大型放射光施設 SPring-8

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シンクロトロン放射光を利用したX線μCTスキャンを活用し、国産の恐竜化石で初めて骨化石組織の非破壊可視化に成功しました(プレスリリース)

公開日
2023年04月07日
  • BL28B2(白色X線回折)

2023年4月7日
福井県立大学
高輝度光科学研究センター

 このたび、恐竜学研究所は、高輝度光科学研究センターの協力のもと、SPring-8(注1)のBL28B2におけるシンクロトロン放射光(注2)を利用した高エネルギーX線μCTスキャンを活用し、福井県産の獣脚類骨化石(図1A)に残された骨組織を、非破壊で可視化することに成功しました(図1C, E, G,)。国産の恐竜化石にこの手法が利用されることは初めてです。
 恐竜骨組織の観察は、恐竜の死亡時年齢や、成長速度、代謝などの手がかりとなり、近年の恐竜研究で幅広く活用されています。従来手法では、化石を物理的に切断し、偏光顕微鏡による薄片画像観察を行いますが(図1B, D, F,)、化石の部分的な破壊を伴う手法であることから、貴重な標本への利用は困難でした。本手法により、化石の破壊を伴わない恐竜骨組織の観察が国内で可能となります。この手法は特に、化石の産出数が乏しく個々の標本が厳重に保護された、国内外の恐竜化石研究を行う際に有効です。
 本研究の成果は、4月7日付の国際学術誌”Journal of Synchrotron Radiation”に掲載されました。

【論文情報】
タイトル(英):High-energy synchrotron radiation-based X-ray micro- tomography enables non-destructive and micro-scale palaeohistological assessment of macro-scale fossil dinosaur bones
タイトル(日):高輝度シンクロトロンX線μCTによる、非破壊・マイクロスケールの古組織学的な化石恐竜骨研究
掲載紙:Journal of Synchrotron Radiation(英文紙、John Wiley & Sons, Inc.)
DOI:10.1107/S1600577523001790

図1

図1.研究に用いられた福井県産獣脚類大腿骨化石(A)、従来手法による薄片画像(B, D, F)、本研究によるCT画像(C, E, G).黒矢印:死亡時の年齢を示唆する成長線.白矢印:骨の成長時に見られる血管孔.スケールバーはそれぞれ、20mm(A)、1mm(B~G).B-C、D-E、F-Gの薄片画像とCT画像はそれぞれ対応する. CT画像でも、従来手法の薄片画像と同様の組織構造が可視化されている点に留意.


【用語解説】

注1 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その利用者選定等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来する。

注2 シンクロトロン放射光は、シンクロトロンと呼ばれる円形粒子加速器内で電子を光とほぼ同じ速度まで加速し、磁石によってその電子の進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波である。SPring-8では、この放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。



 

【問い合わせ先】
福井県立大学 恐竜学研究所
助教 今井 拓哉
 TEL 0776-61-6000(代表)(内線6212)
 E-mail t_imaiatfpu.ac.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課 
 TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
 E-mail:kouhou@spring8.or.jp

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