- 公開日
-
2008年04月04日
国立大学法人東京工業大学は、国立大学法人大阪大学、独立行政法人海洋研究開発機構、財団法人高輝度光科学研究センター、日本電子株式会社と共同で、地球マントル最下部の主要鉱物ポストペロフスカイト相がきわめて高い電気伝導率を持ち、液体金属コアとの電磁気的結合の結果、角運動量を交換することによって、マントル(地球)の自転速度を変動させていることを世界で初めて明らかにしました。
平成20年4月4日
東京工業大学
国立大学法人東京工業大学は、国立大学法人大阪大学、独立行政法人海洋研究開発機構、財団法人高輝度光科学研究センター、日本電子株式会社と共同で、地球マントル最下部の主要鉱物ポストペロフスカイト相がきわめて高い電気伝導率を持ち、液体金属コアとの電磁気的結合の結果、角運動量を交換することによって、マントル(地球)の自転速度を変動させていることを世界で初めて明らかにしました。 地球のマントルでは、深さ約2600kmにおいて、その主要鉱物がぺロフスカイト相*1からポストぺロフスカイト相*2へ変化することが知られています。この両者の結晶構造は互いに大きく異なることから(図1)、相変化に伴って、マントル深部のさまざまな性質が大きく変化していることが予想されます。なかでも電気伝導度(電気抵抗の逆数)は、金属コアとの電磁気的結合の強さを決める重要な物性値です。 東京工業大学では、このたび大阪大学、海洋研究開発機構、高輝度光科学研究センター、および日本電子株式会社と共同で、大型放射光施設SPring-8の高圧構造物性ビームライン(BL10XU)にて超高圧高温実験を行い(図2)、このポストぺロフスカイト相の電気伝導度の測定に世界で初めて成功しました。その結果、ポストぺロフスカイト相を主要構成鉱物とするマントル最下部層(D”層と呼ばれる深さ約2600-2900kmの領域)の電気伝導度は102 S/m程度(Sはジーメンスと呼ばれる電気の流れやすさを示す単位)であり、マントルの他の領域の伝導度よりもはるかに高いことが明らかになりました。 ところで、一日の長さは周期的に変動していることが知られています。またその周期は数十日、数年、数十年単位とさまざまですが、このうち数十年周期で起こる、数ミリ秒の変動がもっとも大きなものです。この変動は、マントル最下部が高電気伝導層であることにより、金属コアとの強い電磁気的結合が生じ、その結果液体の金属コアと固体のマントルの間で角運動量の交換が起こることで説明できます(図3)。すなわち、液体コアの流れが変化することによって、地球磁場が変動し、マントル最下部にローレンツ力が働いて、マントル(地球)の自転速度が変化するのです。今回の実験によって、マントル最下部(ポストぺロフスカイト相)の電気伝導度は、観測される一日の長さの変化を説明するのに十分高いものであることがわかりました。 本成果は、2008年4月4日発行の米科学誌サイエンスに公表される予定です。
(論文) "The Electrical Conductivity of Post-Perovskite in Earth's D'' Layer" Kenji Ohta, Suzue Onoda, Kei Hirose, Ryosuke Sinmyo, Katsuya Shimizu, Nagayoshi Sata, Yasuo Ohishi, Akira Yasuhara Science, Vol. 320. no. 5872 (4 April 2008)
|
《参考資料》
《用語解説》
*1 ペロフスカイト相
地球の下部マントル(深さ660-約2600km)の主要鉱物。主成分は(Mg,Fe)SiO3。
*2 ポストペロフスカイト相
D”層と呼ばれるマントル最下部層(深さ約2600-2890km)の主要鉱物。化学組成はペロフスカイト相と同じ。層状の結晶構造を持つ(参考図1)。2004年に廣瀬研究室が世界ではじめて合成に成功した鉱物。
(問い合わせ先) 東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻 教授 廣瀬 敬 TEL: 03-5734-2618 E-mail:
(報道担当) 東京工業大学広報センター TEL: 03-5734-2975,2976 FAX: 03-5734-3661 E-mail:
(SPring-8に関すること) 財団法人高輝度光科学研究センター 広報室 Tel:0791-58-2785/Fax:0791-58-2786 E-mail: kouhou@spring8.or.jp
|