利用研究例

Ti酸化初期過程のリアルタイム光電子分光

Tiは今日幅広く使用されている金属です。清浄表面は極めて活性であるため、原子スケールで制御された酸化不導態膜の形成が重要です。本研究ではTi(0001)表面のO2ガスによる酸化初期過程を実時間その場光電子分光観察することに成功しました。これまでに酸化状態がTiOからTiO2に順次移行すること、酸化が界面だけでなく酸化膜中でも進行すること、酸化膜もエピタキシャル成長すること等が明らかになりました。


Cu酸化過程における反応ダイナミクス

CuはLSI配線材料や真空材料として重要であるため、表面酸化膜の原子層レベルの制御が求められています。本研究では超音速O2分子ビームの運動エネルギーの効果でCu(001)表面で酸化が誘起される反応ダイナミクスを光電子分光法で解析しました。これまでに酸素飽和吸着量がO2分子の運動エネルギーに依存して増加すること、低エネルギー電子回折(LEED)像が(2√2x√2)R45゜からc(2x2)へ変化することが新たに見出されました。これは運動エネルギーで誘起される酸素の吸着構造の変化を表しています。


主な測定装置

  • 電子エネルギー分析器…XPS、AESスペクトルの実時間その場測定
  • 低エネルギー電子回折装置…LEED像による表面超構造の観察
  • 走査プローブ顕微鏡…STM、AFMによる表面局所原子配列構造の観察
  • 質量分析器…昇温脱離測定、反応脱離生成物の同定