光合成酸素発生の謎を解明 (プレスリリース)
- 公開日
- 2011年04月18日
- BL44XU(生体超分子複合体構造解析)
- BL41XU(構造生物学I)
- BL38B1(構造生物学III)
2011年4月18日
岡山大学
大阪市立大学
岡山大学大学院自然科学研究科の沈建仁教授(バイオサイエンス専攻)と大阪市立大学・複合先端研究機構の神谷信夫教授(物質分子系専攻)らの研究グループは、光合成において光エネルギーを利用し、水を分解して酸素を発生させる反応の謎を解明しました。太陽の光エネルギーを生物が利用可能な化学エネルギーに変換する機構を解明し、地球の環境問題、エネルギー問題、食料問題の解決に貢献する画期的な成果といえます。本研究の成果は、米国東部時間4月17日13時発行の英国雑誌「Nature」オンライン版にResearch Articleとして掲載されています。 (論文) |
概要
光合成は、太陽の光エネルギーを利用して、有機物の燃え残りと言える二酸化炭素からブドウ糖を作り出す過程です。ブドウ糖は、我々人間を含め、ほとんどすべての地球生命体が、呼吸によりエネルギーを取り出している栄養源です。光化学系II複合体(PSII、図1)は、太陽からの光を受けて、水を分解して酸素分子を発生させ、同時に電子を発生させています。この電子は、二酸化炭素をブドウ糖まで変化させるために利用されます。これまでPSIIの酸素発生反応は、4個のマンガン原子(Mn)と1個のカルシウム原子(Ca)が複数の酸素原子(O)により結びつけられた金属・酸素クラスターの上で進行しているとされていましたが、そのクラスターの正確な化学組成と詳細な原子配置は明らかにされていませんでした。
今回、我々は、PSIIの結晶の質を従来と比べて飛躍的に向上させることに成功し、大型放射光施設(SPring-8)の3本のビームライン(BL44XU、BL41XU、BL38B1)を利用してX線結晶構造解析を行いました。これにより、そのクラスターはMn4CaO5の組成をもち、全体として歪んだ椅子の形をしており、ひとつのMnとCaにそれぞれ2個の水分子が結合していることが明らかになりました(図2)。これら4個の水分子のいずれかは、Mn4CaO5クラスターから発生する酸素分子の中に取り込まれるものと考えています。
見込まれる効果
今後、このクラスター構造を模倣した触媒が開発されると、触媒まで太陽の光エネルギーを伝達する部分と、その触媒が水から作り出す電子を用いて水素分子やメタノールを合成する部分を組み合わせることが可能になり、人工光合成を実現できるようになります。
これにより、近い将来に人類が直面するエネルギー問題や環境問題、食料問題を一気に解決する足がかりになるものと期待します。
2個の単量体からなる2量体構造を取っており、2個の赤丸の場所に酸素発生中心があります。
紫色はマンガン原子、黄色はカルシウム原子、赤は金属原子を結ぶ酸素原子、オレンジ色は酸素発生にかかわる水の酸素原子です。
《研究内容に関するお問い合わせ》 大阪市立大学 複合先端研究機構 《報道・取材に関するお問い合わせ》 大阪市立大学 総務課広報担当 (SPring-8に関すること) |
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