大型放射光施設 SPring-8

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2011年夏の学校 実習概要

下記の16件の実習課題を予定しています。受講者の皆さんにはこの中から2つを選択していただきます。ただし、特定の実習に希望者が集中した場合、ご希望に添えるとは限りません。御了承下さい。なお、装置故障等の不測の事態により予定が変更される場合があります。

実習1.BL02B1:単結晶構造解析 --- 野上由夫(岡山大)

構造解析は、結晶にX線を照射し、固体中の原子位置やその振動をミクロに観察可能な、物性研究に不可欠な手法です。X線回折の原理、構造因子と結晶中の電荷密度の関係、反射の位相決定、高感度イメージングプレートの簡単な解説のあと、実際に低分子固体の単結晶を用いて高精度構造解析をおこないます。試料をセットし、放射光を用いて、結晶からのブラッグ反射を短時間で、きわめて高いS/Nで多数収集し、コンピュータを用いて、固体 中の原子配置決定までを体験してもらいます。

実習2.BL07LSU:合金の合成と光電子分光分析 --- 原田慈久・堀場弘司(東大)

物質は光との相互作用によって様々な色を呈します。しかし色(うわべ)を見ても、その物質が何からできているか(本質)はわかりません。例えば、金と真鍮は同じ金色ですが、真鍮は2つの金属の混合物です。本実習では、物質の化学組成や、物性を支配する電子状態を直接調べることができる光電子分光法を用いて、見た目が似た物質についてその本質を見極め、物質の色を決める要因について考察してもらう予定です。

実習3.BL08W:磁気コンプトン散乱を用いたスピン磁化曲線の測定 --- 櫻井吉晴、伊藤真義 (JASRI)

磁気コンプトン散乱はX線光子と電子スピンの相互作用に由来する散乱現象であり、強磁性体のスピン磁気モーメントを定量的に評価する実験手法として利用されている。実習では、スピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントが反強磁性的に結合しているSmAl2合金の磁気コンプトン散乱測定を行い、同合金のスピン磁化曲線(スピン磁気モーメントの磁場依存性)を求める。さらに、本実習で得たスピン磁化曲線とVSM測定で得られている全磁化曲線(スピンおよび軌道磁気モーメントの両方を含む)から、SmAl2合金の軌道磁化曲線を導く。

実習4.BL13XU:高分解能マイクロX線回折による局所ひずみ評価 --- 木村滋(JASRI/岡山大)

SPring-8のような第三世代放射光施設のアンジュレーター光を利用すると、サブミクロンサイズのX線集光ビームを入射ビームとして、高分解能X線回折を実施することが可能となります。本実習では、ゾーンプレートと呼ばれる集光素子を用いてサブミクロンサイズのX線集光ビームを形成し、そのビームを利用することにより、局所領域のひずみを高分解能マイクロX線回折により評価する手法を学びます。

実習5.BL14B1:XAFS --- 西畑保雄(JAEA/関学)

鉄金属箔および幾つかの鉄酸化物のFe-K吸収端(約7.1keV)のXAFSスペクトルを透過モードで測定する。鉄の酸化物は試料を計量して各自でペレットを作成する。XANESスペクトルを比較して鉄の電子状態を比較する。また、解析ソフトを利用してEXAFS関数の抽出、フーリエ変換、フィッティングを行い、原子間距離や配位数などの局所構造パラメーターを求める。

実習6.BL14B2:その場XAFS計測 --- 本間徹生(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大)

XAFS法は、結晶構造を形成していない物質や、濃度が希薄な試料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、広い研究分野で利用されている。本実習では、まずXAFS計測を行うための試料調整と、放射光光学素子の位置調整について実習を行う。その後、触媒粒子の形成反応に対して、"その場"XAFS測定を行い、触媒粒子内でどのような構造変化や電子状態変化が起こるかを解析する予定である。

実習7.BL19B2:粉末X線回折 --- 大坂恵一(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大)

粉末X線回折は、構造解析技術として物質科学研究での重要な技術であるばかりでなく、複数の化合物から成る材料の組成分析技術として産業界(企業)でも広く用いられています。高輝度な放射光を用いた粉末X線回折では、通常は検出が困難な微量成分も短時間で測定できるため、機能性セラミックスの開発などに盛んに用いられています。今回は、BL19B2の大型デバイシェラーカメラで良質なデータを取得するための装置調整と測定の実習を予定しています。

実習8.BL19LXU:放射光時間分解X線回折法 --- 田中義人(理研/関学)

放射光のパルス時間構造を用いたピコ秒時間分解X線回折法により、物質の高速構造ダイナミクスを調べることができる。放射光パルスX線をストロボのように使う手法である。また、X線自由電子レーザー施設でフェムト秒の大強度X線パルスが利用できるようになれば、フェムト秒時間分解X線回折法が可能になる。これら高速の時間分解X線回折法はどのようにして行うことができるのか、フェムト秒パルスレーザーと放射光パルスX線の同期方法、観測方法など、最新の技術についての実習の機会をもち、放射光を用いた超高速計測法について学ぶ。

実習9.BL22XU:放射光X線回折入門 --- 大和田謙二(JAEA)

