発を行ってきた結果、現在では300万気圧を超える超高圧実験に成功しており、SPring-8の高輝度エックス線を使った地球や惑星深部の物質の研究を精力的に進めている。

【受賞理由】
 廣瀬教授らのグループは、SPring-8におけるX線回折実験により、地球の下部マントルの主要鉱物MgSiO3ペロフスカイト相がマントル最下部において新鉱物ポストペロフスカイト相へ相転移するという、きわめて重要な発見をした。この発見により、地球内部のもっともミステリアスな領域とされていたコア・マントル境界域の実態解明に大きく近づいたことが評価された。

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