大型放射光施設 SPring-8

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パーソナルツール
 

BL17SU 高効率発光分光器

問い合わせ番号

INS-0000000458

高効率発光分光器 (A3 station)

  軟X線発光分光は固体の電子状態を見るツールとして確立し、さらに測定対象は溶液及び溶液中の物質へと向かいつつあります。この実験ステーションでは、二つのタイプの軟X線発光実験が計画されています。一つは溶液そのもののミクロなレベルでの研究、もう一つは水を含んだ金属タンパク質の金属中心の電子状態の研究です。これらにより、溶液に特有な電子状態、または生理活性状態にある金属タンパク質の反応中心の電子状態を調べることができます。前者の代表的な例が水です。様々な化学反応は水の中で起こっています。後者の代表例はミオグロビンです。ミオグロビンはタンパク質における水素のような存在で、構造はもちろんのこと、反応中心であるヘム核の電子状態についての研究も数多く行われていますが、機能性を担うFe 3d電子状態を直接観測するのは難しいです。

  我々は、溶液の電子状態を調べるため、ポンプを用いて溶液試料を循環させる送液システムを構築し、これを軟X線発光分光システムに組み込みました。高真空槽と溶液は厚さ150nmのSi3N4薄膜で仕切られています。軟X線はこのSi3N4薄膜を通じて溶液試料に照射され、発光が取り出されます。送液により、放射線損傷の影響を除去した軟X線発光スペクトルが得られます。また、軟X線は電場や磁場などの影響を受けないため、将来的なプロジェクトとして、溶液に対するこれら外場の効果も取り入れることが可能です。金属タンパク質試料や送液に耐えないほど微量の溶液試料に対しては、液体ヘリウムで冷却された回転円盤を利用して試料を急速冷凍するシステムを開発しています。回転円盤によって照射位置を連続的に変えることができるため、送液システムと同様放射線損傷の影響を除去することができます。また軟X線の透過率を上げるため、試料はヘリウムガス雰囲気下に置かれています。

高効率軟X線発光分光システムの模式図(上面から)

  高効率軟X線発光分光器2号機(HEPA2)は、BL27SU-C3ステーションに設置された1号機(HEPA1)をベースに開発されました。この分光器は不等間隔溝刻線回折格子を用いた斜入射平面結像型であり、軟X線検出器に背面照射型のCCDを用いています。後置集光鏡を集光点のわずか0.5m手前に置いて縮小倍率を稼ぎ、縦方向5μmFWHM程度の集光を実現しています。これを利用して発光分光器の入射スリットを除去し、高効率と高分解能の両立を可能にしています。

  送液システム全体図。左下図のSi3N4薄膜部が真空と溶液試料を隔て、軟X線を通す役目を担っています。右下図は光照射部(大気側)に用いる送液用セルです。

金属タンパク溶液、微量溶液のための溶液急速冷凍実験装置

高効率軟X線発光分光器の対応するエネルギー範囲とレイトレースによるエネルギー分解能の見積り結果。エネルギー分解能は集光点における入射ビームの縦方向サイズによって決まっています。

 

最終変更日 2019-11-21 16:52