BL28B2における高エネルギーX線CTの測定代行の開始について(プレスリリース)
- 公開日
- 2022年11月28日
- BL28B2(白色X線回折)
2022年11月28日
高輝度光科学研究センター
理化学研究所
大型放射光施設SPring-8※1では、ビームラインスタッフが利用者に代わってSPring-8 BL28B2に設置された自動X線CT計測装置を利用して高エネルギーX線CT計測を行う測定代行を開始します。測定代行は、成果専有時期指定課題※2の一形態として取り扱われ、いつでも利用申請が可能です(利用料金の算出方法は後述)。本測定代行は、2022年11月28日から募集を開始し、2023年2月から測定を実施します。 SPring-8では原則として、利用者が当該ビームラインまで赴き、自らが装置を操作しデータを取得する必要があります。しかし、測定代行では、利用者は事前打ち合わせの上、測定試料をSPring-8へ送付することで、専門スタッフのオペレーションを通じて測定データ(本測定代行においては試料のX線CT像)を得ることが可能となります。 |
1.装置について
BL28B2では星野らにより高エネルギーX線を利用したCT計測手法が開発されてきました[1, 2]。この手法では中心エネルギー200 keVという高いエネルギーのX線を照射し、高精細型のX線画像検出器を用いて画像取得することで、「従来の放射光X線CTにはない高い透過性」・「ラボ用装置では実現できない高いコントラスト画像」・「広い視野幅かつ高い空間分解能」を実現しています(図1)。
今回、放射光施設の利用経験がない方々でも、本手法が簡便に利用できるように「自動X線CT計測装置」の開発を行ないました(概略図を図2に示す)。この装置は、試料の自動交換・指定範囲のCT計測・画像再構成の機能を有し、その工程をほぼ自動で進めることができます。測定代行の利用者は試料を送付するだけで、一定期間ののちに試料返却およびそのCT画像が得られます。
一度に撮影できる視野は最大で幅48 mm、高さ1.2 mm程度です。高さ方向に試料をシフトさせ撮影を繰り返し行うことで、必要な範囲を撮影できます。幅48 mm、高さ10 mm分は、およそ1時間で撮影することができます。
手に取れるサイズの電子デバイスや岩石などの比較的大きな試料を超高精細3Dデータ化ができるという点で、様々な分野において高エネルギーX線CT装置の有用性が期待されます。
なお、本装置は一般課題での利用も可能です。そちらを希望される場合は、担当者との事前相談の上、課題申請を行ってください。
図1.高エネルギーX線CT測定事例。
図2.自動X線CT計測装置の概略図。
2.「高エネルギーX線CT計測」における測定試料
(1)試料形態
利用者には試料を専用のホルダーに固定した状態で送付して頂きます。輸送時に脱落しないような工夫が必要です。試料の種類は特に定めませんが、200 keVのX線が十分透過する必要があります。鉄では直径20 mm以下であることが目安です。
ただし、国または県の規制等により取扱いができない試料もございますので、「3.申込方法」に記載のウェブサイトをご覧ください。
(2)試料準備
測定試料の準備は専用の試料ホルダーをSPring-8から借り受け、利用者自身が行う必要があります。手順や方法は事前相談時にスタッフが説明を行います。
(3)測定試料環境
大気中室温環境下での測定のみを対象とします。
3.申込方法
下記サイトの測定代行の申込概要を熟読の上、同ページにリンクのある相談フォームよりお申し込みください。
https://user.spring8.or.jp/?p=42152
4.利用料金
測定代行は「成果専有時期指定課題」の一形態として取り扱いますので、測定代行に掛かるビーム使用料及び消耗品実費負担については、「成果専有時期指定課題」に準じた金額となります。測定条件・試料数・測定点数について、ビームラインスタッフとの打合せを行い、必要なビームタイムおよび利用料金を決定します(単価は下記(1)及び(2)のように定められ、その合計が利用料金となります)。
(1)ビーム使用料
成果専有時期指定料金相当:9万円/1時間。
(2)消耗品実施負担相当額
定額分(1340円/1時間)と従量分(測定代行中に実際に使用した消耗品費等の金額)の合計額。
ただし、「高エネルギーX線CT計測」においては当面は従量分を0円とします。
《用語解説》
※1大型放射光施設SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その利用者選定等はJASRIが行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。
※2成果専有時期指定課題
SPring-8の利用には、成果専有利用と成果非専有利用の2つの利用形態がある。成果専有利用は、成果公開の義務がない利用形態である。審査も簡略化されるが、成果公開の義務がない代わりに、利用時間に応じたビーム使用料が課せられる。
成果専有時期指定課題とは、成果専有利用課題のうち、ビームラインの運営状況を勘案しつつ可能な限り迅速に実施される課題である。
[1] M. Hoshino, K. Uesugi, R. Shikaku and N. Yagi, AIP Advances 7 (2017) 105122.
[2] M. Hoshino, K. Uesugi and N. Yagi, J. Synchrotron Rad. 27 (2020) 934.
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