2008年夏の学校 実習概要
下記の8件の実習課題を予定しています.受講者の皆さんにはこの中から2テーマを選択していただきます.ただし,特定の実習に希望者が集中した場合,ご希望に添えるとは限りません.ご了承下さい.なお,装置故障等の不測の事態により予定が変更される場合があります.XAFSおよびタンパク質構造解析では各実習テーマに2カ所のビームラインが指定されていますが、実習課題としては単一のものですので、ご注意ください。
実習1.XAFS
BL01B1 谷田肇、加藤和男、宇留賀朋哉(JASRI)
BL14B2 本間徹生(JASRI)
X線吸収分光(XAFS)法は古くから物質に含まれる元素の状態分析の手段として使われてきた。このX線吸収スペクトルには微細構造があり、その詳細な解析から物質の局所的な構造の情報を得ることができる。XAFSの応用の対象はガラスなどの非晶体、半導体表面、ヘモグロビンのような生態物質など多岐にわたる。本講義では放射光によるXAFS測定の実験手法について、解析に必要な基礎知識と具体的な手順について、実例を紹介しながら解説する。
実習2. 粉末X線回折による定性分析
BL19B2 廣沢 一郎(JASRI)
粉末X線回折は、構造解析技術として物質科学研究での重要な技術であるばかりでなく、複数の化合物から成る材料の組成分析技術として産業界(企業)でも広く用いられています。高輝度な放射光を用いた粉末X線回折では、通常は検出が困難な微量成分も短時間で測定できるため、機能性セラミックスの開発や金属腐食物の分析などに盛んに用いられています。今回は、BL19B2の大型デバイシェラーカメラでの測定技術と試料調製の実習を行った後、化合物の同定に取り組んでいただく予定です。
実習3.タンパク質の結晶構造解析
BL41XU 清水伸隆(JASRI)
BL26B2 引間 孝明(理研)
生命体の構築や様々な生命現象の基本となるタンパク質は、それ自身の形(立体構造)によって発現する機能が決定されている。タンパク質の立体構造を明らかにし、その機能を分子・原子レベルで解明することは、生命活動を理解するための必須の事項となっている。X線結晶構造解析は立体構造を原子レベルで明らかに出来る強力な手法であり、放射光による高輝度・波長可変のX線を用いることによってタンパク質の構造を迅速・高精度に決定することができる。本実習では、タンパク質の結晶化からビームラインでの回折データ収集、タンパク質の立体構造の決定までを体験し、酵素タンパク質がどのように基質を認識し機能するかを解析する。
実習4.X線溶液散乱法を用いた蛋白質分子の構造解析
BL45XU 八木直人(JASRI)
X線小角散乱法(SAXS)は数nmから数μmという領域の大きさを持つ粒子について、ダイレクトビームの極近傍に観測される散乱X線の強度分布からその構造を解析する手法である。この手法を蛋白質溶液に適用すること(X線溶液散乱法)により、“生きた状態”に近い蛋白質分子の構造を知ることができる。本実習では蛋白質溶液からの散乱データ収集および分子構造予測にいたる一連の解析を行い、蛋白質分子の構造-機能相関について考察する。
実習5.赤外放射光による微小領域分光
BL43IR 森脇太郎(JASRI)
SPring-8の中で一つだけ、非常に低いエネルギーの光を扱うビームラインが、赤外分光を行うBL43IRである。このビームラインでは、高輝度の赤外放射光を活用して、10ミクロンオーダー(赤外光の回折限界程度)の微小なサンプル、または大きなサンプルの微小な領域を分光測定することを主な目的としている。実習では、微小試料(毛髪を予定)の二次元マッピング測定を行い、試料内の官能基分布を解析する。
実習6.二次元周期構造による回折現象と表面構造解析への応用
BL11XU 高橋正光(原子力機構)
結晶は通常、三次元的な周期構造として扱われる。しかし、現実の結晶は、必ず表面を有するため、そこで周期構造は途切れている。三次元周期構造の破れに由来するX線散乱は「Crystal Truncation Rod(CTR)」散乱とよばれ、表面構造解析に応用されている。本実習では、真空蒸着装置を備えたX線回折計を用いて、半導体表面のCTR散乱を実際に測定し、二次元周期構造による回折現象の性質を理解する。さらに、試料に異種原子層を蒸着することにより、CTR散乱が変化する様子を調べる。
実習7.微小領域高精度X線回折
BL24XU 津坂佳幸(兵庫県立大学)
近年の半導体デバイスの構造は、高機能化、高集積化の要求にともなって、極めて微細かつ複雑になりつつある。一方で、半導体デバイスの特性は、その結晶性に敏感であり、その評価には高精度X線回折が有用である。本実習では、高輝度光源を用いることで初めて可能となる、微小領域の結晶性を高精度で評価する手法の取得を目指す。具体的には、微小領域高精度回折実験のための光学系の形成と、その応用例としてシリコン基板の結晶性評価を行う。
[後援:(財)ひょうご科学技術協会]
実習8.放射光によるマイクロ加工実習
ニュースバル BL-2 内海裕一(兵庫県立大学)
