日 時 : 2006年2月9日 16:00-
講演者 : 岩村康弘 主席研究員 所 属 : 三菱重工業株式会社 先進技術研究センター
講演要旨 我々はCaOとPdの混合層を有するPd多層膜に重水素を透過させた場合のPd多層膜表面での元素変化について研究を行っている。CsをPd多層膜に添加した試料を真空容器内に設置し、Csを添加した面に重水素ガス、その反対の面を真空状態にすると、重水素ガスがPd多層膜表面で解離し、Pd多層膜中を重水素が透過していく。この際、真空容器内に取り付けたXPSでPd多層膜の表面を経時的に観測すると、重水素の透過と共にCsが減少し、代わりにPrが出現してくる。Pdは25mmX25mmX0.1mmのサイズで、温度は70℃程度、重水素ガスの圧力は1気圧である。重水素ガスの代わりに軽水素ガスを用いた場合や、Pd膜のCaOとPdの混合層が無い場合には、Csの減少・Prの出現が共に観測されない。この変換現象はCsに限ったものではなく、SrやBaを添加した際にも観測されている。また、深さ方向分布計測の結果から、変換現象は表面から10nm程度の非常に薄い領域でおきている可能性が高い。この現象をさらに検証・確証するため、SPring-8のBL37XUラインに透過実験装置を持ち込み、XRFによって現象を観測している。現在までの所、透過前に存在しなかったPrが重水素透過後に検出されている。また、SPring-8での実験によって生成物Prは均一に存在しているのではなく、空間分布があることや、従来検出されていなかったPr以外にLaあるいはBaと考えられるピークの存在などが明らかになってきている。現在、表面組織と生成物の分布に相関があるかどうかについて検討を行っており、今後生成物の時間変化や空間分布についてさらに検討していく予定である。
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