BL37XU 概要
問い合わせ番号
INS-0000000592
ビームラインの概要
BL37XUは、硬X線領域のアンジュレータービームラインで、X線マイクロ・ナノビームと蛍光X線を組み合わせた、元素・化学状態マッピング、蛍光分光XAFS、深さ分解XAFS、全反射蛍光X線分析などを中心とした研究が行われています。
なお、2011A期より、文部科学省の平成21年度第2次補正予算において、「成長戦略への布石」である「環境・エネルギー技術への挑戦」の一環として設立されました「低炭素社会構築に向けた研究基盤ネットワークの整備」事業のサテライト拠点「グリーン・ナノ放射光分析評価拠点(参画機関:理化学研究所)」で整備した、ナノビームX線蛍光分析装置(BL37XU)も利用可能となっています。本装置により、100 nmオーダーの集光X線ビームを用いた分析が可能です[1,2]。
研究分野
- X線マイクロ・ナノビームを用いた分光分析
走査型X線顕微分光測定 - X線分光イメージング
投影型X線顕微分光測定
結像型X線顕微分光測定 - 極微量元素分析
- 高エネルギー蛍光X線分析
キーワード
- 応用分野
材料科学、環境科学、地球化学、生物学、考古学、鑑識科学 - 装置
X線光学素子(Kirkpatrick - Baez (KB) ミラー、コンデンサーゾーンプレート、フレネルゾーンプレート)、X線顕微鏡、多目的回折計、蛍光X線分析装置、湾曲結晶蛍光分光器、2次元ピクセル検出器
光源と光学系
BL37XUの光源は、周期長32 mm、140周期を有する真空封止型アンジュレーターで、ギャップは8.5 mmから50 mmの間で制御可能です。アンジュレーターの1次光により取り出せるエネルギー範囲は4.5~18.8 keVです。 Fig.1にビームラインのレイアウトを示します。蓄積リング内のフロントエンド部、光学ハッチ内の輸送系のコンポーネントは全てSPring-8標準型のものが使われています。このビームラインの特徴は、100 nm~数100 µmの集光ビームを利用できる3つの実験ハッチを持つことです。
アンジュレーターからの白色光は、光源から43 m下流に設置された液体窒素冷却シリコン二結晶分光器により単色化されます。二結晶分光器は2組の結晶ペアを切り替えることにより、4.5~37.7 keV(Si 111-Si 111結晶ペア)および、13~113 keV(Si 333-Si 511結晶ペア)の単色X線を取り出すことができます。光源から52 m下流で評価したフラックス密度は、8~30 keVの範囲において1013 photons/s程度でした。また、高調波除去と水平方向の集光を目的として、水平偏向の2枚のミラーが設置されています。ミラーにはPt及びRuがコートされており、使用するエネルギー領域によって使い分けることが可能です。
- X線ビームのパラメーター
- Aブランチ
Energy range 4.5 ∼ 113 keV Resolution ΔE/E 2 × 10-4(Si (111)) Flux at sample 1012 ∼ 1013 photons/s Beam size at sample 1 (V) × 1 (H) mm2 Minimum focused beam size 100 (V) × 100 (H) nm2 Higher harmonic content < 1 × 10-4
- Aブランチ
実験ステーション
BL37XUは、光源から55 m、62 mおよび、76 mの地点に3つの実験ハッチを持っています。実験ハッチのサイズはそれぞれ、8 (L) × 5 (W) × 3.3 (H) m3、6 (L) × 4 (W) × 3.3 (H) m3、6 (L) × 3.5 (W) × 3.3 (H) m3 です。実験ハッチ1には、全視野型顕微分光計測装置(Fig. 2)が設置されています。実験ハッチ2には、多目的回折計が設置されているほかフリースペースが設けてあり、持ち込み装置を利用したXAFS計測等が利用できます。実験ハッチ3には、走査型顕微分光計測装置[3](Fig. 3)が設置されています。BL37XUで利用できる顕微分光計測法を表1に示します。
Table 1 Microspectroscopy methods supplied in BL37XU
Type of microscopy | Energy | Resolution | FOV | 3-dimentional | |
---|---|---|---|---|---|
Scanning | 4.5 ∼ 55 keV | 100 nm | µm ∼ mm | Long measurement time | |
Full-field | projection | 4.5 ∼ 113 keV | 1 µm | mm2 | Possible |
imaging | 6 ∼ 15 keV | 50 nm | ∼ µm | Possible | |
Coherent diffraction | CDI | 5 ∼ 10 keV | 10 nm | µm2 | Long measurement time |
ptychography | 5 ∼ 10 keV | 20 nm | mm2 | Long measurement time |
走査型顕微分光計測装置では、エネルギー可変なナノビームを実現するために、2種類のKBミラー光学系が用いられています。KBミラーにはRhまたはPt/Rhがコートされており、使用するエネルギー領域によって使い分けています。ビームサイズ:100 (H) × 100 (V) nm2、フラックス: 1010〜1011 photons/s(4.5~15 keV)、 109~1010 photons/s(15~37.5 keV)、 107~108 photons/s(37.5~55 keV)の集光ビームを得ることができます[3,4]。
高エネルギーX線分光分析は、2011年に導入されたSi333‐Si511結晶ペア二結晶分光器を用いることにより、113 keVまでのX線をエネルギー可変で利用できるようになりました。これにより、高エネルギー蛍光X線分析がより柔軟に利用でき、高エネルギーXAFS計測も可能になりました。高エネルギー蛍光X線分析の測定例として、Fig.4にNISTガラス標準試料SRM610のスペクトルを示します。この試料はケイ酸塩ガラス中に61種の微量元素が100 ppmレベルで添加されたものです[4]。
- References
- Suzuki M., Terada Y., Ohashi H., SPring-8 Research Frontiers 2011 149-150 (2012).
- Terada Y., Tanida H., Uruga T., Takeuchi A., Suzuki Y., Goto S.,AIP Conf. Proc., 1365,172-175 (2011).
- Ohashi H., Terada Y., et al, J. Phys: Conf. Ser., 425, 052018 (2013)
- Nitta K., Sekizawa O., SPring-8/SACLA Annual Report 2018, 64 (2019)
- 鈴木基寛, 寺田靖子ら, SPring-8利用者情報, 16 , 201-209 (2011).
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