SPring-8 夏の学校(2002年度)
2002-05-15 作成
2002-06-06 更新
2002-06-25 更新
2002-06-28 更新
夏の学校とは|
スケジュール |
基礎講座 |
応用講座 |
実習
主 催: 財団法人 高輝度光科学研究センター、
姫路工業大学大学院 理学研究科
期 間: 平成14年7月7日(日)〜7月9日(火)
(SPring-8交流施設に2泊,2000円/泊)
会 場: SPring-8 蓄積リング棟 および 放射光普及棟
(679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1)
参加費: 無料
募集対象:主として学部・大学院に在学し、放射光の利用を考えられている方。
募集人数:20名程度
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申込について:予定人数を超過しましたので、申込を終了させて頂きました。
来年度の参加をお待ちしています。
最新ニュース:講義と実習の要旨をpdfファイルとしてダウンロードできます。
アブストラクトのタイトルをクリックしてください。
なお、掲載予定の要旨もありますので、注意してください。
(注意) 個人利用以外で本要旨を利用される場合は、事前に著者の許諾を
とってください。
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ダウンロードはこちらから
問合せ先:姫路工業大学理学部 鳥海幸四郎
E-mail: sp8ss@sci.himeji-tech.ac.jp
電話/FAX: (0791)58-0155
注 意 :実習に参加するには、所属大学において「放射線作業従事者」の登録が必要です。
また、所属大学において「学生教育研究災害障害保険」に加入していることが必要です。
夏の学校のポスターです.
絵をクリックするとPDF形式でダウンロードできます.
○ 開校の目的
第3世代の大型放射光施設SPring-8では、発生する高輝度なX線から赤外光に渡る広いエネルギー範囲の放射光を利用して、物理、化学、生命科学、地球科学、材料科学、医学などの広い分野にわたって最先端の研究成果が得られ、また新しい研究分野が開拓されつつあります。
このような研究の最先端と将来への展望を知って頂くために、学部学生以上を対象として、SPring-8夏の学校を開校致します。この夏の学校では、放射光の原理から放射光利用研究まで最前線の研究者による講義、SPring-8の放射光を使った実習、研究者との交流など、放射光の魅力が分るプログラムを用意しています。
SPring-8夏の学校に参加して、SPring-8からの夢の光を体験して、その魅力を存分に味わって下さい。入校をお待ちしています。
2001年度SPring-8夏の学校の内容
大型放射光施設 SPring-8: http://www.spring8.or.jp/JAPANESE/
姫路工業大学大学院 理学研究科: http://www.sci.himeji-tech.ac.jp/index-j.html
○ どのような実験ができるか
今年は次の4つの実習を予定しております。
○単結晶構造解析 |
BL02B1 |
○XAFS |
BL19B2 |
○コンプトン散乱 |
BL08W |
○溶液散乱 |
BL40B2 |
○ スケジュール(予定)
1日目 午後 集合:午後1時過ぎ、受付け、放射線安全講習
開校:午後3時
基礎講座1(SPring-8について、概要説明)
夕方 リング棟見学
2日目 午前 基礎講座2(放射光の発生)
基礎講座3(挿入光源)
基礎講座4(ビームライン)
午後 応用講座1(単結晶構造解析)
応用講座2(XAFS)
応用講座3(コンプトン散乱)
応用講座4(溶液散乱)
夜 懇親会
3日目 午前 実習1(4つのテーマから1つ選ぶ)
午後 実習2(4つのテーマからもう1つ選ぶ)
次のステップへ向けて(研修会等の説明)
閉校:4時頃
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基礎講座の概要
基礎講座1: SPring-8について、概要説明 原 雅弘(JASRI) テキスト(808kB)
本講座では、放射光施設発展の歴史、SPring-8の加速器の構成、設計の概念、高輝度光源を実現するための条件、世界の放射光施設との比較、光源としての蓄積リングの現状、マシンおよびビームラインの運転状況などをを紹介する予定である。
基礎講座2: 放射光の発生 橋本 智(姫路工業大学・高度産業科学技術研究所) テキスト(888kB)
放射光とは光速に近い速度を持った相対論的電子ビームが外部磁場により軌道を曲げられた時に発生する電磁波であり、指向性、波長連続性、偏光性、パルス性などの優れた特徴を持っている。本講義では放射光の特徴、発生原理について解説する。また電子ビームを発生し加速する入射器および電子ビームを長時間蓄えて放射光を発生させる蓄積リングについてSPring-8 施設内にあるニュースバル1.5GeV 蓄積リングを実例に説明する。
基礎講座3: 挿入光源 原 徹(理化学研究所播磨研究所) テキスト(2816kB)
挿入光源とは、加速器のなかの直線スペースに挿入した周期的な磁場構造をもつ装置で、電子ビームが通過すると強力な光を発生させる。特にSPring-8蓄積リングのような挿入光源に最適化された加速器においては、レーザーを上回る鋭い指向性をもつ強い放射光を、任意の偏光状態で得ることができる。本講では、挿入光源からの放射の原理とその光の性質、可変偏光を生み出す方法や放射光の将来の可能性について説明する。
基礎講座4: ビームライン 後藤俊治(JASRI) テキスト(1273kB)
ビームラインは, 挿入光源や偏向電磁石から放射される放射光に対し, 実験目的にあわせてフォトンエネルギー, エネルギー分解能, 空間的・角度的ビーム広がり等の加工をして, 実験ステーションに導くためのものである. 分光器やミラーなどの光学系の基本性能, 放射光による熱負荷・素子冷却, 所定の真空度の維持, 放射線安全, 対加速器や対ユーザインターフェイスなどの要素について複合的に考慮して構成された機器の集合体である.
