SPring-8利用者懇談会研究会

研究会の名称

X線構造生物学 / X-ray Structural Biology

代表者、副代表者

代表者
氏名 神谷 信夫 / Nobuo Kamiya
所属 大阪市立大学大学院理学研究科 / Graduate School of Science, Osaka City University
連絡先 nkamiya( at )sci.osaka-cu.ac.jp

副代表者
氏名 三木 邦夫 / Kunio Miki
所属 京都大学大学院理学研究科 / Graduate School of Science, Kyoto University
連絡先 miki( at )kuchem.kyoto-u.ac.jp

研究会の活動目標・目的

 構造生物学は,タンパク質や核酸などの生体巨大分子の立体構造に基づいて生命現象を理解しようとする学問である.構造生物学の基礎となる生体巨大分子の立体構造は,X線結晶構造解析法や核磁気共鳴散乱法(NMR),電子線回折法,中性子回折法などによって決定される.現在タンパク質データバンク(PDB)に登録されている立体構造情報の約8割は,X線結晶構造解析法により決定されたものである.またX線結晶解析には解析対象に対する分子量の制限(NMRでは通常分子量3万程度まで)はなく,重要な生物学的機能を担い,分子量が数百万以上にも及ぶ超分子複合体の構造も決定できることを考えれば,構造生物学を支えるツールとしてのX線結晶解析法の優位性は明白である.
 現在の構造生物学の隆盛は,放射光施設,特にSPring-8に代表される第3世代放射光施設によって支えられている.放射光の高輝度特性により,対象とする分子量が飛躍的に増大した一方,百ミクロンの試料サイズで十分解析が可能となった.現在SPring-8で建設が開始されているマイクロフォーカスビームラインが完成すれば,十ミクロン以下の結晶に対してルーチン的な構造解析が行われるようになるであろう.放射光の大強度特性については,回折データの収集に要する時間が劇的に短縮され,最近の「タンパク3000」プロジェクトでは,PDB登録数の爆発的な増大に大きく貢献した.また短時間にデータ収集が可能となったことにより,タンパク質結晶内で進行する化学反応を時系列的に追跡する時間分割解析も行われるようになってきた.
 以上,現在のX線構造生物学は,放射光構造生物学と呼んで差し支えない状態と言える.これまで「放射光科学」と「構造生物学」が良好な形で共同作業を進めてきた結果であり,新しく開始された「ターゲットタンパク」プロジェクトや,FELの利用につながるタンパク質の動的過程の追跡など,今後の構造生物学の様々な方向性を模索する上でも両者の協力は必要不可欠と考えられる.以上の認識に基づいて,本研究会では,SPring-8と構造生物学研究者を繋ぐ役割を担い,放射光構造生物学のさらなる発展を目指すことを目的とする.

Current researches on structural biology by means of X-ray crystallography are strongly supported by synchrotron radiation (SR) facilities, especially by the third-generation machine, SPring-8. High brilliance of SR is extremely useful to determine the three-dimensional structures of bio-macromolecular complexes from small crystals of 100 micron size. High brightness of SR enables us to perform very rapid data collection, and opens new fields of structural proteomics and time-resolved crystallography for crystalline state reactions of enzymes. The present prosperity of structural biology is a result of cooperative relations between SR people and structural biologists. Our "X-ray Structural Biology" group is aiming to maintain the good relations and to develop new frontiers of structural biology by fruitful discussions with the SR scientists.


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