BL39XU 概要
問い合わせ番号
INS-0000000528
ビームラインの概要
BL39XUビームラインでは硬X線領域のX線分光実験を行うことができます。測定対象となるのは3d遷移金属、希土類化合物、および5d 貴金属元素を含む試料です。利用できる主な測定手法はX線吸収分光(XAFS)、X線磁気円二色性分光(XMCD)、およびX線発光分光(XES)です。本ビームラインの最大の特長は、さまざまな偏光状態のX線を利用できることです。ビームラインに常設されているダイヤモンドX線移相子を使って、右回りおよび左回りの円偏光、水平・垂直方向の直線偏光、任意の楕円偏光を簡便に切り替えることができます。実験ステーションでは、冷凍機(ヘリウムフロー型・パルスチューブ型)、印加磁場装置(電磁石・超伝導磁石)を利用できます。試料温度はヘリウムフロー型では11〜500 K、パルスチューブ型では3〜300 Kの間で可変であり、室温では 3.5 T まで、低温では 1.5 T までの磁場を試料にかけることができます。さらに高磁場や低温の条件が必要な実験のために、最大磁場 7 T、最低温度 2 Kの超伝導磁石が準備されています。XMCD測定には、偏光変調分光法という高感度な測定法が通常用いられます。この手法により、非常にS/N比の高いXMCDデータを短時間で得ることができます。また、XES測定には、球面湾曲型分光結晶を利用して高エネルギー分解能(0.5〜2 eV)で蛍光X線を分光することができ、これを利用することで高エネルギー分解能蛍光検出(HERFD)XAFS測定を行うことができます。
また、KB配置の集光ミラーにより実験ハッチ1では縦1 µm、横10 µmのマイクロビーム、実験ハッチ3では縦100 nm、横100 nmのナノビームが得られます。このビームを用いて、走査型のXMCDイメージングや微小領域での元素選択磁化曲線の測定を行うことができます。さらに、ダイヤモンドアンビル(DAC)高圧セルを用い、室温では常圧 - 180 GPa程度、低温では常温 - 40 GPa程度の高圧下でのXAFSおよびXMCD実験も行えます。
研究分野
- X線磁気円二色性分光(XMCD)
- 元素選択的磁化測定(ESM)
- X線発光分光(XES)および高エネルギー分解能蛍光検出(HERFD)XAFS分光
- マイクロ/ナノビームを用いたXAFS、XRF、およびXMCDイメージング、微小領域、微小試料のXAFS、XMCD およびESM測定
- 100 nmビームを用いた微小領域のXAFS、化学状態イメージング
- 高圧(0-100 GPa@室温、0-40 GPa@低温)下でのXAFSおよびXMCD測定
- さまざまな偏光状態を用いたX線分光
キーワード
- 測定手法
XAFS,X線磁気円二色性, 元素選択的磁化測定, 磁気EXAFS, X線発光分光,高エネルギー分解能XAFS,偏光XAFS, マイクロビーム, 磁気イメージング, 高圧 - 装置
X線移相子, 電磁石, 超伝導磁石, クライオスタット, KB集光ミラー, ダイヤモンドアンビル(DAC)高圧セル
光源と光学系
ビームラインの光源は真空封止型アンジュレーターです。液体窒素冷却シリコン二結晶分光器を採用し、単色化されたX線を供給しています。利用できるX線のエネルギー範囲は 5 ~ 37 keV (Si 111 またはSi 220) です。アンジュレーターと分光器の同期制御を行っており、どのエネルギーでも最大強度のX線を利用することができます。高次光の除去にはRu蒸着ミラーを使っています。このミラーは3回反射型を採用しており、視射角の変更によって光軸が変化しないため、4.92~30 keVの広いエネルギー範囲で高次光の除去を行うことができるとともに、下流に設置されている集光ミラーによる集光サイズ・位置が維持されるようになっています。
ビームラインのレイアウト
ダイヤモンド結晶を用いたX線移相子が、二結晶分光器および高次光除去ミラーの下流に常設されています。XMCD実験では、この移相子は効率の良いλ/4板としてはたらきます。X線のエネルギーに合わせて5種類の厚さの結晶 (0.10, 0.31, 0.45, 0.73, 1.4 mm) を切り替えて使います。適切な結晶を選ぶことで、高い円偏光度 (> 90%) の円偏光X線を4.92〜16 keV の範囲で利用することができます。移相子をλ/2板の条件で用いることで、垂直直線偏光を利用することもできます。垂直直線偏光の偏光度は、40〜90% です。
- 試料位置でのX線の特性
エネルギー範囲 5 ∼ 37 keV (Si 111、Si 220) エネルギー分解能 ΔE/E 2 × 10-4 (Si 111)、1 × 10-4 (Si 220) 光子数 5.3 × 1013 photons/s (Si 111)、2.4 × 1013 photons/s (Si 220) @ 10 keV ビームサイズ (FWHM) 0.6 (V) × 0.6 (H) mm2 高次光成分 < 1 × 10-4 (水平)直線偏光度 99.9 % 円偏光度 > 90 %
実験ステーション
- X線発光分光装置
- XMCD用電磁石およびクライオスタット
- 7 T 超伝導マグネット (温度 2 K)
- 偏光変調XMCD測定
- 測定例
- 装置・備品
文献検索
連絡先
(注)e-mailアドレスは@マーク以下を省略していますので、アカウントの後に@spring8.or.jpを付けてください。
河村 直己
(公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1-1
Phone : 0791-58-0833
FAX : 0791-58-0830
e-mail : naochan
東 晃太朗
(公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1-1
Phone : 0791-58-0833
FAX : 0791-58-0830
e-mail : Higashi