名古屋工業大学若手研究イノベータ養成センターの宮崎秀俊助教が日本熱電学会学術講演会講演奨励賞を授与(トピック)
- 公開日
- 2012年09月10日
- 受賞
2012年8月28日、日本熱電学会は、「SPring-8の放射光を用いた高性能熱電変換材料における機能性の解明に関する研究」の発表に対し、日本熱電学会学術講演会講演奨励賞を授与しました。
受賞者:
宮崎 秀俊(名古屋工業大学若手研究イノベータ養成センター)
研究業績:
高性能熱電変換材料ハーフホイスラー化合物ZrNiSnの電子構造の解明
研究内容:
ハーフホイスラー型ZrNiSn合金は、次世代の高温用熱電変換発電材料として注目されている材料です。熱電変換発電とは、材料に温度差を与えるのみで電力を取り出すことができるため、CO2を排出しない、環境に優しい発電方法として、近年、特に注目を集めている技術です。そこで、我々の研究室で焼結法で合成に成功したZrNiSnに対して、SPring-8 BL27SUにおいて放射光光電子分光測定を行うことにより、高精度で試料内部の構成元素を分析し、熱電性能に関与している電子状態を詳細に調べました。
その結果、大量生産には向いているものの、不純物が混入しやすいと言われている焼結法で作製したにも関わらず、不純物の混入は見られず、非常に高い純度の合金が生成されていることが分かり、この合金系では焼結法による作製が適していることを実証しました。また、理論計算の結果では半導体になると予測されているものの、金属的な電子構造を形成していることが明らかになりました。様々な理論計算と得られた実験結果を比較した結果、本来、どの原子も存在しない位置(空孔サイト)にNi原子が存在していることが明らかになり、擬ギャップという特別な電子状態を形成していることが示唆される結果が得られました。今後、この擬ギャップを利用することにより、飛躍的な性能を持つ熱電材料の開発が期待されます。
受賞理由:
宮崎秀俊助教は、有望な熱電材料の候補であるZrNiSn化合物において、応用的な観点のみならず、機能性発現に関与する電子構造といった基礎的な観点からも研究を行っている。同氏が行った一連の研究は、他の熱電変換材料にも適用可能な方法であり、今後、更なるデータの蓄積により、高精度な熱電変換材料の材料設計が可能になると考えられる。そのため、熱電変換材料の研究を大きく躍進させる第一歩の研究であり、受賞に値する研究成果である。
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