大型放射光施設 SPring-8

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2014年夏の学校 講義概要

講義1.放射光発生の基礎 --- 北村 英男(理化学研究所)
放射光とは、高エネルギー電子が磁場あるいは電場中で偏向を受ける時に発生する電磁放射で、指向性に優れているため輝度が高く、赤外から可視光、紫外、真空紫外、軟X線、X線を経てガンマ線に至る広大な波長域をカバーする。放射光源をその発生原理で大別すると、偏向部放射光、アンジュレータ放射光、および自由電子レーザーとなるが、いずれも高エネルギーの電子加速器が必要となる。本講義では、干渉性を含めた高輝度放射光の性質について述べると共に、X線レーザー発生原理の直感的理解を与えるつもりである。

講義2.X線光学の基礎 --- 山崎 裕史(高輝度光科学研究センター/兵庫県立大学)
放射光ビームラインの多くには光学系と呼ばれる区域があり、分光器やミラー(反射鏡)等が配置されている。分光器は広帯域の放射光の中から特定の波長成分だけを抜き取る装置である。ミラーは、分光器で取りきれない高次光の除去や、集光の用途で用いられる。分光器やミラーは、散乱・屈折・反射というX線光学現象の基本要素の応用である。本稿では、X線光学現象の説明から始めて、分光器とミラーの原理を紹介する。

講義3.X線の強度を測る --- 雨宮 慶幸(東京大学)
X線は回折・散乱されるときは波として振る舞いますが、検出されるときは粒子(光子:photon)として振る舞います。試料から回折・散乱されたX線の強度を測ることは、X線光子の数を数えることであり、その数を場所と時刻の関数として測定する装置がX線検出器です。最初に、光の波と粒子の二重性と光子統計について解説します。次に、1)X線検出器でX線が検出される原理、2)放射光用X線検出器に求められる性能、3)各種のX線検出器の構造と性能、について平易に解説します。

講義4.X線自由電子レーザー --- 大和田 成起(理化学研究所)
2011年3月、SPring-8にX線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」が完成し、同年6月にはレーザー発振を達成しました。XFELは高強度、超短パルス、コヒーレントという特徴を持った新しい光源です。このXFELにより、化学反応などの高速現象の追跡、膜タンパク質など生理学上重要な物質の3次元構造の解析、また高強度X線による極限状態生成など、これまでに困難とされてきた研究が可能となることが期待されています。この講座では、SACLAの特徴と、運転状況、応用分野について説明します。

講義5.回折散乱の基礎 --- 高橋 功(関西学院大学 理工学部)
私たちが日常的に行っている観察とは“観察の対象に可視光領域の電磁波を照射し、回折・散乱されてくる電磁波を目という器官を用いて検出・結像すること”であると言えるのではないでしょうか。電磁波の一種であるX線を用いて原子や電子を観察する場合でも、回折・散乱が重要なキーワードになります。本講義では高校レベルの電磁気学や波動の復習から話を始めて、X線の回折・散乱現象の基本となる考え方とその数学的な表現法についての解説を行う予定です。

講義6.XAFS --- 西畑 保雄(日本原子力研究開発機構/関西学院大学)
XAFSとは、物質中にある注目する元素の内殼電子がX線により励起され、周囲の原子と相互作用するために現れる吸収スペクトルの微細構造である。それを解析することにより、X線吸収原子の電子状態や、その周囲の局所構造を知ることができる。講義では、XAFSの基本原理と実験及び解析方法を述べ、応用例を紹介する。

講義7.軟X線スペクトロスコピー入門 --- 松田 巖(東京大学 物性研究所)
「絵画・夕焼け・蛍など、我々の心を惹きつけるこれら吸収・散乱・発光現象は光と物質の相互作用によるものです。軟X線の光領域でも同じ現象が発生し、それらを原理とする様々な軟X線スペクトロスコピーが存在します。本講ではこれら分光法を系統的にまとめ、「どの手法で測れば、(物質の)何が分かるのか?」を知ってもらいます。また講義では我々が実施している先端軟X線分光実験も紹介したいと思います。」