大型放射光施設 SPring-8

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SPring-8 Seminar (第248回)

副題/演題 Bi・Pbを含むペロブスカイト酸化物の特異な物性とその起源
開催期間 2016年03月07日 (月) 13時00分から14時30分まで
開催場所 SACLA実験研究棟大会議室
主催 (公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)
形式 レクチャー(講演)
概要

Speaker : 東 正樹

Language : 日本語

Affiliation : 東京工業大学応用セラミックス研究所

Title : Bi・Pbを含むペロブスカイト酸化物の特異な物性とその起源

Abstract:
ビスマス・鉛は、BiFeO3やPbTiO3に見られるように極性の結晶構造を安定化する他、しばしばバレンススキッパーと称されるように、6s2, 6s0の電子配置に応じてBi3+とBi5+、Pb2+とPb4+の電荷の自由度を持つ。こうした性質がペロブスカイト酸化物にもたらす特異な物性のうち、1.Co置換BiFeO3におけるスピン構造転移と室温強磁性、2.Bi・Pbペロブスカイトの系統的な電荷分布変化、を紹介する。

1.強誘電体BiFeO3は、最近接反平行、次近接平行のG型反強磁性の次近接方向にサイクロイド変調が重畳したスピン構造のため、自発磁化は持たない。我々はFeを10%程度Coで置換するとコリニア構造へのスピン構造転移が起こることを見いだした。この際DM相互作用による弱強磁性が室温で観測される。薄膜試料を用いた、電場印加による磁化反転への取り組みを紹介する。

2.Bi, Pbの6s軌道は遷移金属のd軌道、酸素2p軌道と準位が近いため、BiMO3, PbMO3(M:3d遷移金属)は周期表に沿った電荷分布の変化を示す。BiCrO3からBiCoO3まではBi3+M3+O3だが、BiNiO3はBi3+0.5Bi5+0.5Ni2+O3という特徴的な価数状態を持つ。加圧すると約4GPaでBi5+とNi2+の間で電荷移動が起こり、Bi3+Ni3+O3へと転移する。BiNiO3は常圧下では500Kで分解してしまうが、Biの一部をLa3+、又はNiの一部をFe3+で置換すると、昇温によって(Bi,La)3+(Ni,Fe)3+O3が出現するようになる。この際、Ni2+→Ni3+の酸化によって、ペロブスカイト構造の骨格を作るNi-O結合が収縮するため、昇温すると体積が減少する、負の熱膨張が観測される[1,2]。PbMO3においてはこうした電荷分布の変化は3回起こる。PbVO3はPbTiO3と同じくPb2+V4+O3の電荷分布を持つのに対し、PbCrO3は50年間信じられてきたPb2+Cr4+O3ではなく、Pb2+0.5Pb4+0.5Cr3+O3であることが最近判明した[3]。Pb2+とPb4+は3 unit cell程度の範囲で岩塩型の秩序を持つ、電荷グラスと呼ぶべき状態にある。PbCoO3はさらに複雑な、Pb2+Pb4+3Co2+2Co3+2O12であると考えている。一方、稲熊らが報告したPbNiO3は、Pb4+Ni2+O3である[4]。すなわち、PbMO3は周期表を左から右へ、dレベルが深くなるに従って、Pb2+M4+O3からPb2+0.5Pb4+0.5M3+O3、Pb2+0.25Pb4+0.75M2.5+O3、そしてPb4+M2+O3へと変化する。

[1] M. Azuma et al., Nat. Commun. 2, (2011) 347.
[2] K. Nabetani et al., Appl. Phys. Lett., 106, (2015) 061912.
[3] R. Yu et al., J. Am. Chem. Soc., 137, (2015) 2719.
[4] Y. Inaguma et al., J. Am. Chem. Soc., 133, (2011) 16920.

担当者 : 水牧 仁一朗
Mail : mizumaki@spring8.or.jp
PHS : 3870

問い合わせ先 JASRI 研究調整部 研究業務課 SPring-8セミナー事務局 津田綾女・三村亜佑美
0791-58-0949
0791-58-0830
spring8_seminar@spring8.or.jp
最終変更日 2016-02-22 17:25