SPring-8を用いて毛髪における植物性オイルの浸透部位をミクロレベルで可視化 ~毛髪の標的部位に働く成分を高精度に探索できる基盤技術を確立~ (プレスリリース)
- 公開日
- 2014年05月02日
- BL43IR(赤外物性)
2014年5月2日
株式会社ミルボン
株式会社ミルボン(代表取締役社長・佐藤龍二)中央研究所は、大型放射光施設SPring-8※1を用いて、植物性オイルが毛髪のどの部位まで浸透するのかをミクロレベルで可視化することに成功しました。これにより、毛髪の標的部位(ダメージ部位)に働く成分を高精度に探索できる基盤技術を確立しました。この技術を用い、月見草オイル※2とホホバオイル※3の2種類の植物性オイルがそれぞれ毛髪の外部と内部に特異的に保持されているという異なる性質を確認しました。 国内学会発表: |
研究の背景
美しい毛髪を保つことを目的とした様々な研究が行われています。その美しさを保つ効果成分の一つとして、ダメージによって乾燥した毛髪に対してエモリエント効果※4を有する植物性オイルが多く使われてきました。これまで植物性オイルの毛髪への浸透挙動は、蛍光色素などを用いて観察される例がありました。この従来法は操作が煩雑で分析時間が多くかかるといったデメリットがありました。しかし、SPring-8の高輝度な光を用いることで、短時間、高精度、且つ直接的に植物オイルの構造そのものを捉えることができると考え、実験に着手しました。
研究の成果
ヘアカラーなどのダメージを受けた毛髪に対して、数十種類の植物性オイルを処理し、美容技術者の官能検査で特に手触りの評価が高かった月見草オイルとホホバオイルに絞り、以下の実験を行いました。
実験は、それぞれのオイルで処理した毛髪を断片化し、SPring-8の赤外物性ビームラインBL43IRの赤外顕微分光装置※5を用いて測定しました。これら植物性オイルの持つ複数の構造部位を確認することにより(図は一部抜粋)、毛髪における浸透状態をミクロレベルで直接測定できる技術を確立しました。
本実験は、公益財団法人高輝度光科学研究センターの産業利用一般課題2012B1385で行われた成果である。
《参考図》
月見草オイルは毛髪表面付近に保持され、ホホバオイルは毛髪表面のみならず内部付近にも保持される
《用語解説》
[1] 大型放射光施設SPring-8
播磨科学公園都市(兵庫県)にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設(同クラスのものはアメリカとヨーロッパ、世界で3台しかない)。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)に由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いてナノテクノロジー・バイオテクノロジーなど幅広い研究が行われている。
[2] 月見草オイル
月見草は北米原産のアカバナ科に属する多年草で、その種子から得た油は、古くはネイティブアメリカンが皮膚の疾患部に塗ったり、飲んで咳を鎮めたりすることに使われていた。
[3] ホホバオイル
ホホバは米国カルフォルニア地方~メキシコ北西部の乾燥地帯に自生しているシモンジア科の常緑低木で、その種子から得た油は、酸化されにくく、耐温度性に優れている。
[4] エモリエント効果
毛髪の水分蒸散を抑えてうるおいを保ち、柔軟性を与える効果のこと。これによってダメージなどにより引き起こされる乾燥を抑えることができる。主に油溶性の成分にこの効果を持つものが多い。
[5] 赤外顕微分光装置
赤外分光光度計と顕微鏡を合わせた装置。ビーム輝度が高いSPring-8の赤外放射光を使えば、毛髪横断面の成分分布の詳細データを得ることができる。
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