ヘリウムガス吹付型試料冷却装置を用いた超低温下でのX線回折実験
問い合わせ番号
SOL-0000001638
ビームライン
BL41XU(生体高分子結晶解析 I)
学術利用キーワード
A. 試料 | 生物・医学 |
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B. 試料詳細 | 生体高分子、結晶, 蛋白質, 核酸, 医薬品 |
C. 手法 | X線回折 |
D. 手法の詳細 | 単結晶構造解析 |
E. 付加的測定条件 | 低温(〜液体ヘリウム) |
F. エネルギー領域 | X線(4~40 keV) |
G. 目的・欲しい情報 | 分子構造, 局所構造, 構造解析, 機能構造相関 |
産業利用キーワード
階層1 | 環境, 製薬 |
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階層2 | 触媒, ドラッグデザイン, 製剤, 食品 |
階層3 | タンパク質, 薬物 |
階層4 | 化学状態, 高次構造, 絶対構造決定 |
階層5 | 回折 |
分類
A80.50 製薬, A80.60 食品・生活用品, M10.10 単結晶回折
利用事例本文
タンパク質結晶のX線損傷は、結晶中に多量に含まれる水分子がX線によって酸素ラジカルに転化し、それがタンパク質分子の立体構造や結晶内分子間相互作用を破壊しながら拡散することによって起こると考えられています。X線損傷により、試料結晶のX線回折能の低下や回折点の劣化、モザイク幅の増大などが起こり、高精度での回折データ収集が行えなくなります。試料結晶を100K程度に冷却して水をガラス状に凍結させることによって、発生したラジカルの拡散を抑制し、X線損傷を低減することが出来ます。
実験室レベルのX線発生機や従来施設のベンディングマグネットビームラインでは、この100K程度の冷却で、ほぼ完璧にX線損傷を抑えることが出来ていたが、第3世代放射光施設、特にアンジュレータビームラインではこのような低温下でも顕著なX線損傷が認められるようになっています。
本事例でも、100KでのX線回折実験では、X線損傷により満足な回折データ収集が行えませんでした。そこでヘリウムガス吹付型試料冷却装置を用いて35Kという超低温下でX線回折実験を行うことにより、P.horikoshii 由来ArcTGT・tRNAVal複合体から高精度のX線回折データを収集することが出来ました。
このX線回折データを解析することで、従来知られていたL型とは異なる、新しい型の転写RNAを発見することが出来ました(図1)。
図1. 新しく発見された型(A)と、従来のL型(B)の転写RNAの構造モデル
[ R. Ishitani, O. Nureki, N. Nameki, N. Okada, S. Nishimura and S. Yokoyama, Cell 113, 383-394 (2003), Fig. 3,
©2003 Cell Press ]
画像ファイルの出典
原著論文/解説記事
誌名
R. Ishitani, et al., Cell 113, 383-394 (2003)
図番号
3
測定手法
画像ファイルの出典
図なし
測定準備に必要なおおよその時間
3 時間
測定装置
装置名 | 目的 | 性能 |
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タンパク質結晶用回折装置 | X線回折像の記録 | |
ヘリウムガス吹付型試料冷却装置 | 試料の冷却 |
参考文献
文献名 |
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R. Ishitani, et al., Cell 113, 383-394 (2003) |
関連する手法
アンケート
本ビームラインの主力装置を使っている
測定の難易度
中程度
データ解析の難易度
中程度
図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数
4~9シフト