次世代マグネシウム電池に適用可能なナノ空間を利用した電極材料の開発に成功(プレスリリース)
- 公開日
- 2020年01月29日
- BL01B1(XAFS)
- BL04B2(高エネルギーX線回折)
- BL14B2(産業利用II)
2020年1月29日
立命館大学
国立大学法人東京農工大学
立命館大学生命科学部の折笠有基准教授、国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院の直井勝彦教授、岩間悦郎准教授らの研究グループは、ポールサバティエ大学(フランス)、国立大学法人京都大学、高輝度光科学研究センターと共同で、次世代蓄電池として期待されるマグネシウム二次電池用電極材料を新たに見いだしました。グループらで新たに開発した材料は、コバルト等の高価な元素を含まず、ナノ空間を活用した原理により、マグネシウムイオンの動きを促進させることに成功しました。低コストで大きなエネルギーを蓄えることが可能な、リチウムイオン電池を超える次世代の二次電池材料として活用されることが期待されます。 論文情報 |
背景
現在、社会に広く普及している二次電池であるリチウムイオン電池は、スマートフォンやタブレット端末で広く利用されており、世界規模の環境問題解決に貢献可能な電気自動車やスマートグリッドへの活用が強く期待されることから、2019年のノーベル化学賞にも選出されております。次世代の二次電池では、高い安全性と低コスト、蓄えるエネルギーの拡大をすべて満たすことが切望されています。動かすイオンとしてマグネシウムイオンを用いたマグネシウム二次電池は、理論的には高い性能と安全性を有しているものの、材料中でのイオンの動きが遅く、実用的な運転条件を満たすことが困難でした。
研究成果
研究グループでは、カーボンと複合化させたナノ材料を合成して、材料中に歪みを導入させたユニークな電極構造を設計しました。この材料を用いると、室温付近でも数時間での充電、放電がマグネシウム二次電池でも可能となり、我々の日常生活で使用可能なレベルであることを実証しました。SPring-8での高エネルギーX線を用いた解析により、新たに開発した材料の構造は、結晶体とアモルファス体の中間状態のような構造であり、従来の欠点であった固体内の遅いマグネシウムイオンの拡散を促進させる効果を見いだしました。
今後への期待
本研究では、ナノ空間を用いた材料設計が従来技術では克服が困難な遅いイオンの動作を促進させる効果を実証しました。この設計指針を用いて、材料の高性能化を進めるとともに、社会実装へ向けたマグネシウム二次電池の製品化を目指すことになります。
【問い合わせ先】 <取材についてのお問い合わせ先> (SPring-8 / SACLAに関すること) |
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