大型放射光施設 SPring-8

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放射光X線イメージング

上杉健太朗 (JASRI / SPring-8)

 一般的にX線イメージングあるいはX線画像計測法としてもっとも馴染みのある例は、胸部レントゲン写真であろう。この写真は肺の部分が黒く、胸骨や心臓に当たる部分が白く表示されているのが一般的のようである。これはX線が物体により吸収されている程度を示しており、多く吸収されているところが白く、あまり吸収していないところが黒くなっている。テレビドラマなどで「ここに白い影が・・・」などと言って医師役が指し示すのは、本来黒いはずの肺の部分である。医師はその白い影の濃さや形状(そしてもちろんその他の検査結果も加味して)から診断を下す。
 もしその「白い影」がとても鮮明に、しかも立体で映し出されたらどうなるだろうか?その影が体のどこに存在し・どんな材料で構成され・どのような形状をしているか、より正確に判断できるようになると考えられる。それを実現するひとつの方法は多数の方向からX線像を撮影し、立体的に状況を把握するためのデータを取得することである。さらにそのデータを使って演算することで完全な3次元構造を得ることが可能になる。これがComputed tomography (CT)法である。ただしこの場合の構造は、「X線がどのくらい吸収されたか」を示すCT値(診断用CT装置の場合はHounsfield Unit, HU)あるいは線吸収係数の分布として得られる。
 ボーリングコアを医療用CT装置を利用して画像化することもあるが、一般的な材料科学においては、医療用CT装置は空間分解能の面で不十分である。高い空間分解能で撮影するために、マイクロフォーカス線源を利用したCT装置も市販されているが、ルーチンで達成可能な空間分解能は数ミクロン程度の場合が多い。また、ターゲットから発生する白色X線を用いているため、CT値の定量性が不十分な場合が多い。
 放射光X線はその特性から、測定対象に撮影条件を最適化し、1ミクロンあるいはそれ以上の高い空間分解能とCT値の定量性を実現する事が出来る。また、過干渉性の高さを利用して一般的な光源では難しい位相計測も容易に行える。
 講演ではCT法の原理を簡単に示し、放射光X線の特徴やそれを用いた測定例を示す。