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応用講座の概要
応用講座1: 単結晶X線構造解析 鳥海幸四郎(姫路工業大学院理) テキスト(500kB)
単結晶X線構造解析法は、分子構造や結晶構造を決定する最も有力な手段として、物質科学などの広汎な領域で日常的に利用されている。放射光を利用した結晶構造解析では、利用できるX線強度の飛躍的な向上や、X線波長を自由に選択できることなどが特徴となり、数ミクロン程度の粉末結晶1粒の構造解析も可能になりつつある。本応用講座では、X線回折法の原理から、SPring-8を使った光励起構造解析などの最新の成果までをお話する予定である。
応用講座2: XAFS 渡辺 巌(大阪女子大学理学部) テキスト(1048kB)
X線吸収スペクトル測定は、通常の実験室では非常に困難な実験であり、シンクロトロン放射光が自由に使用できるようになってから実用的となった。このX線吸収スペクトルの精密な解析を行うと、(1)試料中の特定の元素を選んで、その元素の原子価の判定ができる、(2)その元素の周囲の幾何構造が解析できる、などの特徴を持っている。この実験法、構造解析のための理論的背景、実際の試料への応用例を簡単に紹介する。
応用講座3: コンプトン散乱 坂井信彦(姫路工業大学院理)テキスト(856kB)
コンプトン散乱法では、散乱後のX線の精密エネルギ−分光を行い、固体内の電子の運動量密度分布を測定する。電子状態はその波動関数Ψ(r)で決まり、たとえば空間電子密度分布が定まる。一方量子力学的にはΨ(r)のフ−リエ変換した波動関数Χ(p)から運動量 密度分布が定まり、いずれを測定することも電子状態を理解するのに等価である。ことに伝導電子系の理解には運動量密度分布の理解が重要である。円偏光X線を用いることで磁性電子の運動量密度分布が実測される。
応用講座4: 溶液散乱 藤澤哲郎(理化学研究所播磨研究所) テキスト(124kB)
非結晶質の生体分子にX線を照射すると入射光近傍に散乱が観測される。小角散乱とはこのような散乱角が10度以下の回折・散乱を総称する。その内訳は大きく分けて入射光に対して円対称な溶液からの散乱、粉末回折のような膜系からの散乱、そして配向したゲルや筋肉ファイバーからの回折の3種に大別される。本講義は特に蛋白質溶液からの散乱を通して生体内により近い状態での蛋白質の姿を研究する方法論について述べる。
実習の内容
実習1: 単結晶構造解析 BL02B1 小澤芳樹(姫路工業大学院理)テキスト(1836kB)
今やルーチンワークでできるようになりつつある単結晶X線構造解析法であるが,放射光の強力かつエネルギー分解能のよいビームの特徴を利用すれば,実験室系では困難な数ミクロンの微結晶の構造解析や,強度の弱い超格子反射,散漫散乱の精密な観測が可能となる.実習では,イメージングプレートを検出器とした低温真空X線カメラを用いて,1)単結晶のX線回折実験,2)データ処理と構造解析 の実習を行う.
実習2: XAFS BL19B2 本間徹生(JASRI)テキスト(160kB)
物質のX線吸収量の波長依存性に現れる微細構造(XAFS)測定は、物質の局所構造や価数に関する知見が得られる技術です。XAFS測定は物質科学の分野で話題のフラーレンやクラスレートの研究に用いられる一方、DVD媒体や焼却灰中の残留重金属などの生活に身近なものの研究にも用いられています。XAFSの測定法には試料の状態に応じて、透過法、蛍光法、転換電子収量法などがありますが、今回は最も基本的な透過法による測定とデータ解析手順について実習して頂く予定です。
実習3: コンプトン散乱 BL08W 伊藤真義(JASRI)
高エネルギー非弾性散乱ビームライン(BL08W)にて磁気コンプトン散乱測定の実習を行う。強磁性金属である鉄(Fe)の全電子の運動量密度分布、及び、磁性電子の運動量密度分布を測定し、そのプロファイルを確認する。実験の概要は、円偏光高エネルギーX線(175keV)を試料に入射、試料からのコンプトン散乱X線のエネルギープロファイルをゲルマニウム半導体検出器にて測定する。
実習4: 溶液散乱 BL40B2 井上勝晶(JASRI)テキスト(568kB)
溶液散乱法は生体物質の研究において、生理条件に近い条件下で実験が行えるため、目的の物質の“生”に近い状態を観測できる非常に有用な実験方法である。本実習では実際に数種の蛋白質溶液の小角散乱測定を行う。溶液散乱のデータがいかなるものなのか。得られたデータをどのように解析するのか。溶液散乱から何がわかるのか。またこの手法を用いて何を研究すれば面白そうか。体験と理解、そして考察のひとときを。