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2009年11月27日
兵庫県立大学、大阪大学、韓国忠北大学の共同研究チームは、大型放射光施設SPring-8を使ってタンパク質合成を抑制する小さなRNAを選択的に輸送する仕組みを解明した。
平成21年11月27日
大阪大学
兵庫県立大学
兵庫県立大学、大阪大学、韓国忠北大学の共同研究チームは、大型放射光施設SPring-8を使ってタンパク質合成を抑制する小さなRNAを選択的に輸送する仕組みを解明した。 ヒトの細胞では数万種類のタンパク質が生命の営みを支えている。それらは常に必要なわけではなく、不必要なときには合成が抑制されている。そうしたタンパク質合成抑制に関わる小さなRNA(マイクロRNA;miRNA)があり、そのRNAによるタンパク質合成の抑制をRNA干渉と呼ぶ。その働きの重要性を鑑みて、RNA干渉の発見者には2006年にノーベル医学生理学賞が贈られた。 このマイクロRNAのもととなるプレ-マイクロRNA(pre-miRNA)は核で合成される。核から細胞質に運ばれて、2つに切断されて一方がマイクロRNAになる。核から細胞質へのプレ-マイクロRNAの輸送は、エキスポーティン5(Exp-5)とラン(RanGTP)という2種類のタンパク質によって行われる。今回、エキスポーティン5とランおよびプレ-マイクロRNAの3者が核内で結合している構造(図4)を大型放射光施設SPring-8の大阪大学蛋白質研究所専用ビームライン・生体超分子複合体構造解析ビームラインBL44XUのX線を使って決定した。エキスポーティン5とランの複合体は、野球のファーストミットのような形をしていて、プレ-マイクロRNAの二重らせん部分を柔らかくつかみ、一本鎖末端の2塩基には強固に結合する。核では無数のRNAが合成されており、そのうちRNA干渉に関与するプレ-マイクロRNAはヒトでは約700種類見つかっている。今回の構造研究では、エキスポーティン5とランの複合体はなぜ約700種類のプレ-マイクロRNAだけを選んで核から細胞質に運ぶことができるのかを明らかにした。その結果RNA干渉が円滑に進行する。 マイクロRNAの中には、ある種のがんの発症、C型肝炎ウイルスやエイズウイルスの増殖などに関わるものが見つかっていることから、この研究を基盤として、それらのマイクロRNAの機能の調節に関わる研究を進展させることができれば、これらの疾病の予防や治療に貢献する可能性がある。 この成果は米国の科学雑誌Science〔11月27日〕に掲載された。
(論文) “A High-Resolution Structure of the Pre-microRNA Nuclear Export Machinery” Chimari Okada, Eiki Yamashita, Soo Jae Lee, Satoshi Shibata, Jun Katahira, Atsushi Nakagawa, Yoshihiro Yoneda, and Tomitake Tsukihara Science, 326 (5957), 1275 – 127927 (2009), published online 27 November 2009.
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《参考資料》
(問い合わせ先) (本研究について) 兵庫県立大学大学院 特任教授 月原冨武 TEL: 0791-58-0342 E-mail:
兵庫県立大学大学院 研究員 岡田千真理 TEL: 06-6879-8635 E-mail:
大阪大学蛋白質研究所 助教 山下栄樹 TEL: 0791-58-0803 ex.3611 E-mail:
(SPring-8に関すること) 財団法人高輝度光科学研究センター 広報室 TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786 E-mail:kouhou@spring8.or.jp
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