内容:X線回折法は原子レベルでの構造を知る手段であり、物質・生命科学のさまざまな場面で利用されています。今回の実習ではX線回折実験の基本的な考え方や手法を学んだ上で、実験室系X線源とは異なる放射光X線ならではの特徴(詳しくは講義で聞いて下さい!)を加えた「放射光X線回折実験」を体験していただきたいと思います。

実習10.BL24XU:X線集光ビームの特性とその応用 --- 高野秀和(兵県大)

X線集光技術は、既存のX線分析手法に高い空間分解能を与えることができるため、非常に重要な技術です。SPring-8で放射される高輝度のX線は、集光ビームの形成に非常に適しており、研究レベルでの集光サイズは10 nm程度にまで向上しています。実用においても、様々な分野で利用されるようになってきました。本実習では、X線集光ビームの特性について、フレネルゾーンプレート(FZP)を使った集光ビームを調べることで、考察していきます。さらに応用として、身近な試料についての回折測定、蛍光X線測定等を行い、集光ビームの取り扱いについて考察していきます。

実習11.BL25SU:高分解能軟X線光電子分光 --- 横谷尚睦(岡山大)

光電子分光は、光電効果を利用して物質の電子状態を観測する手法です。価電子帯の測定から物性発現の起源や機構を理解する事ができるとともに、内殻準位測定からは構成元素の種類やその化学結合状態を知る事が出来ます。SPring-8から発生される高強度・高分解能軟X線は、実験室光源では難しかった微量元素の検出やその化学結合状態の観測を可能にしました。本実習では、不純物をドープしたダイヤモンド等を測定試料として用い、その中に含まれる微量不純物元素の同定や化学結合状態を調べる予定です。

実習12.BL26B1:単結晶回折(タンパク質) --- 河野能顕(理研)

単結晶X線回折は、分子の立体構造を原子レベルで詳細に明らかに出来る強力な手法で、幅広い分野で利用されています。生命科学分野においてもタンパク質の構造から機能を明らかにする構造生物学研究の主要な手法として用 いられていますが、分子量が大きいことや回折分解能が限られているために、さまざまな手法が開発され独自の発展を遂げています。本実習ではこの解析の一連の流れを習得するために、CCD検出器による結晶回折データ測定と位相決定、計算機を用いた分子構造の構築と精密化を体験していただきます。
(*実習12と実習14は同一内容となります。)

実習13.BL37XU:アンジュレーターBLを用いた蛍光X線分析 --- 寺田靖子(JASRI/関学)

X線顕微鏡や希薄系の元素濃度決定などのような蛍光X線分析にはアンジュレーター光が非常に有効である。我々がユーザーとして実験を行う場合、そこには既にX線が導かれた状態であるが、本来はどのようにX線が導かれているかを知っているべきである。本実習の1日目は、ビームラインの光軸決定やモノクロメーターのエネルギー調整など、蛍光X線分析のみならず放射光実験を行うにあたって基礎となるビームラインの調整手順の一部を学ぶ。2日目は、1日目の実習が順調にいっていれば蛍光X線分析を行う予定である。

実習14.BL26B2:単結晶回折(タンパク質) --- 熊坂崇(JASRI/関学)

単結晶X線回折は、分子の立体構造を原子レベルで詳細に明らかに出来る強力な手法で、幅広い分野で利用されています。生命科学分野においてもタンパク質の構造から機能を明らかにする構造生物学研究の主要な手法として用 いられていますが、分子量が大きいことや回折分解能が限られているために、さまざまな手法が開発され独自の発展を遂げています。本実習ではこの解析の一連の流れを習得するために、CCD検出器による結晶回折データ測定と位相決定、計算機を用いた分子構造の構築と精密化を体験していただきます。
(*実習12と実習14は同一内容となります。実習14のBLがBL38B1からBL26B2に変更になりました。<変更:2011年5月30日>)

実習15.BL40B2:X線溶液散乱法を用いた蛋白質分子の構造解析 --- 八木直人(JASRI)

X線小角散乱法(SAXS)は、数nmから数μmの大きさを持つ物質(特に粒子)について、ダイレクトビーム近傍に観測される散乱X線の強度分布から、その構造を解析する手法である。これはあらゆる種類の物質に応用できる手法であるが、蛋白質溶液に適用することにより、“生きた状態”に近い蛋白質分子の構造を知ることができる。本実習では蛋白質溶液からの散乱データ収集および分子構造予測に至る一連の解析を行い、蛋白質分子の構造-機能相関について考察する。

実習16.ニュースバル: ニュースバル放射光を用いた光電子分光による表面分析 --- 春山 雄一(兵県大)

光電子分光法は、物質に光を照射したときに放出される光電子のエネルギーを計測する手法で、物質の電子状態を解析することができる。放出される光電子の脱出深度は、光電子のエネルギーに依存しており、励起エネルギーを変えることができる放射光を用いると光電子の脱出深度を変えることができる。ニュースバルでは、軟X線領域の放射光が利用でき、表面に敏感な光電子分光測定が可能である。本実習では、試料準備から光電子分光測定を行い、表面構造の違いに伴う電子状態の変化や測定データの解析について学習する。