大型放射光施設 SPring-8

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2008年夏の学校 講義概要

基礎講座

基礎講座1.光源加速器 高雄 勝(JASRI)
放射光とは加速された電子から放出される電磁波のことである。電子は、エネ ルギーが高くなればなるほど短い波長の放射光を発生することができるが、 SPring-8ではその波長域はX線領域に達している。現在のところ、高エネルギ ー電子を貯め込み安定に放射光を発生させる電子蓄積リングは、強力なX線源 として利用できる唯一のものである。本講義では、SPring-8を例に挙げながら 蓄積リングの原理について解説する。

基礎講座2.放射光の発生 原 徹(理化学研究所)
放射光とは、電子などの荷電粒子が曲がる時に放出される電磁場で、SPring-8のような高エネルギー蓄積リングの電子からはX線領域の光を発生させることができる。蓄積リングを構成する装置の中で放射光が発生する部分を光源と呼び、光源には電子を円形に回すために曲げる偏向電磁石と、直線部分に設置される挿入光源の2つがある。本講座では、放射光の発生原理、各光源や発生する放射光の特徴などについて、基礎的な解説を行う。

基礎講座3.ビームライン 後藤 俊治(JASRI)
ビームラインは, 挿入光源や偏向電磁石から放射されるシンクロトロン放射光を実験装置まで導くためのものである. XAFS, タンパク質結晶構造解析, 粉末X線回折, イメージングなど利用目的に応じて構成が異なっているように見えるが, 多くの共通要素からなりたっている. 例えば光学系に関しては, 分光器, ミラー, スリットなどにより, 波長およびバンド幅, 空間的広がり・角度的広がりなどが制御され, 利用者の必要とする光が供給される. 本講義では, 分光器やミラーなどの主要な要素技術を中心としてビームラインの全体像について概説する.

基礎講座4.X線の強度を測る 八木 直人(JASRI)
ほとんどすべての放射光実験は,X線の強度を測定する実験です。それではX線の強度を測るにはどんな方法があるでしょうか?X線検出器はどのような原理に基づいてX線強度を測定しているのでしょうか?そもそもX線の強度とは何でしょうか?X線強度を正確に測定するには,何に気をつけたらよいでしょうか?測定したX線強度は,どのような過程を経てデータ処理されるのでしょうか?等々の疑問にお答えします。

応用講座

応用講座1.XAFS 宇留賀 朋哉(JASRI)
物質によるX線の吸収量を高い精度で測定すると微細な変動が観察される。これをX線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure)、略してXAFS(ザフス)と呼ぶ。XAFSを解析すると、非晶質物質の原子レベルの構造や原子価など、他の手法では得難い情報が得られる。世の中の多くの物質は非晶質なのでとても役に立つ。本講義では、実験手法や解析手法、先端物質への応用例について紹介する。

応用講座2.生体イメージング 梅谷啓二(JASRI)
放射光を使った生物医学応用研究での一つの方法として生体イメージングがあり、実験動物を使ってガンなどの病巣を画像観察し、薬効評価や新たな治療法の研究に役立てています。生体イメージングとは動きのある生体内部を鮮明に画像化するための高速・高解像度イメージングであり、このためにSPring-8で開発された撮影装置について解説します。また、生体イメージングと対をなす摘出病巣の標本イメージングの役割についても紹介します。

応用講座3.軟X線分光 下條竜夫(兵庫県立大学)
SPring−8のリング室を自転車で走り回ると、長いステンレスの管でつながれているビームラインがあることに気付きます。これらはエネルギーの比較的低い「軟X線の光」を利用するためのビームラインです。本講義では,この軟X線放射光を用いた実験手法のうち、軟X線発光分光法,軟X線光電子分光法などについて概説します。

応用講座4.タンパク質結晶構造解析 北所健吾(京都工芸繊維大学)
SPring-8などの高輝度かつ波長可変の放射光の利用により、タンパク質の立体 構造が数多く決定されている。タンパク質の立体構造から引き出されるアウト プットは非常に多く、生命機能の原子レベルでの理解ならびに生命科学関連分 野への応用に役立てられている。本講座ではX線回折法の原理と放射光を用い たタンパク質結晶構造解析に関する手法を解説し、具体例として病原体に関わ るタンパク質の構造決定と機能解明について紹介する。