低エネルギーブランチ[Cブランチ]
問い合わせ番号
INS-0000001530
低エネルギーブランチ(Cブランチ)
低エネルギーブランチ(Cブランチ)では、不等間隔刻線平面回折格子型分光器によって、0.17~2.2 keVの範囲の軟X線が利用可能である。また、アンジュレータのギャップ値を変更するだけで、水平・垂直の両直線偏光を同一の実験配置で利用できる。実験ステーションには、多様な試料形態に対応した軟X線吸収分光・蛍光X線/発光分光装置等が配備されている。
- 光学系
分光器は不等間隔刻腺平面回折格子型である。二枚の球面鏡と刻線密度が三種類の回折格子を組み合わせて利用することにより、0.17〜2.2 keVという広いエネルギー領域の軟X線が利用可能である[1]。後置集光系は3種類の光学素子を配備しており、タンデムに集光点を持っている。上流の2カ所では、トロイダル鏡(M32)を利用する。最下流の集光点には、サジタル配置された二枚の円筒鏡によって縦横方向をそれぞれ集光している(M33、M4)。特に、縦方向は10 µm以下に集光されている。
不等間隔刻腺回折格子型分光器のレイアウト
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分光器の光学素子のパラメータ
Energy range (keV) 1.1 ~ 2.3 0.8 ∼ 2.3 0.4 ∼ 1.2 0.2 ∼ 0.6 Angle (deg) 88 88 86.7 86.7 Grating Grating name G1 Ni G1 Au G2 G3 Groove density 1200/mm/VLSPG 1200/mm/VLSPG 1400/mm/VLSPG 600/mm/VLSPG Material Ni/Si Au/Si Au/Si Au/Si Spherical mirror Mirror name M21 M21 M22 M22 Material Au/Si Au/Si Au/Si Au/Si -
後置集光系の光学素子パラメータ
Station C C2 C3 Mirror name M34 M32 M33 M4 Shape Plane Toroid Cylinder
(horizontal focus)Cylinder
(vertical focus)Incident angle (deg) 89 89 89 89 Material Au/Si Au/Si Au/Si Au/Si Beamsize V×H (µm) - 200 × 200 10 × 200
- 試料点における放射光条件
エネルギー範囲 1st (水平偏光) : 0.26 ∼ 2.2 keV
0.5th (垂直偏光) : 0.17 ∼2.0 keV試料位置における光子数 ~1011 photon/s/100 mA/0.02%B.W. エネルギー分解能 E/ΔE > 104 (1 keV以下) ビームサイズ 10 μm(V)×200 μm(H)@最下流発光分光器位置
200 μm×200 μm@吸収分光装置位置
- 備え付けの共用測定装置
- 軟X線吸収分光測定装置
全電子収量法による吸収分光測定
エネルギー分散型軟X線分析器を用いた部分蛍光収量測定 - 大気圧環境下軟X線分光測定用差動排気装置
- 蛍光X線/発光分光装置
エネルギー分散型軟X線分析器を用いた部分蛍光収量測定
軟X線発光分光器
- 軟X線吸収分光測定装置
[1] H. Ohashi, Nucl. Instr. Methods A467-468, 533 (2001).
[2] Y. Tamenori, J. Shynchrotron Rad. 20, 419-425 (2013).
汎用型軟X線吸収分光測定
本ブランチの特徴は、0.17~2.2 keVの広いエネルギー範囲を1台の回折格子分光器でカバーしている点であり、広範な元素を対象とした実験が可能である。この特徴と、光源として挿入光源を有する利点を活用した軟X線吸収分光測定環境が整備されている。シリコンドリフト検出器を利用した部分蛍光収量法による低濃度元素の化学状態分析や、電子収量法による吸収分光測定が同時に利用可能である[1]。本ビームラインの制御系は、アンジュレータギャップ・回折格子の回転走査・入射/出射スリットを同時に制御しており、広範なエネルギー範囲の吸収分光測定を自動で行えるよう整備されている。
ビームラインには専用のグローブボックスが備え付けられており、アルゴン雰囲気下で、試料を大気に暴露すること無くサンプルホルダに固定し、アルゴン密封した状態で分析装置まで搬送・設置することも可能である。
<装置のスペック>
- シリコンドリフト検出器(Amptek製)
25 mm2の単素子シリコンドリフト検出器
Si3N4高分子窓の使用により、0.3 keV(C Kα)まで計測可能
係数率は<1×105 cps
エアロックの利用により、10分程度で試料交換が可能
汎用型軟X線吸収分光装置の概要
[1] Y. Tamenori, M. Morita, and T. Nakamura, J. Synchrotron Rad. 18, 747-752 (2011)
大気圧環境下軟X線吸収分光測定装置
差動排気もしくは真空窓を利用した、大気圧環境下(ヘリウムパス)での吸収分光測定が可能である[1]。また、Si3N4真空窓を利用した循環型の溶液セルを使用することにより、液体試料の軟X線吸収計測も可能である。装置は汎用的な利用に対応しており、利用者が電池や触媒等のセルを持ち込むことにより、in-situ、operando条件下での分光測定も可能である。
<装置のスペック>
- シリコンドリフト検出器(Amptek製)※現在、使用を停止中
25 mm2の単素子シリコンドリフト検出器
Si3N4高分子窓の使用により、0.3 keV(C Kα)まで計測可能
係数率は<1×105 cps
- 大気圧環境下軟X線分光測定装置
差動排気よる窓なし条件下での大気圧(ヘリウムパス)軟X線計測
Si3N4真空窓を利用した、大気圧(ヘリウムパス)軟X線計測
Si3N4窓を使用した循環型溶液セルを利用した溶液試料の軟X線吸収計測
ヘリウムパス条件下で、低エネルギー側は0.3 keVまで利用可能
大気圧環境下軟X線分光分析装置(差動排気装置)の概要
[1] Y. Tamenori, J. Shynchrotron Rad., 20, 419-425 (2013)
軟X線発光分光装置
吸収分光は非占有準位を反映する一方で、発光分光は占有準位を反映する。そのため、両者を組み合わせ解析することで、占有準位から非占有準位にかけて、材料の電子状態の全体像を分析することができる。さらに、X線励起の元素選択性を利用することで、化合物の場合には構成元素ごとの部分状態密度情報を得ることもできる。光電子分光法と比較して軟X線の脱出深度が深いため(元素吸収端に依存して数100 nm程度)、蛍光収量法による吸収分光と組み合わせた利用によって、バルクに敏感な電子状態の情報を得ることができる。
<装置のスペック>
- 蛍光X線検出器(部分蛍光収量測定用)
- シリコンドリフト検出器(Amptek製) 25 mm2の単素子シリコンドリフト検出器
Si3N4高分子窓の使用により、0.3 keV(C Kα)まで計測可能
係数率は<1×105 cps
- 軟X線発光分光器
- 不等間隔回折格子を用いた、斜入射平面結像型発光分光器 エネルギー範囲: 0.2〜1.4 keV
分解能: ΔE = 0.4 eV@500 eV、ΔE = 1.5 eV@1000 eV程度