大型放射光施設 SPring-8

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下部マントル環境(高圧・高温状態)におけるマグネサイトの結晶構造相転移

  • Spring8ならでは

問い合わせ番号

SOL-0000001319

ビームライン

BL10XU(高圧構造物性)

学術利用キーワード

A. 試料 無機材料
B. 試料詳細 絶縁体・セラミックス, 結晶, 鉱物・岩石
C. 手法 X線回折
D. 手法の詳細 粉末結晶構造解析
E. 付加的測定条件 マイクロビーム(>10μm), 高圧(DAC), 高温(>>500度)
F. エネルギー領域 X線(4~40 keV)
G. 目的・欲しい情報 結晶構造, 相転移

産業利用キーワード

階層1 工業材料, その他
階層2
階層3
階層4 格子定数, 結晶構造, 結晶弾性率
階層5 回折

分類

A80.30 無機材料, M10.20 粉末結晶回折

利用事例本文

ダイヤモンドアンヴィルセル(DAC)とレーザー加熱法を利用したX線回折法はその場観察で高圧・高温下での物質状態を調べることのできる強力な手法です。この手法を用いることで、地球内部環境における物質の相状態、結晶構造や密度等を測定することができます。例えば、地球内部マントル条件である約100GPa,2500Kの圧力・温度環境を再現し、X線回折との同時測定によって鉱物の結晶構造情報(相状態、結晶系、格子定数等)をその場観測することができます。
マグネサイト(MgCO3)について、下部マントルの圧力・温度条件を再現した実験では、X線回折像の圧力・温度による変化(結晶構造相転移等)が見出され、図に示すような相図が得られました。この結果から、マグネサイトは下部マントル層の最下部領域(115GPa・2100K)までは安定であるが、それ以上の深部では相転移が起こっており、地球規模での炭素循環を促している可能性が示唆されました(M.Isshiki et al., Nature, 427(2004)60)。

図 マグネサイトのX線回折像変化と相図

[ M. Isshiki, T. Irifune, K. Hirose, S. Ono, Y. Ohishi, T. Watanuki, E. Nishibori, M. Takata and M. Sakata, Nature 427, 60-63 (2004), Fig. 1, 2,
©2004 Nature Publishing Group ]

 

画像ファイルの出典

原著論文/解説記事

誌名

Nature, 427(2004)60

図番号

1,2

測定手法

DAC(ダイヤモンドアンヴィルセル)+レーザー加熱システムは、試料サイズ数十ミクロンの領域で高圧発生させ、集光されたレーザー光(波長1ミクロン程度)を照射することによって高圧・高温条件を実現する装置です。さらにこの高圧高温発生領域に放射光の集光されたX線を照射して回折像を観察することによって、その環境下での物質状態(結晶構造、相状態)をその場観測を行います。DACでは約300GPa(1GPa≒1万気圧)の圧力発生、レーザー加熱法によっては約4000Kの温度を発生させることができます。

図 システム構成と写真

 

画像ファイルの出典

私信等、その他

詳細

JAMSTEC Nagayoshi Sata

測定準備に必要なおおよその時間

3 時間

測定装置

装置名 目的 性能
レーザー加熱装置 高圧・高温状態の実現 300GPa、4000K

参考文献

文献名
廣瀬敬、高圧力の科学と技術、14(2004)255

関連する手法

アンケート

SPring-8だからできた測定。他の施設では不可能もしくは難しい
本ビームラインの主力装置を使っている
同種実験は本ビームラインの課題の30%以上を占めている
最近2年以内に導入した装置を使った事例

測定の難易度

熟練が必要

データ解析の難易度

中程度

図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数

4~9シフト

最終変更日 2006-03-30 11:12