三次元培養皮膚モデルの角質層を構築する手法を確立 - 大型放射光施設「SPring-8」の利用により実現! -(プレスリリース)
- 公開日
- 2011年04月06日
- BL40B2(構造生物学II)
2011年4月6日
日本メナード化粧品株式会社
日本メナード化粧品株式会社(本社:名古屋市中区丸の内 3-18-15、社長:野々川純一)は、大型放射光施設(SPring-8)の構造生物学IIビームライン(BL40B2)の高輝度X線回折装置を利用した構造解析により、三次元培養皮膚モデルの角質層を構築し、ヒトの角質層に近づける手法を確立しました。 そこでメナードでは、この三次元培養皮膚モデルの角質層の細胞間脂質を構築する成分を検討し、細胞膜と類似した成分であるリン脂質から成る「リポソーム」に着目しました。独自に調製したリポソーム製剤を三次元培養ヒト皮膚モデルの上から添加することで、細胞間脂質の構造が変化し、ヒトの細胞間脂質の構造に近づくことを見出しました。この技術を用いることにより、化粧品の安全性評価や有効性評価の精度が高まると考えています。また、リン脂質を用いたカプセル化技術による、成分の浸透性に関しても長年研究してきており、新しく開発した化粧品の浸透性も、今回開発した三次元培養皮膚モデルを用いて確認しました。 (学会発表) |
《用語解説》
※1 大型放射光施設(SPring-8)
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設。放射光とは、光速に近い速度で加速した電子の進行方向を電磁石で変えたときに発生する、強力な電磁波(X線)のこと。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来する。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。
※2 皮膚の角質層の構造
角質層は皮膚の最外層にあり、角質細胞と細胞間脂質からなります。細胞間脂質は、セラミド、脂肪酸、コレステロールといった脂質で構成され、層状に存在しています。
《参考資料》
X 線回折によって得られた像を、関数を用いてコンピュータシミュレーション解析を行い、ピークを算出することによって、細胞間脂質の層の状態や、密度を解析することができます。
ヒトの皮膚は、細胞間脂質の配列が整っており、層がしっかりと積み重なっているため、バリア機能を果たすことができます。しかし、三次元培養皮膚モデルの角質層の細胞間脂質は配列が乱れているため、層がしっかりと形成されず、バリア機能が弱い状態です。
三次元培養皮膚モデルにリポソームを添加すると、細胞間脂質の配列が整って層が形成され、ヒトの皮膚の状態に近づいたと言えます。
ヒトの皮膚の細胞間脂質は、配列が整っており、密度が高く規則的に並んで存在しています。しかし、三次元培養皮膚モデルの細胞間脂質は、配列が乱れており、密度が低い状態です。そのため、バリア機能が弱い状態です。
三次元培養皮膚モデルにリポソームを添加すると、細胞間脂質の配列が整って密度が高くなり、ヒトの皮膚の状態に近づいたと言えます。
《問い合わせ先》 (SPring-8に関すること) |
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