地球液体核に二層対流〜地球磁場変動に大きな影響〜(プレスリリース)
- 公開日
- 2011年11月11日
- BL10XU(高圧構造物性)
2011年11月11日
独立行政法人海洋研究開発機構
国立大学法人東京工業大学
財団法人高輝度光科学研究センター
独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)地球内部ダイナミクス領域の廣瀬敬上席研究員(兼務:国立大学法人東京工業大学教授)・小澤春香技術研究副主任、国立大学法人東京工業大学(学長 伊賀健一)大学院理工学研究科の高橋太助教らは、財団法人高輝度光科学研究センター(理事長 白川哲久)と共同で、高圧相転移実験を行い、地球外核(液体)の重要な成分である酸化第一鉄(FeO)が地球外核での一定以上の温度・圧力条件下(240万気圧、4000K)で、従来知られていなかった結晶構造で安定すること(相転移)を発見しました。またその結果に基づいて地球外核の対流状態を数値シミュレーションによって検討したところ、従来一層だと考えられていた地球外核の対流は、今回新たに発見したFeOの相転移が生じ、対流が遮蔽されることにより二層対流になる可能性を世界で初めて示しました。今回の現象解明は、液体の状態である金属の流れによって生じ、宇宙空間から降り注ぐ太陽風や宇宙線に対する防護壁の役目を担う地球磁場の変動解明に大きく寄与すると考えられます。 今回の成果は、11月11日付(日本時間)の米科学誌「サイエンス」に掲載されます。 (論文) |
1. 背景
地球の中心には半径3500kmの金属鉄を主成分とする核があり、金属核は深さ5150kmを境に液体核(外核)と固体核(内核)に分かれています(図1)。外核の液体金属が対流することにより、地球磁場が発生しています。外核の成分は溶融した状態の鉄で、30%程度の酸化第一鉄(FeO)が含まれており、地震波観測に基づいて外核の対流は一層だと従来考えられてきましたが、温度圧力条件の変化に伴う成分の結晶構造の変化の影響等考慮されておらず、正確には分かっていませんでした。
そこで、本研究では、FeOの外核中での結晶構造の変化を調べ、その変化により外核がどのように対流しているのかを調べました。
2. 成果
本研究では、大型放射光施設SPring-8の高圧構造物性ビームライン(BL10XU)において、地球外核の物理条件の範囲(227万気圧、3770K~324万気圧、4180K)で、地球外核の成分であるFeOの結晶構造がどのように変化するのかを調べました。その結果、外核中部に相当する温度圧力条件下(240万気圧、4000K)で塩化ナトリウム型構造から塩化セシウム型構造へと結晶構造が変化することを見出しました(図3)。FeOが塩化セシウム型構造をとることは従来知られておらず、本研究により初めて発見されました。
この結晶構造の変化は対流の障害になり、外核の対流を変える可能性があるため、今回の結果を数値シミュレーションに取り入れ、外核の対流状況を調べました。その結果、外核の対流は、FeOが塩化セシウム型構造に変化する深度で遮断され、従来考えられていたような一層ではなく、二層対流となることが明らかになりました(図4)。
3. 研究の意義と今後の展望
いままで外核の対流は一層だと考えられていましたが、本研究により発見した構成成分の相転移を考慮すると、二層対流である可能性を示しました。外核の対流運動により地球磁場は生成されています。地球の歴史を通して、地磁気の南北は平均して70万年に1度入れ替わって来ました。二層対流が不安定になることにより、地磁気の逆転を引き起こしている可能性があります。
《参考資料》
対向する一組のダイヤ(C)の間に試料をはさみ、超高圧下でレーザーを照射することにより、実験室内で地球内部の温度圧力を発生させる。
赤い領域が実験圧力温度領域。B1、塩化ナトリウム型構造;B2、塩化セシウム型構造;B8、ヒ化ニッケル型構造;rB1、歪んだ塩化ナトリウム型構造。点線、Fei & Mao (1994);融解曲線、Fischer & Campbell (2010)。
図4:外核の対流様式の子午面断面図。
流れは矢印で示した。左図は外核内に相転移がない場合。外核液体中の相転移が二層対流を引き起こしている(右図)。
《問い合わせ先》 (本研究について) 技術研究副主任 小澤 春香 (報道担当) (SPring-8に関すること) |
- 現在の記事
- 地球液体核に二層対流〜地球磁場変動に大きな影響〜(プレスリリース)