シリコン酸窒化膜は、酸化膜に代わるゲート絶縁膜として有望視されています。この研究では酸窒化膜/Si界面近傍における窒素原子量の深さ方向変化を明らかにすることが重要な課題となっています。BL27SUにおいて測定された光電子分光スペクトル(上図)の解析によって、下図に示すように窒素原子が基板との界面に集まっていることが明かとなりました。このように、軟X線による光電子分光はナノ薄膜界面の化学結合状態やその深さ分布に関する情報を得ることができ、より精密な界面制御のために役立ちます。
軟X線発光分光はN、C、Si等の軽元素の価電子状態を観測する非常に強力な手段です。例えば、GaNにCrを少量ドープした希薄磁性半導体薄膜のように光電子分光の測定が難しい試料の測定も可能です。GaN:Crは、室温で強磁性を示す半導体で、スピントロニクス材料として期待されており、その電子状態の解明は急務となっています。下図はGaN:Crにおいて、Cr含有量を変化させたときのNだけの価電子状態の変化を調べたものです。Cr-N結合に対応する状態が見えています。このように軟X線発光分光は化合物中の1つの元素のみの価電子状態を抜き出すことができ、その物性の解明に役立ちます。
主な測定装置