概要 |
Speaker : 白井 正文
Language : 日本語
Affiliate : 東北大学 電気通信研究所
Title : 第一原理計算による垂直磁化材料の理論設計
Abstract :
強い結晶磁気異方性をもつ垂直磁化材料は高密度磁気記録媒体や不揮発性スピンメモリへの応用により注目されている。記録ビットやメモリセルの微細化に伴う磁化方向の熱ゆらぎ耐性を確保するためには,さらに高い結晶磁気異方性エネルギーを有する材料を用いることが不可欠である。
最近,希土類元素や貴金属元素を含まないL10型FeNi規則合金の薄膜が単原子交互積層法を用いて作製された[1-3]。そこでL10型FeNiで観測された垂直結晶磁気異方性の物理的起源を解明するために,第一原理密度汎関数計算に基づいてL10型FeNiの結晶磁気異方性エネルギーを理論的に評価した。さらにL10型FeNiより高い結晶磁気異方性エネルギーを示す短周期Fe/Ni (001) 多層膜を探索した。特に,これら材料の結晶磁気異方性エネルギーの面内格子定数に対する依存性に注目した。その結果,L10型FeNiの垂直磁気異方性エネルギーは主としてFe原子に起因しており,その値は面内格子定数の減少に伴って増加することを見出した。平衡格子定数では,Fe(2ML)/Ni(2ML)の結晶磁気異方性は弱いのに対して,Fe(3ML)/Ni(3ML)多層膜は強い面内磁気異方性を示す。これら多層膜の結晶磁気異方性は面内格子定数に対して顕著な依存性を示し,面内引張り歪みの下で垂直磁化材料となる。
ホイスラー合金は,高スピン偏極率や低磁気ダンピングといった優れた性質をもつため,磁気トンネル接合の電極材料に適した材料である。最近,ホイスラー合金Co2FeAl (CFA)薄膜がCFA/MgO接合において垂直磁化を示すことが見出された[4]。そこで,CFA/MgO接合の界面構造(Co終端またはFeAl終端)と結晶磁気異方性の関連性を解明するために,結晶磁気異方性エネルギーを理論的に評価した。その結果,Co終端CFA/MgO接合は垂直磁気異方性を,FeAl終端界面は面内磁気異方性を示した。両終端界面の形成エネルギーを比較すると,FeAl終端の方がエネルギー的に安定であるので,CFA/MgO接合で実験的に観測されている垂直磁気異方性の起源をCo終端界面に帰することはできない。ひとつの解釈として,CFA/MgO界面に過剰なFeを含む層が形成されていることが考えられる。実際,単原子Fe層をCFA/MgO界面に挿入することにより,強い垂直結晶磁気異方性が得られることが確かめられている。
謝 辞
本研究の一部は,JSPS/MEXT科学研究費補助金(No. 22246087, No. 22360014),JSPS/CSTP最先端研究開発支援プログラム,ならびにJST産学共創基礎基盤プログラムの下で実施された。
参考文献
[1] T. Shima, M. Okamura, S. Mitani, and K. Takanashi, J. Magn. Magn. Mater. 310, 2213 (2007).
[2] M. Mizuguchi, S. Sekiya, and K. Takanashi, J. Appl. Phys. 107, 09A716 (2010).
[3] T. Kojima, et al., Jpn. J. Appl. Phys. 51, 010204 (2012).
[4] Z. Wen, H. Sukegawa, S. Mitani, and K. Inomata, Appl. Phys. Lett. 98, 242507 (2011).
担当者 : 小嗣 真人
Mail:kotsugi@spring8.or.jp
PHS:3488
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