前期白亜紀の鳥類として、最も原始的な新属新種の鳥類化石を発見!(プレスリリース)
- 公開日
- 2019年11月15日
- BL20B2(医学・イメージングI)
2019年11月15日
福井県立大学
福井県立恐竜博物館が実施する第四次北谷恐竜化石発掘調査において、国内最古となる関連した(=骨格が関節していないがまとまった状態の)鳥類骨格化石が発見された(平成27年1月6日発表)。福井県立大学恐竜学研究所と福井県立恐竜博物館及び中国科学院古脊椎動物古人類学研究所の共同研究の結果、この化石が前期白亜紀の鳥類としては最も原始的な新属新種の鳥類であることが判明した。2019年11月15日にNature Publishing Group社発行の国際学術雑誌Communications Biologyに論文が掲載された。なお、本研究は平成28、29年度の福井県立大学地域貢献研究費(代表、東 洋一)を使用して遂行された。 掲載雑誌 |
学名
フクイプテリクス・プリマ(Fukuipteryx prima)原始的な福井の翼の意。
pteryx = 翼、prima = 原始的な
古生物学的意義
鳥類は、後期ジュラ紀(約1億5000万年前)にアーケオプテリクス(始祖鳥)が出現した後に多様化し、前期白亜紀(約1億4500~1億年前)の地層からは60以上の種が知られている。しかし、これら前期白亜紀の鳥類種は、9割以上が中国東北部から発見されているものであり、当時の地球全体における鳥類の進化や生態に関する理解は限定的だった。
勝山市産鳥類骨格化石は、発見当初から中国東北部以外の地域から産出した非常に保存状態の良い資料として、前期白亜紀鳥類の進化や生態に対する新知見が注目されていた。今回、大型放射光施設SPring-8の医学・イメージングIビームライン(BL20B2)における高エネルギーX線µCT解析など研究の結果、勝山市産鳥類骨格化石には、他の化石鳥類に見られない、上腕骨近位端の凹みや、神経棘の名残が見られる特徴的な尾端骨(癒合し、短く棒状になった尾)などが存在し、新属新種としてフクイプテリクス・プリマの学名と命名された。またフクイプテリクスには、現生鳥類と同じく尾端骨を備える一方、四肢には鳥類の祖先である羽毛恐竜と共通する点が数多く見られるなど、鳥類としては極めて原始的な形態が見られた。さらに、骨組織の研究により、発見された化石は一歳未満で、成熟しつつある若い個体だと判明した。
フクイプテリクスと他の化石鳥類の系統関係を検討したところ、フクイプテリクスが前期白亜紀の鳥類としては最も原始的であることが明らかになった。本研究によって、中国東北部以外の地域に、未知の非常に原始的な鳥類のグループが存在していたことが明らかになった。このような鳥類の進化や生態はこれまで中国産化石のみに基づいて議論されてきたが、日本産の新種の化石鳥類がこの議論に一石を投じられた点は非常に意義が大きい。さらに、フクイプテリクスが河川性堆積物である北谷層から発見されたことは、前期白亜紀の河川域にも非常に原始的な鳥類が生息していたことを示しており、当時、鳥類がすでに幅広い環境に適応できていたという証拠である。
今回の研究により、福井県勝山市には極めて原始的な鳥類が生息していたことが明らかになった。さらに、北谷恐竜発掘現場からは鳥類の足跡や卵殻の化石も発見されている。今後とも発掘を継続し、新たな化石を発見することで、原始的な鳥類の生態や進化を福井県から世界へ発信していくことが強く期待できる。
図1.フクイプテリクスの骨格産状とその模式図。
図2.フクイプテリクスと他の化石鳥類の系統関係。
フクイプテリクスが前期白亜紀の鳥類では最も原始的なことがわかる。フクイプテリクス生体復元図制作:吉田雅則(神戸芸術工科大学)。鳥類シルエット:Wang et al. (2018)を改変。
図3.フクイプテリクスの3D骨格図と生体復元図。
各図の正方体の一辺は1cm。フクイプテリクス生体復元図制作:吉田雅則(神戸芸術工科大学)。
問い合わせ先 (SPring-8 / SACLAに関すること) |
- 現在の記事
- 前期白亜紀の鳥類として、最も原始的な新属新種の鳥類化石を発見!(プレスリリース)