多糖キチンを細胞表層で分解する細菌由来マルチモジュラー型キチナーゼの立体構造を解明(プレスリリース)
- 公開日
- 2016年12月02日
- BL26B2(理研 構造ゲノムII)
- BL38B1(構造生物学III)
平成28年12月1日
福井県立大学
福井県立大学生物資源学部伊藤貴文准教授、木元久教授らの研究グループは、カニの殻などに含まれる難消化性の多糖類であるキチンを強力に分解する酵素の立体構造を解明し、細菌がどのように効率よく分解しているのかを明らかにしました。 原論文情報 |
本研究の内容と成果
今回、宇宙航空研究開発機構、コンフォーカルサイエンス、および丸和栄養食品と共同研究により、国際宇宙ステーション内「きぼう」での実験を通じて、細菌が持つキチン分解酵素ChiWの立体構造をSPring-8 BL38B1とBL26B2ならびにKEK-PF BL17Aを用いて解明し、細菌がどのように効率よく難消化性のキチンを分解しているのかについて明らかにしました。
福井県ではカニが大量に消費され、そこで生じるキチンは豊富な資源となっています。キチンとはN-アセチルグルコサミンのポリマーであり、カニや昆虫の外骨格を構成しています。このキチンあるいはその分解物には、食品、医療、環境、農業および工業などの多岐にわたる分野で有用性が認められていますが、その難分解性のため、まだまだ有効には利用されていません。そこで、畑に住む細菌 (Paenibacillus sp. str. FPU-7) から強力なキチン分解酵素ChiWを見出し、キチンから機能性オリゴ糖を大量に生産することを目指して、酵素ChiW のX 線結晶構造解析とその立体構造に基づく機能改変研究を始めました。
酵素ChiWを利用して生産されるキチンオリゴ糖には、ヒトの免疫増強効果や変形性関節症改善効果、美肌効果などが期待できます。また、このオリゴ糖は、農作物の生体防御機能を活性化し、生長促進効果をも有するため、化学農薬および化学肥料の使用を削減し、作物の収穫量も向上させることも可能です。さらに、酵素ChiW の研究成果は、未利用資源となっている他の難分解性高分子多糖にも応用でき、これらを効率よく分解する方法の確立にも期待されます。
論文著者(研究グループ)について
〔論文責任著者〕
福井県立大学 生物資源学部教授 木元久
福井県立大学 生物資源学部准教授 伊藤貴文
〔共同研究者〕
福井県立大学 生物資源学部教授 日竎隆雄
福井県立大学 生物資源学部研究員 (研究当時) 鈴木史子
福井県立大学大学院 生物資源学研究科大学院生 (研究当時) 杉本郁美
福井県立大学大学院 生物資源学研究科大学院生 (研究当時) 藤原章洋
株式会社丸和栄養食品 代表取締役 伊中浩治
株式会社コンフォーカルサイエンス 代表取締役 田仲広明
宇宙航空研究開発機構 主任開発研究員太田和敬
福井大学医学部教授 藤井豊
福井工業大学工学部教授 (研究当時) 武藤明
問合せ先 (SPring-8 / SACLAに関すること) |
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