被災した東日本の研究施設の利用者をSPring-8が受入れ(プレスリリース)
- 公開日
- 2011年05月13日
- ビームタイム
平成23年5月13日
独立行政法人理化学研究所
財団法人 高輝度光科学研究センター
独立行政法人理化学研究所(以下「理研」、野依良治理事長)と財団法人高輝度光科学研究センター(以下「JASRI」、白川哲久理事長)は、東日本大震災で被災して利用できなくなった放射光施設などの「量子ビーム※1施設」の利用者に対する支援を実施します。 |
1.背景
平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、被災した地域に存在する最先端の研究開発を支える重要な研究施設のいくつかにも甚大な被害が及び、その利活用に対する影響が懸念されています。
被災した研究施設では、復旧までの間、研究活動を再開することができないため、科学技術立国として我が国の科学技術の発展の遅延と産業の国際競争力の低下を招来しないよう対応する必要があります。そこで、理研とJASRIは相互に連携してSPring-8の運転計画の見直しなどを行い、被災した量子ビーム施設で実験が困難となった利用者に対する支援を実施することとしました。
2.支援の内容
(1)「量子ビーム施設震災優先枠」の設定について
理研とJASRIは、初動的な支援の1つとして、平成23年度上期のSPring-8の運転計画の見直しと、緊急用留保時間の見直しを行い、26本ある共用ビームラインについて、1本あたり約250時間の放射光利用時間を確保しました。
具体的には、元々の運転計画にあった放射光利用時間2016時間の内、緊急課題などに当てるために2割程度を確保していた留保時間の見直しにより、114時間を確保しました。また、本来は加速器の安定した運転のために必要なものとして措置していた調整時間を見直したことにより、136時間を確保しました。
(2)「量子ビーム施設震災優先枠」における課題採択について
被災した量子ビーム施設の中でも、SPring-8と同じく放射光を利用者に提供しているKEKの放射光科学研究施設PFの利用課題を対象にしました。PFで既に課題採択され、平成23年度上期に実施が予定されていたものの、震災により実施が困難となった課題を対象として、「量子ビーム施設震災優先枠」の範囲で課題実施希望を募った結果、113件の応募があり、104件の利用研究課題を採択しました。
3.今後について
今回採択した利用研究課題については、平成23年5月上旬以降、量子ビーム施設震災優先枠の範囲内で実施時期などを調整した上で、適宜、利用実験を実施してもらいます。また、大強度陽子加速器施設(J-PARC、(独)日本原子力研究開発機構・KEK)の中性子利用課題などについては、放射光利用を代替手法とすることが可能かどうかの検討が必要となるため、その検討結果に従って、順次対応していきます。
その他の被災した量子ビーム施設についても、復興の状況、それら施設の利用者の研究実施状況を確認しつつ、平成23年度下期以降も、被災した量子ビーム施設と連携しながら、理研とJASRIは必要な支援を検討していきます。
《問い合わせ先》 (報道担当) |
《補足説明》
※1 量子ビーム
光子、イオン、電子、中性子、中間子、ニュートリノなどのビームの一般的総称であり、加速器や高出力レーザー装置、原子炉などの施設から供給される種々の広範なビームを含む概念。電子を加速することにより得られる放射光も量子ビームの一種であり、放射光を利用する放射光施設も、量子ビーム施設の一つである。
※2 大型放射光施設SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設。放射光とは、光速に近い速度で加速した電子の進行方向を電磁石で変えたときに発生する、強力な電磁波(X線)のこと。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来する。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。
- 現在の記事
- 被災した東日本の研究施設の利用者をSPring-8が受入れ(プレスリリース)