大型放射光施設 SPring-8

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SPring-8 Seminar (第252回)

副題/演題 情報科学的手法のマテリアルシミュレーション解析への応用 -スペクトル分類と複雑イオン拡散経路探査-
開催期間 2016年08月25日 (木) 14時00分から16時00分まで
開催場所 上坪講堂
主催 (公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)
形式 レクチャー(講演)
概要

Speaker : 安藤 康伸

Language : 日本語

Affiliation : 国立研究開発法人産業技術総合研究所

Title : 情報科学的手法のマテリアルシミュレーション解析への応用 -スペクトル分類と複雑イオン拡散経路探査-

Abstract :
 半導体素子やリチウムイオン電池に代表される蓄電デバイスなど、ナノスケールの現象を利用したデバイス開発を推進するためには、デバイス内部における原子レベルでの現象理解が必要不可欠であり、そのために計算機シミュレーションが今日盛んに活用されている。一方で、これらシミュレーションの結果は得てして非常に複雑である。我々は、ナノデバイスシミュレーションが内包するデータの複雑性を情報学的手法によって紐解くことで「デバイス機能」と「構造」の関係性を明らかにすることができると考えた。本講演ではこれまでの我々の取り組みとして、単分子電気伝導シミュレーションのデータに対するクラスター解析と、アモルファス内のイオン拡散経路探索のための、ニューラルネットワークを用いた高速計算手法について発表する。

単分子電気伝導シミュレーションのデータに対するクラスター解析
 我々はランダムに生成した600パターンの架橋分子配置に対して透過係数スペクトルを計算したのち、Ward法を用いてスペクトルデータ自体を分類し、分子配置とスペクトル形状の間の関係性を理解できるか検討した。その結果、得られた分類ごとに架橋分子配置を記述する変数を解析することで、二つの構造に関わる変数で各クラスターが特徴つけられることがわかった。また、この構造的特徴をもとにスペクトル形状を物理的に解析したところ、電極と分子の相互作用や分子軌道に基づく物理的解釈とも一致することがわかり、データ駆動型アプローチがナノデバイスシミュレーション解析にも有用あることを示すことかができた [1]。

アモルファス内のイオン拡散経路探索のための、NNを用いた高速計算手法
 アモルファスは周期的な原子構造を持たないため高次元の構造自由度を有しており、機能と構造に関する解析は非常に困難である。そのため、アモルファスが有する高次元構造自由度をスパース化し、機能と関連付けられる形でモデリングすることがデバイス・及び材料開発の現場では強く望まれている。そこで我々は、アモルファスTa2O5中のCuイオン拡散に注目し、アモルファス中のイオン拡散ネットワークを構築することで拡散機能と構造の関係を明らかにすることを目指している。本発表では、アモルファス中でCuイオンが感じる原子間力ポテンシャルのニューラルネットワーク(NN)を用いたモデリングによる、拡散経路の高速探索手法に関して紹介する [1]。

参考文献
[1] 安藤康伸, Wenwen Li, 藤掛壮, 渡邉聡, “スパースモデリングによるナノデバイスシミュレーション解析”, 電子情報通信学会誌 99, 464 (2016).


 

Speaker :永田 賢二

Language :日本語

Affiliation :国立研究開発法人産業技術総合研究所

Title :ベイズ推論に基づくスペクトル分解

Abstract:
 X線光電子分光法(XPS)などに代表される分光計測において、複雑なピーク構造をもつスペクトルデータに対してガウス関数などの単峰の関数の重ね合わせで回帰することは、スペクトルデータからの情報抽出にとって重要である。この回帰を行うにあたり二つの問題がある。一つは、ピーク位置などのパラメータ最適化のときに生じるローカルミニマの問題で、もう一つは、ピークの個数をデータのみから客観的に決定する方法である。本講演では、ベイズ推論に基づくスペクトル分解の手法を紹介し、上記二つの問題が解決できる仕組みを説明する。

担当者 : 豊木 研太郎
Mail : kentaro.toyoki@spring8.or.jp
PHS : 3123

問い合わせ先 JASRI 研究調整部 研究業務課 SPring-8セミナー事務局 森 真由理
0791-58-0833
0791-58-0830
m.mori@spring8.or.jp
最終変更日 2016-08-17 14:19