日 時 : 2005年2月24日 13:30-15:00
講演者 : 川原田 洋 教授 所 属 : 早稲田大学理工学部
講演要旨 ダイヤモンドは一般的に絶縁体として知られるが、III族原子のボロンが結晶中に存在すると、p型半導体となる。これは、天然ダイヤモンドにおいて1960 年代から確認されている。アクセプターとしてのボロンは、価電子帯端より上方0.37 eVにアクセプター準位を形成する。したがって、キャリア密度の温度依存性が高く、室温での比抵抗は高かった。その後、気相合成法の進展でボロン濃度が制御され、系統的な研究が進展し、正孔移動度はキャリア濃度1015 cm-3程度で1500cm2/V-s、結晶性の極めて高い試料で1013 cm-3で3800cm2/V-sという結果もある。また、ボロンの濃度を(1019cm-3以上に)上昇させると抵抗の温度依存性は弱まり、縮退半導体の電気伝導を示す。この場合、室温でも10-3Ωcm程度の低抵抗化が可能である。また、ダイヤモンド表面を水素終端した場合、ドーピングをしていない試料でも、大気中では表面近傍に1019-20cm-3の正孔が誘起する現象がある。 ダイヤモンド超伝導は2004年4月に報告され、1021cm-3以上のボロン濃度(または正孔濃度)の高圧合成ダイヤモンドで観測され、当初のTC(オフセット、ゼロ抵抗温度)は2.3Kであった。その後、TCは気相合成でボロン濃度を上昇させることで、上昇した。多結晶ダイヤモンド(ボロン濃度3x1021cm-3)で4.2Kとなり、現在は、(111)ホモエピタキシャル成長層(8.4 x 1021 cm-3、4.7 at%)で、7.4Kになった。興味深いことに、ほぼ同一のボロン濃度でも(111)成長層と(100)成長層では、Tcで2倍程度、前者が高いことが再現性よく観察される。この場合、(111)成長層でキャリア濃度が、1.3x1022cm-3とボロン濃度を越えている。高濃度ボロン導入、特にB-B対による結晶歪が価電子帯の状態密度に影響をそうである。現在、超伝導機構解明やTCのさらなる上昇のため、結晶成長でのボロンの導入機構等を検討している。さらに、本セミナーでは高濃度ボロン含有ダイヤモンドの物性を調査する上での放射光利用を議論したい。
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