新型コロナウイルス感染症関連研究のSPring-8における支援(プレスリリース)
- 公開日
- 2020年04月07日
- BL32XU(理研 ターゲットタンパク)
- BL44XU(生体超分子複合体構造解析)
- BL45XU(構造生物学 III)
2020年4月7日
公益財団法人 高輝度光科学研究センター(JASRI)
新型コロナウイルス感染症は、現在世界中で感染が拡大しており、その分析と克服が喫緊の課題となっています。世界中でこのウイルスの研究が進められている状況を踏まえて感染症の克服を迅速に進めるため、大型放射光施設SPring-8※1のタンパク質結晶解析ビームラインを利用した創薬関連研究を支援いたします。感染拡大防止のため、利用運転を中止している期間であっても本関連課題については速やかに実施できるようにいたします。 |
実施内容
SPring-8での実験は、原則として定期的に行われる課題募集への申請とその審査を経て行われますが、本支援においては、直ちに実験が可能な制度である「緊急課題」での対応を行います。これは公共的かつ緊急性を有する極めて重要な研究を対象とした成果非専有(成果の公開が必須な課題で主に学術利用:ビーム使用料免除)の利用研究課題で、定期的な募集の締切によらず常時募集しており、申請された課題は順次迅速に審査されます。
一方、成果専有課題(成果を秘匿できる課題で主に産業利用:ビーム使用料負担あり)の実験については、従来の成果専有時期指定課題で対応します。
実験内容と試料
抗ウイルス薬の探索と分子設計※2に関する研究を支援するため、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)およびそれに関連するウイルス等を由来とするタンパク質あるいは核酸と、それに関連する薬剤候補物質に関する結晶解析が対象となります。安全審査は従来と同一基準で行うため、バイオセーフティレベル1※3の試料が対象となります。
なお、来所実験を停止しておりますので、試料をSPring-8に送っていただいた上での、自動測定ないし遠隔測定が基本となります。特に、自動測定では、誰でも簡単に構造解析に必要な高品質データを収集する「ZOOシステム(https://www.riken.jp/press/2019/20190207_1/)」を利用できます。詳細はお問い合わせください。
まとめ
・SPring-8では、新型コロナウイルス研究を支援するため、関連する研究課題を緊急課題(成果非専有)または時期指定課題(成果専有)として受け付けます。
・安全性を含む課題内容の審査は従来と同様に実施します。
【用語解説】
(※1) 大型放射光施設SPring-8
兵庫県播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す、理化学研究所の大型放射光施設。その利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8の由来はSuper Photon ring-8 GeVに由来する。
(※2) 抗ウイルス薬の探索と分子設計
抗ウイルス薬は一般的に、ウイルスの感染に必要な働き(細胞への侵入・増殖・放出)のいずれかを阻止するものです。それぞれの働きの主役はウイルスを構成するタンパク質や核酸です。したがって、その働きを抑える化学物質(薬剤候補物質)を探索し設計することが創薬研究の目的となります。この研究開発の一環として、タンパク質や核酸と化学物質を結晶化したものをSPring-8で測定して分子の立体構造を決定し、薬剤設計に役立てます。
(※3) バイオセーフティレベル
細菌・ウイルスなどの微生物・病原体等を取り扱う実験室・施設の格付け。世界保健機関 (WHO)が制定した実験室生物安全指針に基づき、各国で病原体の危険性に応じて4段階のリスクグループが定められており、バイオセーフティレベルもそれに対応します。日本では国立感染症研究所が、同所の安全管理規定において日本国独自のリストを作成しています。
【問い合わせ先】 生体超分子複合体構造解析ビームライン(BL44XU)に関すること (SPring-8 / SACLAに関すること) |
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