マイクロシステムもしくはマイクロマシンと言われるミクロンレベルの機能部品を製 造する有力な加工方法として放射光を用いたLIGAプロセスが挙げられるが、その基本 技術となるディープX線リソグラフィーの工程を習得する。具体的にはアライメン ト、露光、現像、評価のフローに従って、簡単なマイクロ加工から擬3次元加工を試 みる。さらに、PTFEの放射光による直接微細加工を行い、その機構について考察 する。
実習1.XAFS
BL01B1 谷田肇、加藤和男、宇留賀朋哉(JASRI)
BL14B2 本間徹生(JASRI)
X線吸収分光(XAFS)法は古くから物質に含まれる元素の状態分析の手段として使われてきた。このX線吸収スペクトルには微細構造があり、その詳細な解析から物質の局所的な構造の情報を得ることができる。XAFSの応用の対象はガラスなどの非晶体、半導体表面、ヘモグロビンのような生態物質など多岐にわたる。本講義では放射光によるXAFS測定の実験手法について、解析に必要な基礎知識と具体的な手順について、実例を紹介しながら解説する。
実習2. 粉末X線回折による定性分析
BL19B2 廣沢 一郎(JASRI)
粉末X線回折は、構造解析技術として物質科学研究での重要な技術であるばかりでなく、複数の化合物から成る材料の組成分析技術として産業界(企業)でも広く用いられています。高輝度な放射光を用いた粉末X線回折では、通常は検出が困難な微量成分も短時間で測定できるため、機能性セラミックスの開発や金属腐食物の分析などに盛んに用いられています。今回は、BL19B2の大型デバイシェラーカメラでの測定技術と試料調製の実習を行った後、化合物の同定に取り組んでいただく予定です。
実習3.タンパク質の結晶構造解析
BL41XU 清水伸隆(JASRI)
BL26B2 引間 孝明(理研)
生命体の構築や様々な生命現象の基本となるタンパク質は、それ自身の形(立体構造)によって発現する機能が決定されている。タンパク質の立体構造を明らかにし、その機能を分子・原子レベルで解明することは、生命活動を理解するための必須の事項となっている。X線結晶構造解析は立体構造を原子レベルで明らかに出来る強力な手法であり、放射光による高輝度・波長可変のX線を用いることによってタンパク質の構造を迅速・高精度に決定することができる。本実習では、タンパク質の結晶化からビームラインでの回折データ収集、タンパク質の立体構造の決定までを体験し、酵素タンパク質がどのように基質を認識し機能するかを解析する。
実習4.X線溶液散乱法を用いた蛋白質分子の構造解析
BL45XU 八木直人(JASRI)
X線小角散乱法(SAXS)は数nmから数μmという領域の大きさを持つ粒子について、ダイレクトビームの極近傍に観測される散乱X線の強度分布からその構造を解析する手法である。この手法を蛋白質溶液に適用すること(X線溶液散乱法)により、“生きた状態”に近い蛋白質分子の構造を知ることができる。本実習では蛋白質溶液からの散乱データ収集および分子構造予測にいたる一連の解析を行い、蛋白質分子の構造-機能相関について考察する。
実習5.赤外放射光による微小領域分光
BL43IR 森脇太郎(JASRI)
SPring-8の中で一つだけ、非常に低いエネルギーの光を扱うビームラインが、赤外分光を行うBL43IRである。このビームラインでは、高輝度の赤外放射光を活用して、10ミクロンオーダー(赤外光の回折限界程度)の微小なサンプル、または大きなサンプルの微小な領域を分光測定することを主な目的としている。実習では、微小試料(毛髪を予定)の二次元マッピング測定を行い、試料内の官能基分布を解析する。
実習6.二次元周期構造による回折現象と表面構造解析への応用
BL11XU 高橋正光(原子力機構)
結晶は通常、三次元的な周期構造として扱われる。しかし、現実の結晶は、必ず表面を有するため、そこで周期構造は途切れている。三次元周期構造の破れに由来するX線散乱は「Crystal Truncation Rod(CTR)」散乱とよばれ、表面構造解析に応用されている。本実習では、真空蒸着装置を備えたX線回折計を用いて、半導体表面のCTR散乱を実際に測定し、二次元周期構造による回折現象の性質を理解する。さらに、試料に異種原子層を蒸着することにより、CTR散乱が変化する様子を調べる。
実習7.微小領域高精度X線回折
BL24XU 津坂佳幸(兵庫県立大学)
近年の半導体デバイスの構造は、高機能化、高集積化の要求にともなって、極めて微細かつ複雑になりつつある。一方で、半導体デバイスの特性は、その結晶性に敏感であり、その評価には高精度X線回折が有用である。本実習では、高輝度光源を用いることで初めて可能となる、微小領域の結晶性を高精度で評価する手法の取得を目指す。具体的には、微小領域高精度回折実験のための光学系の形成と、その応用例としてシリコン基板の結晶性評価を行う。
[後援:(財)ひょうご科学技術協会]
実習8.放射光によるマイクロ加工実習
ニュースバル BL-2 内海裕一(兵庫県立大学)
マイクロシステムもしくはマイクロマシンと言われるミクロンレベルの機能部品を製 造する有力な加工方法として放射光を用いたLIGAプロセスが挙げられるが、その基本 技術となるディープX線リソグラフィーの工程を習得する。具体的にはアライメン ト、露光、現像、評価のフローに従って、簡単なマイクロ加工から擬3次元加工を試 みる。さらに、PTFEの放射光による直接微細加工を行い、その機構について考察 する。