大型放射光施設 SPring-8

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「SPring-8産業利用ビームラインにおけるXAFS測定代行」の本格運用開始について(プレスリリース)

公開日
2008年06月25日
  • BL14B2(産業利用II)
登録施設利用促進機関である財団法人高輝度光科学研究センターは、平成20年10月から、大型放射光施設「SPring-8」を利用して、施設の利用支援スタッフが、ユーザーに代わってSPring-8を利用した測定を行う「測定代行」の本格運用を開始します。

平成20年6月25日
財団法人高輝度光科学研究センター

本発表のポイント
SPring-8※1の利用支援スタッフが、ユーザーに代わってSPring-8を利用した測定を行う。
○ 企業内に専門スタッフを確保することが困難な中堅企業等の利便性拡大や即時利用ニーズへの対応を図る。
○ 現在試行的に運用を開始しているが、平成20年10月より、本格運用に移行する。

 登録施設利用促進機関※2である財団法人高輝度光科学研究センター(吉良爽理事長、以下「JASRI」)は、平成20年10月から、大型放射光施設「SPring-8」を利用して、施設の利用支援スタッフが、ユーザーに代わってSPring-8を利用した測定を行う「測定代行」の本格運用を開始します。
 「測定代行」では、ユーザーは、測定したい試料を施設へ送付、または持参するだけで、測定データを得ることが可能となります。従来、SPring-8を利用するユーザーは、自らSPring-8に赴き、ビームラインの実験装置を操作して利用する必要がありましたが、SPring-8までの移動時間及び費用がかかること、また、放射光利用実験に関する一定の専門知識が必要なことなどから、施設スタッフによる測定代行が望まれていました。また、測定代行では、利用申請を随時受け付けることにより、すぐに利用したいというユーザーにも活用されることが期待されます。
 測定代行は、産業利用 II ビームライン(BL14B2)※3において、XAFS(X線吸収微細構造)※4測定を対象に実施されます。XAFS測定は、非晶質固体の局所構造等を測定するための手法で、触媒、リチウムイオン電池、及び発光材料等に使用される、さまざまな元素分析や、六価クロムの有害成分の極微量分析等の希薄・薄膜試料の分析など、自社製品の分析や製品開発に幅広く利用されています。最近では自動車排気浄化用の触媒の機能を解明し、環境浄化に大きく貢献するなど、具体的な成果も出始めています。
 平成20年10月から始まる2008B利用期から、成果専有時期指定課題※5の一形態として募集が開始されます。課題募集は随時行われることから、ユーザーは、利用したいときに利用申請が可能です。利用料金は、成果専有時期指定にかかるビームタイム使用料2時間あたり18万円と消耗品実費負担相当額2時間あたり定額分2,575円及び従量分(測定代行中に実際に使用した消耗品等の金額)の合計額となります。
 JASRIでは、測定代行を通じて、企業内あるいは研究組織内で専門スタッフを確保することが困難な中堅企業あるいは研究組織等への利便性拡大や、すぐに使いたいという即時利用ニーズへの対応を図ることにより、新しい利用者層の開拓につなげたいと考えています。
 本格運用開始後、測定代行の対象分野をXAFS以外にも拡大することも計画しています。


〈用語解説〉

※ 1 大型放射光施設SPring-8
 独立行政法人理化学研究所(以下「理研」)が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す施設。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来します。放射光(シンクロトロン放射光)とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する、細く強力な電磁波のこと。

※ 2 登録施設利用促進機関
 「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」(平成6年法律第78号)に基づき、利用促進業務(1 利用者選定業務、2 利用者支援業務)を実施する機関をいいます。
 JASRIは、大型放射光施設「SPring-8」の登録施設利用促進機関として当該業務を実施しています。

※ 3 産業利用 II ビームライン(BL14B2)

 

ビームラインの概要 (詳細情報はこちら

 

本ビームラインは広範な産業利用ニーズに応え、効率的な利用によって産業界の利用拡大を主な目的とした汎用的な偏向電磁石ビームラインです。本ビームラインの実験ハッチは、光学ハッチから飛び地の格好で下流側に設置されています。実験ハッチは光源から56m下流に位置し、ハッチのサイズは6m(ビーム方向)×3.75m(W)×3.3m(H)となっています。実験ハッチにはXAFS測定装置が設置されています。(理研が一般利用に供している共用ビームライン26本のうちの1本)

研究分野

● 広帯域XAFS測定(3.8-72keV)

 

下記以外の元素も含め軽元素を除くほとんどすべての元素の分析が可能
・光触媒、自動車排ガス処理用触媒、燃料改質用触媒などに使用されている元素
 (チタン、モリブデン、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウムなど)
・リチウムイオン電池などの電池で使用されている元素
 (マンガン、ニッケル、コバルトなど)
・ディスプレイや白色LEDなどの発光材料として使用されている元素
 (セリウム、プラセオジウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウムなど)
・抗菌作用を持つ元素(銀)
・土壌等の環境汚染の原因となる元素(ヒ素、水銀、鉛)

● 希薄・薄膜試料のXAFS測定

 

・6価クロム、砒素、鉛、カドミウムなど有害物質の極微量(ppmオーダー)分析
・ディスプレイなどの電極材料として重要な透明導電膜(インジウム、亜鉛、スズなど)や発光材料(GaN)など膜厚がナノメーターオーダーの薄膜分析

XAFS測定装置
XAFS測定装置

 

※ 4 XAFS
 XAFSとはX-ray Absorption Fine Structureの略称で、日本語ではX線吸収微細構造と呼ばれています。
 すべての物質は、原子構造を反映したX線の吸収現象を示します。その吸収量を精密に捉えることによって、物質の構造情報を得ることができるX線分光法です。

※ 5 成果専有時期指定課題
 SPring-8の利用には、成果専有利用と成果非専有利用の2つの利用形態があります。 
成果専有利用は、成果公開の義務がない利用形態です。審査も簡略化されますが、成果公開の義務がない代わりに、利用時間に応じたビーム使用料が課せられます。実験内容あるいは試料等に機密情報が含まれる場合等に利用されています。
 成果専有時期指定課題とは、成果専有利用課題のうち、申請時に利用希望時期を指定できる課題です。ただし、通常の成果専有利用の5割増のビーム使用料が加算されます。利用希望時期を踏まえて、申請された課題は迅速な審査が行われます。


 

(問い合わせ先)
 (財)高輝度光科学研究センター
 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1

(測定代行に関する事項)
 産業利用推進室
 梅咲 則正(うめさき のりまさ)
  E-mail: メール1
  Tel:0791-58-0834 / Fax:0791-58-0830

(課題募集に関する事項)
 利用業務部
 牧田 知子(まきた ともこ)
  E-mail: メール2
  Tel:0791-58-0961 / Fax:0791-58-0965

(SPring-8全般に関する事項)
 広報室
 岡田 行彦(おかだ ゆきひこ)
  E-mail: メール3
  Tel:0791-58-2785 / Fax:0791-58-2786