ナトリウム・カリウムポンプの立体構造の解明(プレスリリース)
- 公開日
- 2009年05月21日
- BL41XU(構造生物学I)
平成21年5月21日
東京大学分子細胞生物学研究所
財団法人高輝度光科学研究センター
大型放射光施設SPring-8の構造生物学 I ビームラインBL41XUを用いて、心不全の治療薬ジギタリスの標的分子でもあり、神経の興奮などに必須なナトリウム・カリウムポンプの立体構造を世界で初めて解明することに成功した。 すべての動物細胞では細胞の内と外でナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)等のイオンに関し濃度差が保たれており、この濃度差が生命活動の原動力ともなっている。例えば、「神経が興奮する」という現象は、細胞の外に多いNa+が、濃度差に従って細胞内に流入することで「活動電位」という電気信号が生じることがその実体である。一方、興奮によって失われたイオンの濃度差をもとに戻すのがイオンポンプ蛋白質の働きである。今回発表する研究で構造が決定されたのはNa+, K+に対するポンプ蛋白質であり、ATPのエネルギーを利用してNa+を細胞内から外へ、K+を外から内へと運搬する。同族には、やはり豊島教授グループが構造を決定したCa2+ポンプがある。Na+, K+ポンプを発見したデンマークのスコウ(Jens C. Skou)に1997年のノーベル化学賞が授与されたほど重要な蛋白質である。このポンプは、強心剤として200年以上前から処方されているジギタリス類の標的蛋白質であり、心不全に深く関わる他、高血圧やがんとの深い関わりも明らかになって来たため、新たな治療薬の標的としても注目されている。今回、その原子構造が決定されたことによって薬剤の開発は大きく前進することが期待される。 (論文) |
《参考資料》
(問い合わせ先) (SPring-8に関すること) |
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